第16話 勝負の最終戦
そして迎えた最終節、やはりリーグ首位は楽に勝たせてくれるほど簡単な敵では無かった。
「最初にヒネズミで突撃させて索敵して、こっちが水系の魔物を用意してるのを確認したから自陣にガン引きか。敵陣に踏み込むとなるとさすがに倒すのは簡単じゃ無いぞ。どうするルイス。」
今回、指揮は全てルイスに任せてるため俺は眺めているだけだ。相手は火山や溶岩のエリアを配置してるため炎属性以外の魔物には過酷な環境になっている。植物系の魔物であるドライアドたちは敵陣への進軍は難しそうだ。ちなみに相性不利なのでさすがにトレントは連れてこなかった。
「相手は攻めないと1位が取れないから、こっちも引いて我慢でもいいけどな。」
一応、このリーグ戦には時間制限が設けられており、12時間経って決着がついていないと両負けになる。つまり、相手が最終1位を取るためにはこの試合はどこかで攻めに回らないといけないはずなのだ。ルイスも無理の無い範囲でスケルトンやゴブリンたちを使って敵陣に探りを入れているが本格的に攻める様子は無い。
「ちょっかいを出し続けることで攻める姿勢だけ見せて時間を稼ぐつもりか。」
当然、状況を理解しているルイスは無理に攻めない。ちょっとずつ圧をかけ続けて時計の針を進めていく。
「そうこうやってるうちに第1層は取れちゃったな。」
ダンジョンリーグは1層最大4部屋、最大3階層をダンジョンコアの間を除いた9部屋まで設置できると言うルールになっている。罠が仕掛けてあったりと攻め側が不利なのだが相手の敵はDランクのヒネズミしか基本的に出てこないのでCランク以上で構成されている俺の魔物たちは少しずつ制圧エリアを増やしてきた。
「こうなると悩みどこだよな。」
制圧エリアを維持するためには魔物を配置せねばならず、相手の陣内で防衛するということは不利な状況で戦わされるということだ。できればこちらも魔物を失わずに戦力はできるだけ保持しておきたいが奥に進めば進むほど援護も難しくなり、倒されるリスクは上がる。
「まあ、時間の問題だったとはいえ敵の本陣の手前まで来ちゃったな。これどうするんだ。」
第2層までの制圧が完了し、最下層の敵本陣を発見するところまで来た。残り時間はまだ半分を少し切ったあたりだ。
「Bランクのスカルナイトとコピースライムを出撃させるのか。何をするつもりだ?」
ルイスはコピースライムをストームキャノンダイルに変身させ、スカルナイトと護衛用のスケルトン数体を伴って敵陣奥に侵攻させていく。敵本陣の手前まで来たコピースライムは敵本陣に向けて砲撃を始めた。
「ああ、これで敵は出てこないといけなくなったか。」
本陣への攻撃が始まっては敵も動きざるを得ない。そして、最初に攻撃を始めたコピースライムはすぐに攻撃をやめ引き返していく。攻撃の主体がスケルトンメイジたちに切り替わり、遅れてやってきたリッチがコピースライムと入れ替わりで攻撃を始める。ストームキャノンダイルの水属性の砲撃は何度も打ち込まれると本陣が壊滅する危機になるし、スケルトンメイジたちの魔法だけでも本陣は火の車になってきている。
「炎陣営はとにかく魔法攻撃をやめさせて、最大の脅威であるストームキャノンダイルを排除しないといけなくなったわけか。」
敵からは攻撃してきたのが本物のストームキャノンダイルなのかコピースライムの偽物なのかはわかっていないと思うがどちらにせよ自陣奥深くに放置していい相手ではない。敵のAランクの魔物たちが本陣を飛び出してくる。
「まあ、出ざるを得ないんだけど、この場合距離を詰める方が圧倒的に不利だよな。」
ほとんどがCランクの魔物の攻撃とはいえ距離を詰める前に少なくないダメージを負ってしまっては十分には戦えない。ようやく攻撃部隊のところまでたどり着いた魔物をさらに後方で待機していたコピースライムが撃ち抜く。これで敵の2体のAランクのうちの1体を排除された敵はもう全力で突撃するしか無い。
「このタイミングで2体目のコピースライムの登場か。これが決め手か。」
2体のコピースライムの砲撃で敵の戦力はほぼ壊滅。しかし、敵も意地を見せてSランクの魔物がなんとかこちらの前線部隊を潰しきった。
「押し切られたか。とはいえ、相手はもうSランク1体のみでそのSランクもすでに満身創痍。攻めるだけの力は残ってないか。」
相手が弱り切ってるのを確信しているルイスはここで手を緩めるような真似はしない。トドメとばかりにストームキャノンダイルを本体を出撃させる。
「なんでルイスまで前線に出てきてるのかわからないけどな。」
Sランク同士の戦いでは力が拮抗する可能性が高いが1対1でその状況に持ち込めるのなら勝ったも同然だ。しかも、ルイスがいれば敵に最もダメージが出せるストームキャノンダイルを相手にする余裕も無いだろう。万が一この2体が倒されてしまうのが最悪のシナリオだがさすがに可能性が低すぎる。だがよく考えるとストームキャノンダイルを倒されるというシナリオを無くすための選択だと思われるので手堅い選択だと言っていいだろう。
「終わってみれば圧勝か。」
ストームキャノンダイルが敵のSランクの魔物を撃ち抜いて撃破したのを確認してつぶやく。ルイスが組み立てた戦術は基本的にリスクは取らず有利を少しずつ拡大させて勝つ、隙の無い戦い方だった。炎相手で有利に戦えたこともあるが今回はドライアドたちが自陣でお留守番状態になり、ルイスも詰めの最終局面でしか出てきてないことを考えれば現戦力でも他のダンジョンともやり合えるだろう。
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