第19話 リリース期限

プレーオフ決勝の翌日、今回のドラフトで入手できるAランクのカードと指名順が公開された。


指名順

1. 創

2. 鋼

3. 空

4. 邪

5. 氷

6. 聖

7. 獣

8. 創〔炎〕

9. 地

10. 海

11. 創


選択可能カード

『水』『雷』『将』『刻』『獄』『魅』『明』『龍』『夢』『堅』『翔』



 指名順は基本的にはリーグの成績下位順、プレーオフ進出ダンジョンだけプレーオフの成績で指名順が左右される。


「これ、ドラフト指名権トレードしたら発表に反映されるのか。」


 ドラフトの指名権のトレードは後でバレるようになっているらしい。つまり、これで炎とAランクを交換した相手が俺だってバレたわけだ。とはいえ、シーズン中に戦った相手の魔物のランクを考えれば俺のところ以外はだいたいポイントがカツカツじゃないとおかしい状況だったのでほとんどのダンジョンにはバレていたとは思うが。


「さて、ドラフトについても考えないといけないけど、まずはリリース期限からかな。」


 週末のドラフトの他にこのシーズンオフにできることはもう1つある。それが余剰戦力の放出と獲得だ。ドラフトの二日前までに各ダンジョンは自身のダンジョンから余剰戦力を放出することができる。そして、他のダンジョンは放出された魔物を獲得することができるのだが魅力的なのがこの獲得方法だ。なんとDPで魔物を入手することができる。ただし、魔物の獲得は入札方式で最高値をつけたダンジョンが獲得になる。入札期限は新規入札から3日、それ以降は新たに入札がある毎に1日追加される。そして、魔物を放出したダンジョンは落札額の半分の生成コストを得られる。このルールで魔物を獲得できる期限はドラフト翌日からシーズン開始までで新規入札は開幕1週間前までになっている。


「あんた別に生成コストに困ってるわけじゃ無いじゃない。」


 俺がこれまで使った生成コストはルイスとヴァルのためのA2枚と王1枚、それから海と地、空にトレードしたBランク1枚に炎のドラフト権と交換したAとコストで139000。数字だけで言えば他のダンジョンを圧倒しているだろうがうち王の分の100000はDP変換で補っており、初期にもらった40000ポイントとリーグで獲得した11000ポイントを考えれば12000ポイントも余っている。ここにDPで変換できる分を考えれば実は既にドラフト分の王のカード3枚分を生成できるだけの生成コストは確保済み。


「まあ、そうなんだけどね。Sランクが大量にいるって事実はギリギリまで隠しておきたいでしょ。そうなるとポイントは使って余裕が無いアピールはやって損は無いと思うよ。」


 プレーオフまで進めばさすがに他のダンジョンが観戦できるためバレるかもしれないがそれまでは隠し通すことも不可能では無い。もちろん、相手次第にはなるが。


「それにここで生成コストを大量に獲得したとなればSランクがもう1体くらいいても不自然じゃ無いでしょ。」


 ルイスを使って簡単にDPを稼げることを他のダンジョンに隠しながらSランクの保有を納得させられるのはやるだけのメリットになる。


「まあ、あんたがそう言うならそうなんでしょうね。」


 ルイスの疑問は解消したようだ。


「売れなかったら意味も無いけどね。だから、何を売るかも大事なんだけど。ルイス、Cランク以上で売りに出しても大丈夫そうな戦力を見繕ってくれ。」


 現場の指揮はルイスに任せているため、育成に関してはルイスの方が圧倒的に詳しいし、指揮官として戦力を動かすのもルイスなので、余剰戦力についてはルイスの方が詳しいのだ。Cランク以上を要求したのはDランクでは価格も期待できないからだ。


「まずはCランクね。ご存じのとおり、ゴブリンセイバーが多少捌いたとはいえ、また増えたから現状20体。こんなにはさすがにいらないわね。進化したゴブリンジェネラルもいるしこれから進化して増えることも考えれば10体売ってもいいかもしれないわね。遠距離型はメイジは貴重だから残しておきたいわね。アーチャーは5体は売って大丈夫。」


 最大の数を誇るゴブリンたちはやはりかなり余っている。勝手に補充もされるので思い切って売っても問題ないとのこと。


「逆にスケルトンたちは1体も出したくないわね。こいつらは倒せば経験値になるからダンジョンにいればいるだけいいわ。スライムもコピースライムは応用が利くからバックアップで残しときたいわ。」


 ルイスの宣言により、スケルトンとスライムのリリースは無しに決まった。当然だがDランクのスケルトンよりCランクのスケルトンの方が倒したときの見返りもでかいためこっちは優先して残したいとのこと。


「トレントもドライアドたちのおかげで成長が早いから放出候補ね。こっちも20体もいらないわ。10体売って大丈夫よ。」


 ゴブリンセイバーと同じようにトレントも大量売却が決まった。


「最後にドライアドだけど基本的に補助に回る役目になるから攻防に1体ずつ、多くても3体いればいいから4体目以降は売って構わないわ。コピースライムで増やすこともできるし。敵陣営にいたら厄介になるから売らなくてもいいけれど。」


 ドライアドは現状でもクイーンドライアドの他にBランクのドライアドが5体ほどいる。おそらく、最初のシーズンからBランクが売りに出ることはまず無さそうなのでここで出せば争奪戦は間違いないだろう。


「ゴブリンのセイバーが10体、アーチャーが5体。トレント10体にドライアド2体か。さすがにこれだけ一気に出したらさすがに育成特化でもごまかしきれないか。」


 既にゴブリンを複数出しているのでさらにこれだけ出したら他のSランクの存在を疑われかねない。


「半分なら育成に成功した分全て売ったでギリ通るか。」


 こうして、リリース期限までに放出する魔物が決まったのであった。

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