第24話 バランスブレイカー
ノルンの騒動が一段落したところで次は『夢』の王を召喚する。
「マスター、初めまして。夢の王ナイトメア、相性はメア。永遠の眠りに誘う者。よろしく。」
夢の王は、表情の変化の乏しい少女が出てきた。
「よろしく、メア。さっそく君の能力に教えてもらってもいいかな?」
俺がそう言うとメアは頷いた。
「戦闘で使える魔法は眠らせる魔法だけ。攻撃魔法は使えないから戦闘能力は期待しないで欲しい。得意な魔法はドリームワールド。自分の周囲一帯の相手を眠らせることができる。」
眠りの全体魔法ってそれだけで十分脅威だ。
「もうちょっと詳しく聞いていいか?」
とはいえ、今のじゃ説明が不十分だ。もうちょい詳しく魔法を知っておきたい。
「魔法を発動するとわたしを中心にして球状に効果範囲が広がる。興奮状態の相手は眠らせられない。」
相手を絶対に眠らせられるわけではないのか。
「興奮状態の敵も眠らせる魔法は持ってないのか?」
それもできれば完璧なんだが。
「アビススリープって魔法がある。こっちは一人にしか使えない。」
あるんかい。興奮状態の敵が何人もいなければ眠らせられなかった相手をこの魔法で対処すればいい。
「でも、ドリームワールドで眠らない相手がいるとそいつがすぐに周りを起こすからあんまり使えない。」
そう簡単にはいかないってことか。やはり、ドリームワールドで一気に潰しきりたいところだな。
「ドリームワールドに他に眠らせられない敵はいるか?味方はどうなる?」
「効果範囲内の敵は全て眠らせることが可能。眠らない魔物にはどうしても無力。わたしが指定した味方は範囲内にいても問題ない。」
眠らせる魔法なので当然眠らない相手には無力か。とはいえ、眠らない魔物は数少ない。それはこっちでリストアップして警戒すればある程度対処できる。しかし、効果範囲内か。もしかしたら、
「さすがに壁の向こうとか遮蔽物の向こう側はさすがに効果対象外だよね?」
貫通できたら強いなと思いつつ、まあ無理だろうなと思ったが一応聞いてみる。
「夢に境界は存在しない。範囲内なら遮蔽があろうと関係無い。」
これもできるんかい。なんかとんでもない子が出てきたな。戦闘には自信が無いようだがこれはある種のバランスブレイカーだ。ルイスもかなり驚いている。
「ちなみにその魔法の効果範囲はどれくらいなんだ?」
「半径50メートルくらい。」
周囲50メートルを夢の世界に誘う遮蔽物貫通の魔法とか知らなかったら一発アウトだし、知ってても対策は容易ではない。というか、ダンジョンリーグのダンジョンの半分くらいをこの魔法でカバーできる。
「なあ、ルイス。とんでもないの引いたんじゃないか?」
「間違いないわね。正直、こんなの相手にいたら絶望しかないわよ。」
次々と出てくるとんでもない情報に俺とルイスは驚愕する。
「でも、眠らせるだけなの。それなら、ノルンの時間停止と大差無いの。起こしたら反撃される分ノルンの方が優秀なの。」
ただ一人、この魔法の真価を理解してないノルンは自分の方が優秀だと主張する。
「いや、ノルンの能力とはだいぶ役割が違うぞ。例えばノルン、君の時間停止の能力で壁の向こう側の敵の動きを止めたとしよう。でも、攻撃するには壁を迂回しないといけない。だから、時間制限に引っかかって敵を無力化できない可能性がある。そこまではわかるな?」
「当然なの。時間を止めても倒しにいけないんじゃ時間を止める価値はないの。」
それじゃあ、魔法の無駄うちになるのは確実でありノルンはなぜそんな当たり前のことを聞くのかという顔をしている。
「それがメアのドリームワールドなら話が違う。壁の向こうだろうと効果範囲なら魔法さえ発動すれば敵は無力化できる。」
「あっ。確かにそれならノルンが無力化できない相手を無力化できるの。」
この魔法の最大の脅威は敵を戦闘状態に入る前に無力化できる点だ。
「でも、眠らせるだけで倒せるわけじゃない。」
メアが悔しそうにそう言う。ずいぶん、自己評価が低いな。
「それでも、相手が例えSランクだろうと効果範囲に入れてしまえば眠らせられると。」
ダンジョンリーグは相手のダンジョンコアを破壊すれば勝ちだ。無理に敵を倒す必要はない。
「魔法の発動にも時間がかかるしその間にやられてしまったら意味がない。」
思考がだいぶネガティブだな。
「それを考えるのはルイスの仕事だ。このダンジョンのSランクはメアだけじゃないんだ。お互いに適材適所でやっていけばいい。」
最初のSランクがメアだったならばいろいろ考えないといけなかっただろうが(それでも十分強力な能力だが)俺はすでに複数のSランクを召喚している。ルイスが自分の援護ができる魔物を求めたように足りないなら他の魔物が穴を埋めればいい。
「安心していいわ。あなたはうちの主軸になれる戦力よ。だから、自分にもっと自信を持ちなさい。自分に自信満々なノルンと足して2で割ったらあなたたち二人はちょうどいいかもしれないわね。」
先輩としての自覚があるのかルイスが積極的にメアを励ます。
「わかった。頑張る。」
表情の乏しい少女はルイスにそう言って貰えて少し嬉しそうだった。
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