第13話 創の揺さぶり

第5節成績

創●vs獣○

氷●vs海○

地●vs聖○

空●vs炎○

邪●vs鋼○


暫定順位

1位 4勝1敗 炎

2位タイ 3勝2敗 空海邪鋼聖獣

8位 2勝3敗 地

9位 1勝4敗 氷

最下位 0勝5敗 創



 ついに炎がトップに立った折り返しの週、俺のダンジョンは大量のスケルトンの恩恵により、生まれたばかりの魔物を各層毎に1週間で1体Cランクまで成長させられるようになっていた。


「さて、ここからはこのCランクたちを戦力に変換していかないといけないのだけど、どこと交渉するかな。」


 悩んでいるとちょうど他のマスターから通話がかかってきた。


「久しぶりだね、地のマスター。連絡してくるってことはまだプレーオフを目指してるって思っていいのかな?」

「無謀な挑戦だとお思われるかもしれないですけどわたしはまだ諦めませんよ。」


 地のダンジョンは順位だけで見れば8位。プレーオフにはだいぶ遠い位置にいるように見えるがプレーオフ圏内までのゲーム差は1。残り4試合の結果次第ではまだまだ可能性が残っている。


「無理とは言わないよ。それでもプレーオフ進出ラインまでは最低でも残り4戦で3勝が必要。そのための起爆剤を求めて連絡してきたと。」


 3敗目を喫したことで勝負に出るしか無いと踏んだのだろう。


「そういうことです。あなたは海のダンジョンにどうやらドライアドを一時的に貸し出しているようですし、今シーズンは捨てているようなので海のダンジョンと似たような交渉ができるのではないかと思いまして。」


 まあ、言い方を変えれば戦力をよこせと言っているのだが一時的な戦力の譲渡で来シーズン以降の利益が得られるなら俺にとってデメリットはあまりない。


「もちろん交渉は大歓迎だ。俺が得するならなおさらね。それで何がお望みかな?」

「わたしが欲しいのはコピースライムです。期限は今シーズン終了まで、対価としてすぐにでもB1枚払う用意があります。」


 コピースライムは仲間の魔物になら何でもコピーして同じ能力を得ることができる。しかし、魔力量はコピーできず、一定回数攻撃を受けると変身を解除されてしまうので何をコピーするかは重要だ。その代わり、敵によって変身する魔物を変えることで有効打を得やすいため汎用性は高い。とはいえ、変身先の候補が多いBランク主体のダンジョンで無ければ宝の持ち腐れになりかねないわけだが。


「コピースライムにそれだけの価値があると踏んでるわけか。」


 とはいえ、それでプレーオフに進めるかと言われれば微妙なラインに感じる。


「それとCランクの魔物も欲しいです。こっちは完全に保有権をいただきたいです。」


 期限付きのBランクと完全譲渡のCランクでB1枚か。悪くは無いがもうちょい売り込みたい。


「ゴブリンセイバー1体なら譲渡しよう。それとシーズン終了後にBのカードが貰えるなら追加でトレント、ゴブリンセイバー、スケルトンアーチャーを1体ずつ出すけどどうだ?」


 ゴブリンの近接型がみんなゴブリンセイバーになるせいで若干数が余りすぎなためここで売りだすことにした。


「Bのカード1枚でCランク3体ですか。でも、ゴブリンもスケルトンもCランクの中では強い方では無いですよね。できればDランクのゴブリンをメス含めて5体ほど追加で欲しいんですけど。」


 最初のゴブリンセイバーも含めてゴブリンとスケルトン3体ではCランクでも不安があるようだ。


「わかった。ゴブリンも出すよ。」


 うまくディスカウントされたが元からゴブリンやスケルトンたちに生成コストはかかっていない。何も無いところからBランクのカードがゲットできたと思えばこちらに損は無い。コピースライムも最近新たにもう1体進化で手に入れたし実質Dランクの魔物たちでB2枚を獲得できたのは大きい。


「交渉成立ですね。」


 おそらく地のマスターもDランクの魔物にバリエーションを持たせるためにゴブリンを要求したのだろう。グロウウィードだけだと相性が悪いときに対処できないし。



 地のマスターとの交渉が完了した二日後、今度は海のマスターから連絡があった。


「あんた、やってくれたわね。」

 まあ、用件は聞かなくてもわかってたさ。俺が今日になって他のマスターたちに一斉送信したメール。そこにはCランクのゴブリンたちをCのカードとDの魔物5体で交換するという内容だった。前日に序盤の方からダンジョン内にいるゴブリンたちがどんどん進化していってCランク以上だけでダンジョンリーグも戦える目星がついてきたのでここらで一度利益に還元しようと思ったのだ。


「どこのダンジョンもCランクなんてまだ2,3体しかいない。それを一気に複数体手に入るチャンスなんてプレーオフを目指してるダンジョンは他のダンジョンに取られたときが敗因になりかねないから気にせざるを得ない。バカ正直にCのカードを払う相手はいなくてもすでに交渉のメールはいくつも届いてるんでしょ?」


 海のマスターの言うとおり、他のダンジョンからの問い合わせはいくつも届いている。そして、ほとんどのマスターは俺のダンジョンの育成能力が以上に高いことに気がついていない。というのも、俺がC以上を出す数を1試合あたりで出す数をある程度抑えてるからだ。その結果、ある程度買い占めれば他のダンジョンが入手できる分を減らすことができると思っているのだ。海のマスターはある程度俺のダンジョンが育成に特化してるのがわかっているので俺がメールを出している時点で買い占めることは無理だと理解しているようだが。


「まあ、どこのダンジョンも生成コストは使いたくないから使わずにDランクの魔物で支払おうって交渉だけどね。」


 中にはDランクの魔物20体で全部よこしてくれというメールなど今回売りに出す数は周り保有数の倍の6体前後だと思われているようだが。俺が育成に力を入れようとしてるのは周知の事実なのでそれくらいは持っててもおかしくないと思われているようだけどそれより遙かに多いことは想定外のようだ。


「あんたも一斉送信した内容で売れるなんて思ってないでしょ。一応わたしは邪のCのカード持ってるからこれでゴブリンセイバー1体とメス含めたDランクのゴブリン3体よこしなさい。」


 かなり横暴な要求だが実際に交渉にCランクのカードが出てくることは貴重だ。しかも、出したやつがいると前例を作ることは大きい。


「かなりめちゃくちゃな要求だな。まあ、ぼったくるのは他のマスターからにするよ。」


 海のマスターとは今後の関係も良くいたいのであまり無理な交渉はしない。そして、海のマスターも理解しているはずだがこの前例は大きく事態をややこしくする。

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