第20話 鉄拳制裁と上書き

「はい、有罪ギルティ


 はる姉にそう言われて、僕は近くの空き教室に手を引かれて連れて行かれる。


 はる姉は女子ながら普通に筋肉がある。僕の両腕を抑え机に背中を乗せ、仰向けになる。

 その上から、はる姉が覆いかぶさるようになる。


 顔の距離が数センチになる。その距離になると、はる姉の髪から女性特有の良い匂いがする。


「あの女を忘れるくらいのことをしてあげる」


 そういって濃厚なキスが始まる。舌と舌が絡まりあう。


「待って」


「待たない」


 はる姉の手が、全体の身体を執拗に弄られる。そして、口でキスをしていたの舌をそのまま出したまま僕の首元まで舐められる。


 そんなことをしていると、外の廊下の方から


「あきくん。どこにいるの〜?」


 さくらさんの僕の探している声が聞こえる。


「無視しよ?」


 そんなはる姉の言葉を聞くが、これを見られるのはまずい。


「このままだと。僕ははる姉のこと嫌いになるよ」


 それを聞いたはる姉が名残惜しい表情を浮かべながら素直に退いてくれる。


 教室のドアを開けると彼女がいた。


「どうしたのさくらさん?」


「文化祭のポスターの件で‥‥‥ね?いま、大丈夫?」


 教室の中にいるはる姉が少しイラついているような気がする。


 僕は一旦さくらさんと一緒に教室から離れる。少し離れた学校の階段のところで僕たちは話す。


「今回も私が絵を書こうか?」


「本当に?」


 同意するさくらさんだがため息を吐く。


「その代わり、今回は一緒にポスターの文章とかの周りの言葉あきくんが考えてよ」


「いいよ、それでいいなら」


 やる仕事がそれだけでいいなら助かる。さくらさんが少し頬を赤らめる。思い当たる節が一つしかない。


「見たの?」


「少しね。てか偶然だし」


 そういう彼女の手に持つスマホから、さっきのはる姉と僕のキスシーンの動画を見せてくる。

 これって普通に盗撮じゃない?がっつり見てる上にめちゃくちゃ故意じゃん。


 やった僕も悪いけど‥‥‥。


「血の繋がった姉弟でこれはまずくない?」


 言っていることは正しいけど。


「僕と姉の血は繋がってないよ」


 驚愕の表情を浮かべるさくらさん。まあ、僕も他人にこんなこと話す機会はないし。


「へ、へぇ。じゃあ倫理的な問題はセーフなんだ」


 明らかに動揺しているさくらさん。色々とカミングアウトしたから‥‥‥。


「少し目を瞑って?姉弟でこんな関係になったあきくんに鉄拳制裁するから」


 理不尽な暴力には従いたくないけど彼女の言うことも一理ある。ビンタを覚悟する。


「背が大きい!かがめ!いや、中腰!」


 彼女の言う通り、膝を折り中腰になる。すると突然、首元にあるネクタイを掴まれグイッと引き寄せられキスをする。


 ゴツン。


 最初は何をされたかわからなかった。しかし、急にキスをしたことで両者の歯が勢いよく当たった。


 痛い。ある意味鉄拳体裁だ。


 彼女も口元を抑えて痛そうな素振りをする。


「あの何ひてるの?」


 舌が上手く回らない。


「鉄拳制裁と上書き!」


 そんな夏休みの学校の階段の出来事だった――

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