第43話 クリスマス前日
期末試験が終わり、クリスマス前日に突入する。僕は最近の習慣に学校を終えて図書館に向かう。そこに座るクレアの元に向かう。
いつも、窓側の席で腰掛け彼女とその隣の椅子にバックが置かれている。僕が来るとバックは退かされて隣に座る。
「クレア!赤点無かったよ!」
僕はそう言って、点数が書かれた期末試験のテストを出す。
「それは良かった。でも、テストで一番大事なのは間違ったところを予習することだよ」
「うー、分かってるよ。でも、前期は赤点があったけど今回は無かったから褒められるかな……と」
「褒めて欲しかったのか?」
彼女の期待に応えたいと思う自分がいた。その結果がモチベーションアップに上がりテストに結びついた……と思う。
彼女は僕の頭に手を置いて、朝ワックスでセットし放課後にもなるとボリュームが少なくなった髪をわっしゃわっしゃ掻き回す。
「よーし、良い子良い子」
彼女の言葉だけでも良かったが、人目があるところで頭を触られ尚且つ褒められるのは嫌いではないが少し恥ずかしい。
クレアから教わったのは英語だけだが、文法の説明を懇切丁寧に教えてくれた。意味がないところは暗記とさえ言われた。
「意味なんてないよ。じゃあ、日本語の犬という犬とのび太の太の違いはなに?点の位置が違うけど説明できる?」
もしかしたら、点の位置や形には漢字の語源があるのか知れないが要はクレアが言いたいのは英語でも語源は知らないってことだろう。
「ふーん。わからないってことか……」
「法則性はあるけどね、ラテン語が語源だと。例えば、deが付いてたら強めの言葉だなーとか」
英語はラテン語が語源の言葉もあるのか、単語と単語を繋げたら意味を理解できるのか面白かった。
「もっと色々教えてよ。クレア」
「いいわよ」
彼女は金髪を
「その代わりに日本語の言葉の意味をもっと教えてね」
彼女が学びたい言葉は、性的にものもあるから限度を弁えないといけない。テストが終わった後も、そのクレアとの図書館の関係は続いた。
「そういえば、クレアはどこ出身だっけ?」
「オーストラリア」
「よくわからないだけど、教えてくれる?」
「日本の土地の四倍あって、真ん中は砂漠で、カンガルーとコアラが有名かな。あと、飛行機で南に8時間くらい」
めちゃくちゃ、親切に教えてくれた。
「日本の良いところは水がタダなところかな、最初は目を疑ったぞ。家は小さいが」
「水が有料なの?」
「あき……水にはそもそも硬水と軟水があって日本の水は軟水なんだ。硬水は腹を下すし、モデルがわざと飲んでダイエットしたりもするが。日本は土地がいい感じに狭いから水の整備がしやすいんだろう」
貶されているのか褒められているのか。
「私たちの国では、ペットボトルが当たり前でいつもそれで買ってるかな。あと、お菓子の自販機が無いのが辛いし、小銭の種類も多すぎる。1円玉とか5円玉とか」
「ふーん、海外の視点は凄いな」
「海外に行くと視野が広がるとはこのことだな。ところであき、クリスマスはもうすぐだが、サンタクロースはなにで来る?」
ひっかけ問題?
「鹿が引くソリに乗ったサンタクロースじゃないの?」
「オーストラリアの季節では、今は南半球で夏だから。赤い服装に短パンで裸足、という軽装なサンタクロースがサーフィンボードでくるぞ」
「なんだ、それは」
想像すると面白い、僕はクレアの話で異文化の違いを体験していた。終始笑いっぱなしだった。
「テストも終わって明日のクリスマスどこか行かないか?イルミネーションが綺麗なところに」
「お世話になってるし喜んでいくよ」
「あとで追って連絡……そういえば、あきのメールアドレスを持ってなかった……」
「LINEはないの?」
「LINE?」
クレアはLINEを知らない様子だった。僕はメールアドレスを教えて今日は終わりにした。
不思議なものだ。クレアはストーカーだったのに今では、メールアドレスを交換するようになっていた。
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