第35話 鬼門
第5節の相手は1勝3敗の鋼のダンジョン。前シーズンも9位、今シーズンもうまくいっていない鋼のダンジョンだが俺たちにとっては一番厄介な相手かもしれない。というのも、鋼のダンジョンにはリフレクションゴーレムという魔法攻撃を全て無効化する魔物が存在する。つまり、メアとシトリーのコンボはこのリフレクションゴーレムが攻めてきた場合、使えないことになる。
「リフレクションゴーレムをどう処理するかが勝負の分かれ目か。」
相手もこのリフレクションゴーレムが重要なのはわかっているので物理攻撃がリフレクションゴーレムに集中しないように対策を取ってくる。このリフレクションゴーレムを巡る攻防で勝負の大半が決まるのは想像に難くない。
「とはいえ、戦力的にはそこまで厳しい相手ではないはずだけどな。」
そもそも完全に育成基盤を整えた俺たちのダンジョンは他のダンジョンに比べて高ランクの魔物が多い。取り巻きを倒していく作業になるなら戦力的に勝っている俺たちが有利なことに変わりないはずだ。俺はそう思いながら勝負の始まったダンジョンを眺めていた。
「なんでSランクまで出てくるんだよ。」
ここまで1勝3敗とこの戦いに敗れれば敗退が濃厚な鋼のダンジョンが取った作戦は総攻撃だった。既に斥候の役割を担っていたゴブリン部隊はゴブリンジェネラルまで失いほぼ壊滅状態、一緒に出撃していたキャノンダイル1体も失った。
「さすがにルイスも焦ってるな。」
この想定外の奇襲はさすがのルイスにも動揺が見られ自軍にも混乱が広がっている。再編を急ぐルイスの表情はかなり苦しげだ。
「さて、どうするルイス。」
今シーズン初めて崩された前線に対してルイスが取った作戦は徹底抗戦。ルイスが直接前線まで出て指示を出し始めた。
「SランクにはSランクか。」
こちらの大誤算は相手がSランクを前線にぶつけてきたこと。それならこちらもSランクをぶつければその差は埋められる。
「フェンリル部隊も投入か。かなり思い切ったな。」
フェンリルとその子供たちであるブリザードウルフの部隊を投入して前線を維持する。後方からはストームキャノンダイルを中心にした砲撃部隊にクイーンドライアドたちの支援部隊と後衛も厚くしてここで相手を潰しきる構えだ。
「相手が全力攻撃で来ているならここさえ防げば勝ちは確定か。」
上空をホーリーフレアイーグルが爆撃しフェニックス2体でそれを護衛しながら抜けていく。相手が総攻撃の構えならこの3体で敵陣は取れるはずだ。対空能力の優れていない敵はあっさり上空の突破を許す。
「これで時間的な猶予も相手には無くなったな。」
戦力のほとんどを前線に送り込んでいる相手はAランク3体を防ぐ手段が無いに等しい。これで無理にでも突撃せざるを得なくなった。当然、相手もそんなことはわかっている。相手のSランクの魔物がすぐに突撃の指示を出す。Sランクの魔物にはルイスが、リフレクションゴーレムには身体能力の高いフェンリルが立ちふさがる。他の魔物にはキャノンダイルたちの砲撃とブリザードウルフたちの連携で敵の主軸の2体から周りを引き離す。
「堅いとはいえAランクの中でも上位の近接戦闘能力を持つフェンリル相手ではリフレクションゴーレムは分が悪いか。」
魔法無効能力とゴーレム特有の堅さでAランクにまで到達したリフレクションゴーレムだが言ってしまえばそれまでだ。物理で完全に対応されてしまってはどうしようも無い。こちらは決着がついたと言っていいだろう。
「そして、それより圧倒的なのはこっちか。」
すでにルイスが敵のSランクをボコボコに潰しており、敵は起き上がるのがやっとという状態だ。
「まさかここまでとは。」
敵のSランクは武人のような格好をしており明らかな近接特化型だった。それをルイスは近接戦闘で圧倒し、誰がどう見ても相手に勝ち目があるようには見えなかった。結局、相手のSランクがやられフェンリルもリフレクションゴーレムを難なく倒したところでフェニックスたちが敵のダンジョンコアを破壊して勝負あり。これで俺たちのダンジョンは前半戦を全勝で折り返したのだった。
「これがダンジョンの格の違いよ。うちのダンジョンは他よりも得られる経験値が圧倒的に多いのよ。同じ物理型に負けるなんてあたしのプライドが許さないわよ。」
勝負が終わり、帰ってきたルイスになんであそこまで圧倒できたのか聞いた答えがこうだった。
「それにノルンに負けないようにあたしも必死に鍛えてるしね。あの子、成長が早いから油断していると負けかねないからね。」
相手のSランクはノルンほど脅威にならなかったとしれっと答えたルイスが頼もしかった。前にルイスがノルンが敵ダンジョンを瞬殺できると言っていたがもしかしたらルイスもできるのでは無いのだろうか。本人に聞いてもはぐらかされるので気になってシトリーに聞いてみると
「まあ、できるでしょうね。倒される姿が想像できないので。でも、本人はそれを最終手段だと思ってるでしょうね。攻めるということはリスクも伴うので。」
と、返ってきた。本当に頼もしい限りだ。
第5節成績
鋼●vs創○
邪●vs海○
空●vs地○
氷●vs炎○
聖●vs獣○
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