第5話 初日の成果


「さて、スライムが手に入ったのはまずは大きな成果だな。これならルイスに育成を頼んでるスケルトン育成を1匹増やせるか。」


 ルイスのスケルトン育成計画は俺が思っていたよりも順調に進んでいる。というのもルイスの王としてのスキル『不死の王』はアンデッドの復活率を100%にし、復活までの期間を短縮する効果があることがわかった。これにより、ダンジョン内のスケルトンは倒されても翌日には確実に復活することがわかった。これにより、育成したいスケルトンで他のスケルトンを倒しまくって経験値を稼ぐことができる。今回、一定量の魔力を溜め込むと増殖するスライムが手に入ったことで効率はさらに上がるだろう。


「あの、あなた海のマスターとBランクのカード交換しましたよね。」


 海のマスターが去って考え事をしていると別のマスターに声をかけられた。


「ああ、確かに交換したけど。」


 そう言いながら声がした方を見る。確か地のマスターだ。


「すいません。わたしと同じBランクのカードを求めてる交渉が聞こえてきたので。」


 気弱そうな少女は申し訳なさそうに言う。


「盗み聞きしてたわけか。それならBランクのカードを求めているのは向こう側だってこともわかっているだろう?」


「はい、あなたはその代わりにCランクのカードとDランクの魔物を求めた。わたしにも同じ条件でトレードしていただきたいと思いまして。」


 なるほど、俺を生成コストを節約できるトレード相手と考えたってことか。


「こっちも既にスライムを手にいれているからね。Dランクの魔物次第で考えるよ。」


 どんな魔物が湧くのかで王の魔物が何かのヒントになるのですぐに突っぱねるような真似はしない。


「スライムを対価に求めたのはスライムが魔力さえあれば増殖する魔物だから。となると狙いは経験値による戦力差を作ること。それならうちのグロウウィードも条件は満たせますよね。」


 少女は自信を持ってそう言った。グロウウィードは植物族の魔物だ。まるで雑草のように増殖するところから名前がつけられるくらい繁殖力のある魔物である。


「確かにスライムを交換する前ならそれで良かったけどこれ以上Bランクのカードを消費するとなるとさっきと同じでは交換できないな。グロウウィード10体出てくるならトレードに応じよう。」


 少し考えた俺は先ほどの倍の魔物を要求する。さすがにここまで要求すれば俺の方が明らかに対価がでかくなるように見えるが。


「わかりました。その条件で大丈夫です。」


 地のマスターは即答で条件を呑んだ。こうして、トレード初日は2つのトレードを成立させたのだった。




「ルイス、初日の戦利品だ。」


 部屋に戻った俺はダンジョンでスケルトンの育成に取り組むルイスのところへスライムとグロウウィードを送る。


「ずいぶんたくさん交換したのね。それでこっちの損失は?」


 ルイスが新たな魔物たちを見ながら聞く。


「Bランクのカード2枚だな。その代わり、それにプラスでCランクのカード2枚ずつは得たけど。」


 俺は素直に報告する。


「まあ、成果としてはまずまずね。それでそのカードはもう使うの?3枚重ねればBランクのカード1枚分にはなるんでしょ?」


 カードは同じランクの属性の異なるカードを一定数重ねれば1つ上のカードに合成することもできる。Dランクは2枚Cランクは3枚Bランクは4枚で1つ上のランクになるそうだが王だけは合成で作ることはできないらしい。


「2枚ずつあるから1枚は召喚で使うつもりだよ。例の検証もしたいし。ルイスもそれでいいか?」


 運用するのはルイスになるので一応確認も取っとく。


「検証はできそうな魔物が召喚できればでしょ。それでこっちもできれば終盤までにBランクにして欲しいって言うわけ?さすがにそいつに特化してもBランクにするには間に合わないと思うわよ。」

「いや、来シーズンまでが目標だったんだけどさすがに難しいか?」


 次のシーズンまでに使えればいいとルイスに伝える。


「来シーズンまで5ヶ月近くあるからそれならなんとか間に合いそうね。この新たな魔物たちがどれくらいの効率になるかにもよるけれど。」


 どうやら効率次第で間に合うそうだ。


「まあ、足りなそうならまた魔物を増やしてくればいい。それでDランクの魔物の間引く数なんだけどスライムは10体になるまで待ってそれ以降は1日1体ずつダンジョン内の個体を増やしていこう。グロウウィードはもう10体だから毎日増殖した2体目以降は倒して構わない。」

「わかったわ。」


新たな魔物たちはダンジョンから生まれるわけでは無いので全て倒してしまえばそれ以上増えることは無い。なので先に運用方針を決めておく。



「じゃあ、新たな魔物の召喚と行きますか。」


 一通りルイスの打ち合わせが終わり、Cランクの魔物の召喚に入る。


「今回は直接ダンジョンに送るぞ。」


 俺はルイスにそう伝えて召喚を開始する。ダンジョンが神秘の光に包まれやがて光は形を整え1体の魔物が新たにダンジョンに誕生する。


「バレットダイルか。即戦力とは言わないけど進化すれば脅威にはなるな。」


 バレットダイルは背中に小っちゃい砲が2つ付いたワニなのだがこいつが進化するとキャノンダイルという砲が1つになる代わりにとてつもない威力の砲撃をする魔物になる。


「そうね。進化すればちょうどあたしのフォローができる遠距離砲台になるのは大きいわね。」


 バレットダイルそのものは射程が短いのでそれほど遠距離から攻撃できないのだが進化まで持って行ければ大きな戦力だろう。


「それで例の検証できそうか?」

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