概要
純潔と癒しを司る神獣セレニティが住まう島国、クレセンティア。
三日月の形をしたその島には、人間を悪夢に閉じ込めて生命力を吸う黒い蝶・夢喰(むし)が生息する。
夢喰を祓うことができるのは、羽耳を持つセレニティの雛鳥たちの歌声だけ。
左の羽耳を失った雛鳥のオトは、過去のトラウマにより歌うことができない。
周囲に虐げられながら生きていた彼女が島で運命的に出会ったのは、友好国リュクスの新しい領事、ノア。
しがらみに囚われていたオトは、彼によって鳥籠の外へ放たれた。
足りないものを埋め合いながら徐々に惹かれ合う二人は、やがてクレセンティアに隠された秘密を紐解くことになる――。
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おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!自身の在り方を見いだす物語
人間を悪夢に閉じ込めて生命力を吸う妖虫『夢喰(むし)』。この黒い蝶にたかられている間、人間は恐ろしい悪夢に囚われ続け、命を吸い尽くされて死に至る。
月島(クレセンティア)にだけ生息する『夢喰』は、神鳥(セレニティ)の加護を受けた雛鳥たちの歌声でしか祓うことはできない。祓いのための夢喰採りの儀は、華麗かつ艶やかである一方、集団芸能であるが故に一人の失敗は全体に影響を及ぼす。
雛鳥たちは華美な羽耳を持つが、片羽のオトと呼ばれる主人公は、その名の通り左の羽耳が欠けている。その結果、他の雛鳥たちから壮絶な虐めに遭っている。
オトを姉と慕ってくれる幼鳥のサヨは、まだ幼いためにオトを守り切れない。
唯…続きを読む - ★★★ Excellent!!!籠の中の雛鳥が紡ぐ、愛の物語
悪夢を見せる黒羽の蝶。集り生命力を奪う夢喰から人々を守るのが「セレニティの雛鳥」の使命だ。
彼女たちは唄を歌い、蝶を祓う。
美しい歌声は彼女たちの象徴であり、歌声こそ彼女たちの絶対的な要素である。
しかし、そんな島の中でオトは歌うことが出来ない。
美しい歌声もなく雛鳥の証である羽耳も片側しかない彼女は、クレセンティアという島では虐げられる存在だ。存在意義も見出せず、永遠と続く暴力と暴言に耐えるしかなかった。
そう。あの人が来るまでは
物語序盤に描かれる主人公のオトちゃんを取り巻く環境。貴葵さんの表現力も相まって、可哀想なオトちゃんがこれでもかというほど描写されていま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!少し大人な王道シンデレラストーリー
最初こそ苦しく、辛く悲しい痛みの表現が続きますが、それにより主人公のオトの境遇がよく分かります。
そして最初から世界を彩る、多彩で透き通るような繊細な描写。音楽が聞こえてきそうです。
目や耳を傾けて、静かな場所でじっくりと読みたい一作です。
独自の単語も多いのに、するすると読めるのは作り上げられた世界観がそれぞれの登場人物や物事に見事にマッチしているからだと思いました。
色の表現の豊かさにも目を惹かれます。
色彩豊かな表現は、まるで一本の映画を見ているような、そんな気分にさせてくれます。
きっと読者は主人公オトの幸せになるまでの瞬間を追いかけ、見届けたくなること間違いありません。 - ★★★ Excellent!!!圧倒的な描写力で魅せてくれる……!和洋折衷ファンタジー
貴葵さん、運命コン参加作品です。内容は、あらすじや作者様の近況ノートにもあります通り、シンデレラストーリーの王道です。
こういった王道のストーリーを取り上げる場合、何処で差別化を図るかという話になると思うのですが。またしても貴葵さん、やってくれました。
オープニングの歌から、描写の嵐。
美しい言葉達がどんどんと押し寄せてくる。
特に冒頭の舞台シーンは圧巻でした。劇中劇を見ているかのような錯覚に陥ります。とにかく印象的なシーンが多く、そのどれもが繊細で美しい。どこか浮世離れすらしている美しい世界で生きる主人公オトは、苛烈な環境に置かれています。
彼女の存在は、見た目だけやたらと豪華な金…続きを読む - ★★★ Excellent!!!傷だらけの小鳥は、美しい歌を夢見る
クレセンティアという島には悪夢を見せる夢喰を祓う「セレニティの雛鳥」たちがいる。
雛鳥たちは美しい歌を歌い、夢喰から守ってきたのだ。
そんな雛鳥たちの中で、主人公 オトは歌うことができなかった。しかも、雛鳥の証である羽耳は片方しか無い。
周りの雛鳥たちから虐められ、絶望の毎日を過ごす彼女が出会ったのは、美しい容姿をしたジャイアニズムであった。
主人公は読めば読むほど、頑張れ!幸せになってくれ!と思わせてくれます。
それほどに苦難が多く、なんでこんないい子なのにと、思わず涙が出そうになりました。
そう思ってしまうほどに、クレセンティアはなかなかに歪んでいる島です。
そのクレセンティアにやって…続きを読む