第23話 アルバイト

 当面の目標が彼女を作ることになった――

 

 夏休み初日――はる姉から、許可を貰い同じ場所で働くことで同意をもらった。人生初のバイトは最初こそ分からなかったが最近は慣れてきた。


「最初は、みんなウェイターをやるのだけど厨房の人手が足りないから厨房の皿洗いお願いします」


 そんな店長の言葉を聞いて、皿洗いや、雑務を指示のままやる。


「はい!よろしくお願いします」


 夏休みを使い、バイトのシフトに入りまくる。そして、ある程度バイトの仕事も慣れてきて皿を割らない記録を作り続けてきた。しかし、割らないと決めていた皿を一日で二枚も割って、店長から「気をつけてね」と言われた今日だ。


 手から滑らなければ、割らない記録が二週間くらいあったなのに‥‥‥。家に帰るとはる姉から感想を言われる。


「あーくん、店長さんがね。あきのことをベタ褒めしてたよ『なんというか、あきくんは気が効くね。水差しピッチャーとかも、置いといたら水と氷を入れて渡してくれる、仕事も早くて丁寧だし』って言ってたよ」


 他人伝わりだけど気を使ったはる姉に嘘つかれてなきゃいいけど。


「本当に言われたからね!」


 真実らしい。だから、あのとき皿を割っていなければもっと完璧なのかな?気持ちがマイナスの方に行く。過去を振り返り完璧主義者みたいな良くない考え方だ。皿なんて誰でも割るものだっと割り切ればいいのに。


「ありがとう‥‥‥でも、気づいた範囲で動いてるだけだよ?」


 本当にそう思った、頭で出来るだけ早く仕事をしたし無駄な時間を作りたくない。常に動き続けたかった。そのため、外に出る接客業じゃない自分は皿洗いという仕事で頭をフルに使った。

 洗うものの順番、入れる順番、業務用の食器洗い機に皿の入れ方、冷ますものや取り易いものを考えて改良して仕事することで格段に効率が良くなった。手が空いた時間は、接客業の人の水差しピッチャーなどの足りないものを補充して自分が出来る範囲でやった。


「『他のアルバイトの子は全然してくれないよ』って笑いかけてもきたくらいだよ!」


 バイトの店長の評価は姉を経由して伝わる。素直に嬉しい。


「私だって、ウェイターだけど割ることぐらいあるし!あーくんが一日で数枚割ったけど、それまで割らなかったのが凄いことだから、所詮チェーン店の安い皿だから逆に割っていこう」


 その最後の考えは違うが、元気になる。


「なんか、はる姉に気を使わせてごめんね」


「まあ、人間なんて失敗から学ぶから元気出して!」


 談笑を終え、最後に――


「あーくん?あなた、ストーカーされてない?」


「――え?」

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