自身の在り方を見いだす物語

人間を悪夢に閉じ込めて生命力を吸う妖虫『夢喰(むし)』。この黒い蝶にたかられている間、人間は恐ろしい悪夢に囚われ続け、命を吸い尽くされて死に至る。
月島(クレセンティア)にだけ生息する『夢喰』は、神鳥(セレニティ)の加護を受けた雛鳥たちの歌声でしか祓うことはできない。祓いのための夢喰採りの儀は、華麗かつ艶やかである一方、集団芸能であるが故に一人の失敗は全体に影響を及ぼす。

雛鳥たちは華美な羽耳を持つが、片羽のオトと呼ばれる主人公は、その名の通り左の羽耳が欠けている。その結果、他の雛鳥たちから壮絶な虐めに遭っている。
オトを姉と慕ってくれる幼鳥のサヨは、まだ幼いためにオトを守り切れない。
唯一、虐めから救えるのは、楽徒を束ねる一人の男性・アタラ。しかし、彼も一時的に止めることはできても、オトの境遇をどうにかできるだけの力はない。

自らの片耳をみすぼらしく感じ、自己否定の境地に至っているオトは、クレセンティアという小さな孤島を鳥籠のように感じている。それは、雛鳥を逃がさないための籠。
しかし、オトをそんな鳥籠から救い出し、広い世界を見せてくれる人と運命的な出会いを果たすことになる。

その人物は、クレセンティアを開国させた大国の領事・ノア。
ノアは興味のあるものに執着し、子供らしい一面はあるものの、他人を思い遣ることができる非常に魅力的な男性。
そんな彼にも薄暗い過去と力があるようで、だからこそ、オトのことが放っておけなかったのかもしれない。

オトとノアの関係は、ノアがぐいぐい行く一方、オトは自虐心からノアの好意に気がつかないという、非常にムズムズする展開。だがそれもまたヨシ!
しかし、ある出来事をきっかけにして、オトはノアへ一歩近づく。そして、自分の歌に対する想い入れもまた変わる――。

本作はオトの境遇と心境の変化、それに伴う、自身の在り方を見いだす物語。
是非、オトとノアには幸せにイチャラブして欲しい。

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