第三章 ゴールデンウィーク

第9話 はじめてのスマホ

 

 学校のクラスメイト全員の名前を覚えきれず、ゴールデンウィークに突入する。


 目が覚めると、はる姉とふゆ姉が僕と同じベッドで寝ていた。


「あ、あーくんおはよう」


「あっくん、目覚めのキスする?」


 そんな、二人を見て


「部屋から出てけー!」


 近所迷惑もお構いなしに朝から騒がしくなる。


「はっはっは、あきは好かれているな」


 外人みたいな陽気な笑い方する。一応の父親。この人は仕事で世界を飛び回る。でも、子供三人を育てられるほど優秀な人だ。


「あき、おまえもそろそろスマホが欲しいだろ」


 今話してらっしゃるのは僕の親愛なる父親。仕事の関係上、たまにしか休みを取れないからといって、関係が疎遠とかそんなんじゃないから。スマホを買ってくれるという理由で媚びてないから。


「欲しい!」


 父親は僕の気持ちを察してくれるような発言をしてくれる。


 スマホがないと困る場面はいくつかあった。まず、連絡ができないことだ。護身用や連絡用に、小学生が持っているこの世の中だ。高校生ながら、羨ましいと思うくらいに焦がれていた。


「お父さん‥‥‥あーくんには早いよ」


 そう言うのははる姉だった。そんな殺生な。


「いや、高校生になってまで待たさないのは‥‥‥」


「お と う さ ん?」


 実の父親に圧をかける、娘。負けないでお義父とうさん、あなたが負けたらスマホはどうなるの?


「そ、そうか?」


 やばい、父親が押されている。


「はる姉、お願いだから買わして?」


 願いを言う。はる姉は考える数秒素振りを見せる。


「いいわ、じゃあ、買いましょう」


「やったー」


 その日は、はる姉と父親と三人でスマホショップに行き契約をした。はる姉からは、お揃いの機種にしようとか保護ケースを同じにしようとかそんな話ばかりしてくる。


 そして、スマホの契約が終わり。店員さんから、


「なにか、ご不明な点がありましたら店に来てもらうか。または、ご連絡をください」


 そう店員さんの話を聞いて店を出る。


「じゃあ、あーくん。LINE交換しようか?」


「別にいいけど‥‥‥」


 そうして、アプリを入れて起動する。はる姉を友達追加する。すると、通知が雪崩のようにくる。


 送ってくる人間は一人しかいない。はる姉だ。そんなはる姉の姿を見て笑顔で携帯ショップに戻る。


 先程の店員を見つけて、話しかける。


「どうなさいました?」


「スマホの通知の消し方を教えてください」


 それから、数分後‥‥‥。


「設定から通知のところを押すとアプリの通知自体を変えられます。これで、LINEのトーク画面、それぞれに設定できますので」


「なるほど、ありがとうございます」


 社交辞令で見送ったのに、数分で戻ってきた僕に懇切丁寧に教えてくれた。



 マナーモードを覚え、音が鳴らなくなったスマホと共に店を出る。




 別にゴールデンウィークだからといって、親が子どもたちのために旅行を計画しているわけではない。


 お義父とうさんとお義母かあさんは旅行に行きたいらしく、仕事で海外や国内を転々とする父親は休みの日すらもお義母かあさんにどこかに連れ回される。


 明日とかそうだろう。休みという休みがない父親に少ししか同情心はない。僕たちの同行は母親の反対で連れて行ってくれないし。


 それは帰り道のことだった。


「母さんばかり構ってお前たちのことを構ってやれないからな」


「あーくんがいるから、私は大丈夫よ」


「楽しんできてよ、旅行」


 父親も気苦労があるだろう、お義母かあさんに愛されていて。








 一方――同じ時間。




 次女のふゆは、休みを良いことに家で大量の積みゲー消化をしている。積みゲーとは、買ったは良いがやらずに放置して積んでいるものだ。


 数分後には、ゴールデンウィークセールで買うふゆの姿があった。


 また、ゲームが積み上がっていく。




 そんな、家の元に一本の電話が掛かる。ふゆはヘッドホンをしていて気づかない。


 《ピ――――の後に、留守番電話をお願いします》


 《ピ――――》


 《 「私は、夏樹なつきあきくんの同学年の二宮にのみやさくらです。夏樹なつきくんに図書委員会について、話したいことがあるので折り返しの電話をお願いします」 》


 ガチャッ


 一本の留守番電話が夏樹なつき家に入った

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