文化祭の後夜祭の裏で、美術室で絵を描く「私」と先輩。
「私」を通して見える先輩の表情や仕草のひとつひとつに、淡いぬくもりを感じます。
かけがえのない青春の一瞬を切り取った、ただ一緒に絵を描くという何気ない時間。そこで描かれる「私」の先輩に対する想いは、青草のように苦く、まだ若い緑の香りがします。
先輩の強い意志の光に照らされて、「私」の心が想う「描きたい何か」が照らし出されます。同時に「私」の先輩への想いも――。
「アクアグレイ」。グレイがかったアクア色。
みんなが後夜祭の裏で楽しむ中、「私」と先輩の2人きりの時間は、まさにアクアグレイ。
青々しい若葉のような想いを抱えたまま、もうすぐ卒業する先輩と、もう少しだけ2人きりで……。
繊細なタッチで描かれる印象派の絵画のような本作。
くすぐったいような、甘酸っぱいような、そんな気持ちにさせる文学作品。
是非、ご一読ください。