第20話 放出リストとドラフト前夜
「まさかBランクの魔物まで出してくるなんて創のダンジョンは何を考えているの?レヴィはどう思う?」
リリース期限翌日、公開された放出リストを見て海のマスターはつぶやく。創のダンジョンからは全ダンジョンで最大の14体が放出された。ゴブリンセイバー、トレントが5体ずつ、ゴブリンアーチャーが3体にドライアド1体という内容だ。
「素直に考えればそこまでして生成コストが欲しいってことだよね。でも、そう考えるとスケルトン系が出てないのが引っかかるんだよね。」
従者は率直に自分の意見を述べる。レヴィの主張はもっともだ。同じ魔物を5体並べるよりも種類をばらけさせた方が利益は高くなるだろう。となるとスケルトンを放出できない理由があるはずだ。
「もしかしたら、あのスケルトンが創のダンジョンの異常なまでの育成能力と関係あるのかもしれないわね。」
そうなると初回から14体ものCランク以上を放出できるだけの育成能力と関連づけたくなるのはおかしくないだろう。実際に理由の半分はスケルトンたちなのだが。
「あともう1つ気になるのが放出されたBランクがドライアドな理由だよね。コピースライムやキャノンダイルを残しときたいからドライアドになったってことならいいんだけど前にマスターが予想してたみたいに育成能力が高くてBランクの魔物が育てられるからって理由なら本当に余りってる可能性もあると思うよ。」
その場合は創のダンジョンはすでにB以上があふれかえっている状態ということになる。創のダンジョンのBランク以上が海のダンジョンで保有するB6体より多ければただでさえ育成能力に差があるのでその差を詰めるのは容易ではない。
「Bランクの魔物が次々に生み出せる状態でさらにドラフトでAランクのカードを3枚手に入れられたらちょっと手に負えないわね。」
創のダンジョンがAランクのカードをドラフトで3枚入手することは確定している。ここで創のダンジョンがA2体を揃えるようなことになればとてもじゃないが戦力で張り合うのは厳しくなる。
「わたしは本当に余ってる可能性も結構あると思う。それを確認するためにもこのドライアドは多少値が張っても取りに行くべきだと思う。」
従者はマスターにそう進言する。ドライアドならば言葉のしゃべれる魔物なので創のダンジョンの情報を取れると言っているのだ。そして、もし予想通りなら創と競うのでは無く確実に2位を取る方向にシフトチェンジするべきだとレヴィは主張する。
「もしかしたらこれでAが2体揃って独走状態になる可能性もあるけどここで出し渋って他にドライアドを取られると2位すら怪しくなるか。」
おそらく他のダンジョンも少なからず同じような結論にたどり着く。それすなわち、仮に創が優勝争いに加わるようになるリスクよりもドライアドを取ったダンジョンに差をつけられて独走されるリスクの方が高いと。
「今ごろ、各ダンジョン大混乱だろうな。」
海や他のマスターたちが放出リストを見て大混乱に陥ってる中余裕なのはその元凶である創のダンジョンだ。とはいえ、創のダンジョンも決めないといけないことがある。
「そろそろ明日のドラフトの優先順位を決めないとな。」
それは翌日に控えたドラフトの指名カードをどうするかだ。元々の最下位分の指名だけなら一番欲しいカードさえ決めれば最後に余り物がついてくるだけなので良かったのが炎の指名権を獲得したので何が消えたらどれと優先順位をつけなければいけない。なんせ選択時間が10分しかない。当日、悠長に考えてる時間は無いのだ。
「まず最初に確認するけど1位指名のトレードダウンは?」
トレードダウンとは対価と引き替えにドラフトの指名順を下げることだ。
「取られたときに不味すぎるカードが存在がある以上あり得ないでしょ。」
確認のためにルイスに聞いたがこれは俺も同意見だ。トップ指名のカードは既に決まっているしこのカードが選択肢にあるのなら他のダンジョンもこのカードを狙うはずだ。この指名は渡せない。
「じゃあ、それ以外でどうしても取りたいカードはあるか?」
逆にトレードアップの選択肢もある。相手が応じるならドラフトの優先順位を上げることも可能だ。
「上位を狙ってまで取るカードは他に無いわね。」
これもルイスと同意見だ。上位へのトレードアップは容易ではないのでそもそも成功率は低いのだが。
「逆に選びたくないカードは?」
ダンジョンの魔物に多様性を求める場合、役割が被りそうな魔物は選びたくない。特に俺が召喚しようとしているのはSランクの魔物であるできれば役割は被せたくない。最後の指名順を持っている以上、こちらも確認しないといけない。
「残りそうなカードだと『堅』はあんまり有効では無いでしょうね。終盤まで残りそうならトレードするのも考えた方がいいかもしれないわね。」
このダンジョンにはヴァンパイアのルイスがいるので眷属化して再生する魔物を作ることはできる。耐久力の高い魔物よりは他の力を持っている魔物を優先したいというのは当然だ。とはいえ、俺たちが求めるSランクの魔物と他のダンジョンが求めるAランクの魔物では役割が違う。Sランクの猛攻を耐えられるようなAランクの魔物が召喚できればゲームチェンジャーになるかもしれないし、1体で長く持ち堪えられる魔物がいればそれだけで戦術の幅が広がる。
「まあ、当日の動き次第か。」
それから、もう少し細部を詰めてドラフト当日に望むのであった。
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