片羽のオトは愛を歌う

貴葵 音々子

第一章 籠の鳥

第一話 セレニティの雛鳥

月の島

【リュクス近代文集第三篇】

 <作者・年代未詳>




 日出ひいづる海に押されしあまおしで

 神鳥御座かんどりおわの島は

 ひなさえずる月の都




 意訳――日が昇る東の海に、三日月の形をした島がある。純潔と癒やしを司る神獣セレニティの住処すみかでもあるその島には、加護を授かった特別な者たちがいるとか。


 これは大陸の覇者リュクスの東部防衛のかなめ、『月島クレセンティア』を詠んだ詩とされている。

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