第37話 龍のカード
「というわけで龍のカードをゲットしたからさっそく召喚して行くぞ。」
意外とあっさり入手できてしまった龍のカードを使って新たな魔物を召喚する。新たなSランクの召喚ということで工房に引きこもったヴァル以外のSランクたちは観に来ている。
「行くぞ。」
俺が準備を整え周りを見渡すと全員がうなずく。この新たな魔物を呼ぶ瞬間に緊張するのは慣れそうに無い。
「初めましてじゃ、マスター。我が名は龍王ルイン、妾の力があればどんな敵であろうと滅ぼせるであろう。今は人間の姿をとっておるが戦うときは龍の姿になるから安心するのじゃ。」
ルインはそう名乗った。世界を滅ぼすほどの力を持ったが故に世界から隔離された龍のことを滅龍と呼ぶ。彼女はそういう存在なのだろう。
「君は滅龍ってことでいいんだよね?君は龍王らしいけど君の他に滅龍はいるのかい?」
とはいえ、滅龍については文献も少なくわかっていることはほとんど無い。
「前半の質問はイエスじゃ。妾は滅龍で間違いない。そして、後半はノーじゃ。滅龍は世界の終末装置のような存在じゃ。世界を滅ぼすために生まれ世界と共に滅びる存在。故に子供も作れはせん。そして妾のような存在は世界に2つもいらぬ。」
ルインは悲しそうに言った。しかし、滅龍が召喚されるということは世界は滅びの未来を歩んでいることになる。このダンジョンも滅んでしまうのだろうか。
「安心せよ。妾が召喚されたところですぐに世界が滅びるわけではない。妾がここに召喚されたということはここが世界の最後の砦なのじゃろうな。」
俺の疑問を察したかのようにルインは言う。ここを守るのが自分の役目なのだと。
「妾が龍王なのは妾が世界の抑止の役割を担っているからじゃ。妾は龍たちを束ねることで世界を破滅から救う。マスター、おぬしにはそのために龍たちを育ててもらわないといけない。そのためのダンジョンなのじゃから。」
龍は世界の滅びの原因を潰す戦士なのだそうだ。龍が他の種族よりも圧倒的な力を持っているのはそのためらしい。そして、龍たちでも対処できなくなったら滅龍であるルインが終末装置としての役割を担い世界を滅ぼす。自らがその力を使わなくていいように力を貸せということらしい。
「質問していいか?前に何体かギタイトカゲ育ててみたけど全部地龍系統の進化しなかった。理由に心あたりは?」
「そりゃ、普通の洞窟で育てれば全て地龍にしかならん。ステージを氷にすればアイスドラゴンになるし溶岩ステージにすればレッドドラゴンになる。そういうステージを作れば良い。」
やはり育つ条件で進化先が変わるようだ。ルイスに目で確認すると頷いたのでこれからいろんなドラゴンを育ててくれるだろう。
「それで最後に君の能力を知りたい。滅龍ってのはどんな能力を持っているんだ?」
単純に世界を滅ぼすほどの存在がどのような能力を持っているのかは単純に気になったのとこれからの戦略に組み込むためとどちらにせよ聞きたかったことだ。
「ドラゴンなんて基本的にみんな脳筋じゃ。ブレス吐くことと空飛ぶ以外のことはできん。」
ルインが笑いながら言う。だいたいの相手はそれさえできれば倒せるんだそうだ。
「妾に特別についている力と言えばあらゆる小細工を弾く鱗と世界から生命力を吸い取って回復する能力くらいじゃな。回復能力もそこの真祖ほど速くないのじゃけどな。」
世界が滅びるまで回復し続けるとかとんでもないな。回数に関してはルイスよりよっぽど無限の回復能力を持っていることになる。とんでもない存在だ。
「どうやらこのダンジョンのリーダーはそこの真祖のようじゃな。それなら妾が何かするよりもそっちに任せた方が良さそうじゃ。どうせ、しばらく妾に仕事はあるまい。しばらく寝るから必要になったら起こしに来るがよい。」
ルインはそう言って部屋から出て行った。
「あんたとんでもない存在を呼び出したわね。あれ、あたしでも勝てないわよ。言わなかったけど滅龍のブレスのダメージは一生回復しない。つまり負ったら最後。あたしよりも無尽蔵に回復する存在がそんな能力持ってるのよ。」
ルイスが近寄ってきてそう言った。防御も回復も許さないブレスに無尽蔵の回復とか相手に勝ち目なさ過ぎでしょ。
「それだけじゃ無いの。あいつ鱗のおかげでノルンの時間停止空間でも動けるの。」
時間停止すらも小細工とかスケールが違いすぎる。無限回復する相手に正面からの殴り合いしか受け付けないとか勝つ手段は無いに等しい。文献にある滅龍への対抗手段はただ一つ、近くの空間ごと異次元に隔離すること。
「記述通りの化け物ってことか。とはいえ、ドラゴンの進化の仕方聞けたのは大きかったな。ルイス、ちょっと大変かもしれないけど頑張ってくれ。」
「当然よ。ここが世界の最後の砦って言うならなおさら守らなくちゃいけないもの。あいつが表に出なくても済むダンジョンを作ってみせるわ。」
ルイスは高らかにそう宣言した。
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