前のエピソード――第26話　準備期間中編

　プッツン――

「あきくんはどうでも良い人間と誰でもキスする。ビッチなんだ！あのときのことは――」

　キレた二宮（にのみや）さんの剣幕は凄かった。

「あっち行こうか、二宮（にのみや）さん」

　クラス内でこれはまずい。手を引いて、外に連れていく。

「うわあああああああああん」

　彼女を連れていく途中泣きながら走り始めて手が離れる。

「あきくん、顔可愛いけどやることエグいんだね」

「あき‥‥‥おまえなにしたんだ？」

「青春だねー」

「リア充くん、涅槃（ねはん）が空いてるけど入る？」

　準備中のクラスの内で、いまの話が聞かれる。クラスの人間の冷ややかな視線が刺さる。

「なんか、勘違いしてるけど違うから！」

　そんな言い訳じみた言葉をクラスに残して彼女を追いかける。

　‥‥‥彼女のことをどうすればいいのかあまりわからない。でも、原因作ったの僕なのかな？いや、でもキスをしたのは二宮（にのみや）さんだし。

「二宮（にのみや）さん！」

　廊下で追いつき彼女の手を捕まえると、一応の彼女ーー早乙女（さおとめ）先輩と出くわす。

「おいおい、あき‥‥‥おまえなにしたんだ？」

　現彼女のややこしい人が来た。

「早乙女（さおとめ）先輩！あの相談に乗ってくれますか？」

「うん！とりあえず相手をボコってやるからな！なにがあったか私に言ってみ？」

　泣き始めた二宮（にのみや）さんに、優しく声をかける早乙女（さおとめ）先輩。

「えっぐ‥‥‥うー。あきが勝手に彼女作りました‥‥‥」

「え？」

　早乙女（さおとめ）先輩から汗が出てる‥‥‥。おい、こっちを見るな。

「もしかしたら、彼女さんが無理やりあきくんをたぶらかしたかも知れない‥‥‥。彼女の方を許さなければ良いんですね？早乙女（さおとめ）先輩！」

「いやいや！やっぱり、そういうのは良くないぞ！　二宮（にのみや）！」

　あれ？手のひらドリルになりました？あんたが彼女って言えない状況になったが、やっぱりクズだ。

「二宮（にのみや）少し待ってろ！こいつと話をつけてくる」

　――――。

「おい、あき！あんなに可愛い同級生（二宮）がいるのになんで私と付き合ったんだよ！」

「こんなふゆ姉の勝手で決められたことを僕の都合で二宮（にのみや）さんを巻き込めるか！」

「あ！おまえ、私なら適当に付き合っても良いと思ってるな！」

「思って……てるけど！そこまで適当には付き合わないわ！」

「あきくん！明日の文化祭付き合える？」

　うわ！突然現れた二宮（にのみや）さんに今の話を聞かれてないか心配になる。二宮（にのみや）さんの顔を見る限り‥‥‥大丈夫そうだ。

「それはいい！彼女のことなんか忘れて明日はデートしなさい。それじゃ！」

　そういって一応の彼女は逃げるように去る。うわー彼女の反面教師。

　ということだし

「いいよ」

「よかったー。あきくん‥‥‥私が変態だから、付き合うのが嫌かと思った。美容室であきくんの髪の毛を集めて部屋で匂いを嗅いだり、あきくんの私物をちょいちょい盗んで、バレないように同じものを入れて誤魔化したり、他にも沢山のことをしたから嫌いになったのかと思った。あと、私のことを前みたいにさくらってちゃんと呼んでね？」

　引くというより怖い。この人の本性を知ったのが良くないのかもしれない。