第46話 クリスマスのその後
僕は家に帰るとはる姉の尋常ではない質問をされる。
「あーくん、何をしていたの?なんで、クリスマスに外に行ったの?いつもは私たちの居たじゃん……。誰と居たの?」
「友達とふゆ姉の誕生日プレゼントを買ってきたの」
「なんで、私とじゃないの?てか、私のときはなかったよ?」
「そのときはアルバイトをしてないからお金がなくて買えなかったんだ。来年は買うから!」
一旦は落ち着いたはる姉だったが、また再燃する。
「友達ってだれ?もしかして、女の子?」
「歳下の子だよ!ふゆ姉の友達!」
「朝から行く必要あった?」
「ふゆ姉に買ってきたプレゼントを渡してくるね!」
「あーくん。……元気ある?」
「ごめん」
はる姉は、僕の態度を見て追撃の質問を辞めてくれた。そんなに僕の顔は酷いのだろうか。
「誰があーくんの元気を奪ったのかさえ、教えてくれたらお姉ちゃん。頑張るよ? お姉ちゃんに話したくなったら話してね。でも、朝帰りしたら問答無用で家に監禁するからね?」
なにをどのように頑張るのかを教えてくれたら、話すかもしれないが……いや、話さないかな。あと、さらっと最後の方に犯罪行為に手を染めないで。
その後、ふゆ姉にプレゼントを渡して流れのまま最新のゲームをやることになった。
「いや〜、クリスマス商戦のゲーム業界の賑わいは良いね」
「そうだね」
そう言いながら、最新作のゲームキャラクターは綺麗なグラフィックと共に動くがストーリーは全然頭に入らない。
つい一時間前の自分の行動をずっと考えていたからだ。
ーーーー。
「あき!よー、元気か?」
彼女は頬をかき恥ずかしそうにしていた。僕の隣のクレアが僕の腕を一層強く組む。
元彼女の先輩に思うことは、このクレアといる状況を見られたことの焦りとそれと同時に彼女には関係ないと思う自分がいた。
「あき……。今から寄りを戻さないか?そんな、女より私とイルミネーションを見て回ろう!この前のことを謝りたいし」
最後の部分の謝りたいは、何についてだろう。唐突に別れたことなのだろうか。しかし、隣にいるクレアが心配そうに僕を見てくる。
それを見て思う。
「僕たちは別れたよね。イルミネーションはクレアと見て回るから。行こ、クレア」
僕には何て言えば正解か分からなかった。このとき、先輩の話をちゃんと聞いてれば良かったのか。それとも、クレアの表情を見て安心させたかったのか。
たぶん、後者だろう。そうして、クレアの手を引いてこの場を後にした。
「そっか、そうだよね。私みたいな自分勝手な女……ダメだよね」
そんな声が静かな都心の一角で響いた。
――――。
「綺麗」
「そうだね」
「あきは、まだ”元“彼女のことが好きなの?」
「どうだろう……」
クレアはため息を吐く。
「好きじゃない!って即答出来ないくらいには好きなのじゃない。私と居ても彼女のことばっかり考えているでしょ?」
クレアに言われて思う。もし、こんな時に先輩といたら他愛のない話で盛り上がっていただろう。そんなことばかり考えている自分がいた。
「これ渡す」
クレアはそう言って、小さい小包と大きい箱を渡してくる。大きい箱は一度開けられた跡があった。
「小さい方のプレゼントはあなたの姉のふゆに渡してね。その大きいのはあきにプレゼント。部屋に飾ってくれたら嬉しいわ」
「ごめん、お返しが何もできなくて」
「いいのよ。デートしたし、プレゼントも受け取って貰ったから。そのプレゼント無くしたら許さないからね?」
プレゼントに対して念を押される。
「わかった、無くさないようにするよ」
「よし!今日はこれで解散!そうしないともう一人の姉がうるさいでしょ?」
心の中で、これ以上遅くなってもはる姉から待ち受ける結果は変わらないと思う。
その場で別れて家に帰る。手荷物はたくさんあった。誕生日プレゼント用の僕からの服や、クレアからの小さい小包、そして大きめの箱。
考え事をしていると、あっという間に家に着く。家に帰るとはる姉から質問が沢山くる。
そして、現在に戻る。
誕生日プレゼントでふゆ姉に僕からは服を渡して、クレアはふゆ姉にブルーライトカットの眼鏡を買っていた。そして、大きい箱にはぬいぐるみが入っていた。
紙が入っており、「cuddle」と書いておりスマホで調べると「抱きしめる」という動詞だ。
抱いて一緒に寝るぬいぐるみだろうか。僕はそれを、ふゆ姉の部屋に置く。
「あっくんは今日は疲れてるんだよ。ゲームは辞めて私の部屋で寝よう!」
僕は今日のことを考える。しかし、考えがまとまらないので自室で眠る。
――――。
「ゲーム音が煩くて聞こえないな……。でも、ゲームを辞めて寝るみたい」
「あきの寝相かな? 声を吸う音、吐く音、全て聞こえる。最上のASMR !」
ぬいぐるみに仕込んだ盗聴器で、あきのボイスを聞いていると思うクレア。しかし、ぬいぐるみは部屋にありその盗聴している声はすべてふゆの声だった。あきの声でないということを知り絶望するのは早朝だった。
――――。
「あき……」
あのときスマホからメールが届いて写真を見た私は体が動いていた。写真に写り、あきの隣にいる
「それにしても、自分の行為が浅はかだった」
そう嘆く先輩。
ーーーー。
「あきくんの周りの女がぐちゃぐちゃになって、自滅してくんないかなー」
そんなことを思う、スマホを片手に元カノにメールをした図書委員の同級生。
――――。
何かを得るもの、何かを失うもの色々な思いが交錯するクリスマス。
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