第14話 トレードデッドラインと創の計画
俺はCのカードとのトレードの実積を盾に生成コストを支払いたくないマスターたちに譲歩を求めた。そして、最初に動いたのは空だった。俺が譲歩を求めた翌日にメールがきた。
『Cとギタイトカゲのメスを含めて3匹で交換してくれ。』
力負けするようになって新たな戦力も求めた空のマスターはポイントを使い切っても戦力を増やす方を選んだ。時間が経てばさらに勝てない可能性が高いためリソースをつぎ込まざるを得なかったのかもしれないが。
それから第6節前日に炎のマスターからも『Bランクのカードが欲しいならC1枚でよこせ。』という趣旨の連絡が来た。これで第6節前に2つのCのカードを新たに入手できた。
第6節成績
創●vs氷○
聖●vs海○
邪●vs地○
鋼●vs炎○
空●vs獣○
第6節が終わると他のマスターにも焦りが見えてくる。俺がゴブリンたちをトレードした相手は全員別の相手と戦っているからだ。そして、トレードした空以外のマスターは全て勝利している。『Cのカード1枚だけで勘弁してくれ。』という内容のメールが試合翌日に聖から届くと遅れて邪、獣からも同じ要求が来た。
第7節成績
創●vs邪○
鋼●vs海○
氷●vs地○
獣●vs炎○
空●vs聖○
暫定順位
1位 6勝1敗 炎
2位 5勝2敗 海
3位タイ 4勝3敗 獣邪聖地
7位タイ 3勝4敗 鋼空
9位 2勝5敗 氷
最下位 0勝7敗 創
そして、激闘のリーグ戦は第7節を終えてマスターたちに決断を迫る。それはトレードデットラインの存在だ。マスターたちが新たに戦力を獲得できる期限は次の第8節が始まるまで。つまり、プレーオフを目指すマスターにとってここが戦力を補強する最後の機会になる。そんな中、最初に連絡してきたのは意外にも氷のマスターだった。
『Cのカード1枚とスノーマン7体を出すので上級ゴブリンを2体欲しい』
スノーマンは雪だるま型のDランクの魔物であり、スライムやグロウウィードと同じように魔力で増殖する魔物だ。少し悩んだがトレードに応じることにした。
勝負に出たのは獣のマスターだ。シーズン終了後のBランクのカードを条件にゴブリンメイジ2体を指名してきた。さらにC2枚とDランクのコボルト5体でゴブリンセイバー2体も要求してきたのでこれでプレーオフを逃したら損害は大きい。
俺が序盤戦でスケルトンを中心に戦っていたのを知っている海と地の2人はゴブリンでは無く上級のスケルトンをトレード対象に選択してきた。
「ゴブリンがそれだけ進化してるって事は上級スケルトンもトレードに出せるくらいいっぱいいるってことよね。」
まあ、事実なのでC2枚と引き替えにスケルトンウォリアーとスケルトンアーチャーをトレードしたら、そのことを聞いたと地のマスターからも同じ取引を要求された。
「さて、俺たちのダンジョンの最下位も決定したことだしラスト2戦暴れようか。」
このリーグ戦は勝ち数が同じ場合は当該チーム同士の勝敗で順位が決定される。つまり、俺たちがこれから2連勝して氷のダンジョンが2連敗したとしても俺たちは当初の予定通り最下位が確定したことになる。
「てっきり今シーズンは全敗するんだと思ってたんだけどあんた勝つ気あったんだ。」
俺の宣言を聞いてルイスが驚いた表情をしている。
「一応、生成コストは有限だからね。残り2つ勝てばプラス2000。捨てるのはもったいないでしょ。」
まあ、それだけじゃないのだが。
「次の相手は大失速の空だからなんとかなるかもしれないけど最後の相手はあんたがAのカードあげたせいでAが2体いる炎でしょ。勝てるの?」
そんな簡単に勝てるのかと聞いてくる。
「まあ、少なくともルイスには出てもらわないと勝てないだろうな。というか、なんとしても首位から引きずり下ろしたいから協力してくれ。」
ルイスはようやくの実戦にやる気だ。
「もちろん出るからには全力で潰すけど、あたしたちが勝ってももう1戦の方を炎が勝てばほぼ首位は確定よね?」
ルイスが首をかしげる。
「炎の残りの相手は俺たちと海。つまり、炎にとっては相性最悪の相手ってわけだ。だから、ここはほぼ確実に海が勝つ。だから、そうなると最後に炎は勝たないと首位から陥落するんだよ。」
どんなにAランクの魔物が強くても1ランク差くらいなら相性の方が効果が大きいことは確認している。実際、炎とAランクを交換した獣のAランクの魔物は海のBランクの魔物1体で機能停止に持ち込めたらしい。逆に2ランク差あると相性有利でもやられてしまう可能性は高いようだ。なので、炎がここで1つ負けることはほぼ確実なのだ。そして、最後に俺たちが勝てば最終戦に海が負けても直接対決の成績で海の首位が決まる。
「海には是非とも優勝してもらわないとな。首位になればプレーオフの初戦は4位のダンジョンとできる。そうすれば決勝進出の可能性も上がるし、決勝で海が勝てば炎の獲得ポイント削れるし。」
「つまり、最初からそれが目的だったわけね。Aランクのカードを渡して代わりにドラフト指名権とプラスの対価を要求して利益を得る。そして、優勝を妨害することで向こうは思っていたほどの利益が得られないと。これがあんたの最下位にいながらプレーオフ進出以上の利益を得る作戦だったわけね。」
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