第38話 今シーズンの方針

第6節成績

獣●vs創○

鋼●vs海○

氷●vs地○

聖●vs炎○

空●vs邪○


 第6節、前回の経験から斥候の編成を見直した。今までの斥候部隊は前衛が同ランクでは最弱なゴブリンたちだけで構成されていたため、押し込まれたときにすぐに壊滅してしまった。そのためBランクであるブリザードウルフを1体組み込み、空からの撹乱と撤退能力を評価してフレアイーグルも加えた。結果として序盤の攻防では圧倒し敵の攻撃部隊の投入は早まっていると感じる。とはいえ、リフレクションゴーレムがいない相手だと簡単にメア&シトリーのコンボが簡単に決まってしまうため、結果にどれほど影響するかと言われれば時間短縮になるくらいの微調整でしか無いのだが。


「やっぱり初見殺し性能は高すぎるんだよな。」


 前シーズンはそもそもまともに戦っていないのもあって俺のダンジョンの情報は相手はほとんど持っていない。メアとシトリーに関しては完全な新戦力なため他のダンジョンから情報を得ない限り、知らないまま罠に飛び込むことになるのは致し方無い。


「まあ、わかってたら対処できるわけでも無いんだけど。」


 正直、存在を知ったからと言ってどう対処するんだという話にはなる。興奮状態ならメアの魔法を防げるのだが興奮したまま敵地のど真ん中まで進む方が本来はリスクが高いため普通はそんな手段は取らない。


「というかそんなデメリット、他のダンジョンは知らないしな。」


 今のところこの作戦は破られる気配すら無い。そして、プレーオフに向けて考えるならば俺たちは6連勝。続く5勝で海、地、炎の3ダンジョンが追っているがそれに続くのは邪が3勝で残りは2勝以下。残り3試合で例え俺たちが全敗しても邪には直接対決に勝っているためプレーオフ進出は確定。残りの3枠も5勝の3ダンジョンが大きく有利で邪が勝負に加われるかというところだろう。


「あとはトレードデッドラインまでに他がどれくらい動くかだな。」


 早めに勝負に出た獣や聖のダンジョンはすでに裏目に出ている。とはいえ勝負に出たのでチャンスが残っている限り戦うだろうが。とはいえ俺たちは今シーズン優勝を目指してるわけでドラフト指名権も手に入れた以上、獣や聖のダンジョンに協力する意味は無い。そんなことを考えていると連絡が来た。


「ドライアド1体くれないかしら?あんたのところ、シーズン前にドライアド出してたし、そろそろもう1体くらい余剰が出ててもおかしくないってレヴィが主張してるんだけど。」


 相手は海のマスター。昨日、いつも通りお互いの結果を報告したがその時は何も言ってこなかったことを考えれば何か変化でもあったのかもしれない。


「オフに出したドライアドを競り落としたのは海のダンジョンだったはずだけど。」


 なぜもう1体必要なのか情報を探ろうとする。ちなみにオフのドライアドは思いの外高い値段がついて13000DPでの落札となった。


「使い勝手が良かったからもう1体欲しいのよ。攻撃部隊と防御部隊に1体ずつヒーラーいたら便利でしょ。」


 海のマスターの言い分はわかる。


「俺たちまだ対戦残してるしプレーオフでも当たるかもしれない相手に戦力送るのはちょっとな。」


 それを理由に負けましたになっては目も当てられない。ここは慎重にならざるを得ない。


「オフにBランクとCランク1枚でレンタルでどう?」


 悪い条件では無い。それにドライアドがいたところでメア&シトリーのコンボが防げるとも思えない。それなら利益を得に行くのはありか。


「わかったよ。その条件乗るよ。」


 自信があるからこそ利益を得に行く。それは自分のダンジョンへの信頼だ。実際、ドライアドが余っているのは事実だし、オフになれば放出することになるだろう。余ってるのなら使わない手は無い。それなら、もう少し動いてみるか。俺は交渉に動く。


「狙いは喉から手が出るほど勝負手が欲しいところだよな。」


 なおかつプレーオフの障害にならなそうな2つのダンジョン。聖と獣のダンジョンにドライアドの売り込みをかける。


「やっぱり食いついてきたな。」


 両者とも決断が早い。短いレンタルでBランクのカードが手に入るなら俺にとっては利益でしか無い。


「自分のところで戦力にならなくても他で戦力になるなら魔物にとってはその方が良いよな。」


 俺はトレードの手続きをしながら考える。俺のダンジョンは強い魔物がいっぱい育てられるようになっているおかげで日の目を見れない魔物も出てきている。


「あんた意外と優しいわよね。」


 いつの間にか来ていたルイスに声をかけられる。


「もったいないって思っちゃうだけだよ。使えるものは全部使わないと。」


 魔物を放出して利益を得たり割とばっさり利益のために切り捨てていると思うのだが。いらない分は新たな利益に還元してるだけのつもりだ。


「それでも出て行った魔物たちもここ以上の活躍を期待されているわ。うちのダンジョンは強い魔物が多すぎるからどうしても日の目を見ない魔物は増えてしまう。ダンジョンが口を開ければまた話は変わるんだけどね。」


 ダンジョンの管理を任されているルイスにも思うところはあるらしい。


「余剰分はうまくトレードに使ってあげなさい。それがあの子たちにとっても利益になるから。」


ルイスは優しい顔でそう言った。

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