第39話 プロの犯行
今は土曜日の朝、はる姉に髪を切られようとしていた。
「あーくん、髪伸びてきたし切ってあげるよ」
前に一度美容室で切ったことをはる姉に伝えた。
美容室……髪切り……
用事が思い出した。はる姉には謝りつつ急用が出来たことを伝える。
はる姉は不平不満を烈火の如く羅列しているがそれを横目に離れる。
最近はる姉への対応が雑になっていると思う。歯ブラシを変に使われたことへの恨みが少し出ている。
僕はアプリを起動して
「どうしたの?あきくん」
「今日さくらさん暇?前言ったお詫びをいつかしたいんだけど……」
「今日!逆に今日以外の日が空いてないくらい!」
今日以外空いてないのか。
「わかった。場所は前行った美容室でいい?」
「うん、待ってる」
家を出る。
駅を乗り継ぎあっという間に前行った美容室に着く。たまたま店前にいた
「あら、あきくん〜久しぶり!」
「お久しぶりです」
「二階に登る階段が別にあってそこの玄関の奥に娘がいるから悪いんだけどそっちから登ってね」
二階で娘が待っていることを伝えられた。ここのお店は二階建てで一階は美容室だが、二階は普通に住む部屋なのだ。
二階についてインターホンを鳴らすと、すぐに
「ささ、入って!入って!」
「お邪魔します」
そのまま家の中に入って数秒後、後ろの施錠を二つともロックされてチェーンまでしていた。
部屋に入ると、全体的に可愛らしい部屋なのだが一箇所だけKEEP OUT や立ち入り禁止の文字が貼られたドラ○もんが寝泊まりしてそうな押し入れがあった。
そこは頑丈にロックされていそうな感じだ。
「そこはあきくんでも見たら許さらないからね?」
耳元に囁かれる。冷淡な声で口だけは笑っている表情だった。
「ささ、コートも預かるしこたつの中に入ってて」
季節は冬にも近づく、こたつなども部屋の一つあるだろう。しかし、こたつは四角い形をして四箇所、人が入れるスペースがある。
一箇所に二人入るのは、狭いと思う。
「この位置じゃないとテレビが正面から見えないから!」
「じゃあ僕はテレビの正面じゃなくてもいいから横に移動するよ」
「ダメ!」
僕はこたつの中で足を絡め取られ固定される。横を見ると二宮さんの魅力的な肩が見えるのでテレビの方を渋々見る。
「ゲームしよっか」
「なにする?負けないよ?」
ふゆ姉に散々鍛え上げられた僕はテレビゲームなら負けない自信がある。
「うーん……押しくらまんじゅう」
「二人でやるものじゃないよね?」
その後、彼女と背中を合わせてこたつから追い出す押しくらまんじゅうをした。二人とも汗をかいたが決着は付かなかった。
尻とか背中の感触がダイレクトに伝わる。
「汗かいたから飲み物持ってくるね!」
「うん」
僕も思いの外、汗をかいた。
「あきくん。飲み物持ってきたよー。あっ!」
「ご、ごめん」
「大丈夫だよ」
それよりコップが割れてないから心配だ。コップはプラスチック製で割れてない。中身も運良く水だから、被害は少ない。
「濡れて風邪でも引かれたら困るからお風呂入って、その間服洗って脱水するから!」
「いや、大丈ーー」
「入って!」
「はい」
「服、洗濯機に入れるのねー。あとお父さんの着替えも置いとくね。でもパンツは使ってない新品のあるから使ってね!」
「うん、ありがとう」
その後、お風呂を満喫して彼女が用意したワイシャツとズボンとパンツに一時的に着替えてまたこたつで彼女と話をした。
脱水が終わったあきの服を乾燥機に入れる
こんな、洗濯されたものよりも濃密な物が手に入るから我慢ーー。
そう思いつつも彼女はあきの男性用のパンツに手に掛けた。
一回口元の方に持っていき匂いを嗅ぎ、名残惜しい気持ちを抑えつつ
何も知らない彼の元にーー。
そして、あきも家に帰るために今日着た服に着替えてもらう。
「このお父さんの服洗って返すよ」
「いいよ!いちいち家に戻って洗うより私の家でまとめて洗う方が楽だから。元々の原因こっちだし」
「そっか、じゃあ頼むね」
洗われたら意味がないと思う
今日のお風呂の水を一生変えないこと出来るかしら。
それは、流石に無理か……。でも、収穫もあるもんね。
彼女は脱衣所であきが履いていた新品のワイシャツ、新品のズボン、新品のパンツ、と隠された盗撮カメラを持って浮き足立っていた。
彼女は風呂に入り、カメラの中のあきが服を脱いでいる動画を見て声にならない声を出していた。
「えへへ。あきくん。かーわいい」
これで数ヶ月間放置した罰はチャラだからね?
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