第7話 公約

 時間は少し戻り、桜の葉っぱはまだ落ちず木々に咲いているこの時期。



 体育館に全校生徒が集まり、生徒会の立候補者が演説をする。そこに一際目立つ人がいた。


「私が生徒会に入った暁には、この学校生活をより良くするために最善を尽くします。公約として委員会同士の連携と仕事量の格差をなくすことに約束します」


「そのために、こちらのスライドを見てください。定例会と中央委員会というシステムを説明します」


 朝の集会で全校生徒を前にしても怯まず、堂々と話すはる姉の姿は素直にカッコ良かった。


 それは、他の生徒会メンバーすらも凌駕する。あの生徒会長そんなにしおれないで‥‥‥。後輩の二年が優秀だとしても、自分の存在価値を見失わないで。


 入学当初の僕は、最近は副生徒会長はる姉の弟ということで同学年の男たちは僕に話しかけてくる。

 はる姉の好きな物、趣味、弟の僕を通して告白を伝えて欲しいとか挙げたらキリがない。

 そんな現状を打破すること手立てはなく。疲れているところだ。





 そして、ゴールデンウィークの長期の休みの前にまた全校集会が開かれた。 

 校長からは

「4月まで頑張った君たちは初めての長期休みゴールデンウィークを体験すると思う。そうすると、生活リズムが崩れて休む人が多くなるから気をつけなさい」

 そんな眠たくなる話を聞いた。


 そして、生徒会の番になり副生徒会長はる姉が壇上に出てくる。


「まず、定例会に参加してくれた委員会、生徒諸君ありがとう」


 そして、はる姉はこれからの方針を淡々と話していく。その演説が終わり。


「はる先輩、演説お疲れ様です。いつも通りカッコイイです!」


「ありがと、アンナも立候補の時は人前で話してたじゃん」


「いやいや、はる先輩に比べたら恐れおこがましい」


「おまえが来年の生徒会長だ。バッチもう受け取るか?」


「気が早いですよ、生徒会長」


 生徒会長の男は誰に慕われる良い人だ。しかし、はる姉のような実績を目に見えて作れたわけではない。

 それに、負い目を感じているらしい‥‥‥。


 一年の書記の一星いちぼしアンナが疑問に思う。

「それにしても、定例会の報告書を見る限り、図書委員会だけやけに全体の人数が少ないですね」


「そうか」っと言って悩む素振りを見せる、副生徒会長。しかし、内心は‥‥‥。


 当たり前でしょ。あーくんが、他の女の子と接触を出来る限り減らすように、二、三年には圧を掛けたんだから。それに、三年の女の図書委員長はあきにめっきり興味を示さないから許したのに、同級生の女一年生だけは止められなかった。


「あと他の委員会は、明確にやることが決まっているのに、図書委員だけやることが自分で決めることばかりじゃないですか?」


 やることが自分で決める?当然よ。あーくんが私に相談しにくる可能性が高まるんだから。


「そこまで、私も頭が回ってなかったわ。来年はそこも改善しましょ」


 一星いちぼしアンナは、今のところ危険じゃないがもし何かあれば‥‥‥ね。


 演説を思い出すように、アンナは言う。


「私、今日のはる先輩の最後の言葉とても一番カッコよかったです」


 最後ーー


「最後に、公約とは関係ないが私が言いたいことは、私は人伝ひとづてで想いを伝える人間とは付き合うことはない」


 それっきり、僕の弟という存在にあやかろうとしていた輩はあまり来なくなった。


 外になると有能になるの辞めてくれません?





 副生徒会長はる姉が苦言を呈す。


「この委員会の掛け持ち禁止ルールを廃止できないかな?」


「それは、はる先輩が提案した案じゃないですか。一つの委員会に専念するためにって」


「そうなのだけど。例外として、生徒会の人はオッケー!みたいな。私なら真面目に最後までやり通すよ」


「ダメですよ。後輩に示しがつけませんよ職権乱用は」


「ダメかー。図書委員会に入りたかったな」



「‥‥‥生徒会辞めようかな」っと誰にも聞こえない声でボソリと呟く。

 

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