第6話 検証
日付は数日さかのぼる。
「なあ、ルイス。スケルトンって倒されても復活するのに経験値にもなってDPも溜まるわけだよな?」
ダンジョン内で魔物や人が倒れるとそのランクに応じてDPが溜まる。ランクは人間であればEランクもあるのが。得られるDPはランク毎にEは1DP ,Dは10DP, Cは100DP, Bは1000DP, Aは10000DP, Sは100000DPとなる。
「1回倒されてるんだから当然じゃない。何かそこに疑問があるわけ?」
ルイスは何を今さらといった様子だ。
「いや、ヴァンパイアって息の根が止められて一度死のうとその状態から再生して復活するだろ?その場合って扱いどうなるの?」
そう聞かれたルイスは不思議そうな顔をする。
「確かに考えたことも無かったわね。少し試してみましょうか。」
ルイスはスケルトンに自分に攻撃するように命令するがスケルトンではルイスがいくら無防備でも思うようなダメージが出せないらしい。
「マスター、スケルトンじゃあたしの再生力未満のダメージしか出せなくて検証は不可能よ。これくらいのダメージなら検証までに1ヶ月は必要よ。」
ルイスを一度でも絶命させるだけの力が出せず検証は持ち越しになっていた。
そして、トレードが解禁されたことで魔物が増えたわけだがルイスを倒せる魔物は現れたのだろうか。
「バレットダイルは砲撃では威力も低いし難しいでしょうけど噛み付けば首がもげるからいけるはずね。冷静に考えたらスライムでも窒息させればいけるはずよ。」
ルイスがいけると判断したのでさっそくバレットダイルに命令してやらせてみる。
ガブりとしゃがんだルイスの頭に噛み付いたバレットダイルはそのまま力の限りルイスの首を噛みちぎる。その瞬間、ルイスの頭を吐き捨てたバレットダイルの体は光に包まれ変化が生まれる。
「まさか。」
俺は慌ててルイスを執務室に強制退去させて保護する。執務室のソファーに寝かせたルイスの体は瞬時に再生していきバレットダイルを包んでいた光が収まる頃にはルイスの再生も終了していた。
「どうだった?」
再生の終えたルイスが意識を取り戻し、起き上がる。
「バレットダイルがキャノンダイルに進化した。」
俺はダンジョンコアからダンジョン内の魔物データを確認してルイスにそう告げた。
「どういうこと?」
ルイスはいまいち状況がわかっておらず首をかしげる。
「DPも魔物の経験値も正常に入るらしい。DPも加算されてるよ。つまり、倒された判定になるってことだな。」
どうやらバレットダイルはSランクであるルイスを倒したことで1発で進化に必要な経験値を稼ぎ出したらしい。
「そう、なら死んでみて良かったわね。」
これでDPがだいぶ潤った。これで余裕のあるダンジョン経営ができるだろう。
「ルイスのおかげでDPが増えたからダンジョンが一気に増築できそうだよ。」
俺はその使い道を考える。これは考えるだけで1日使いそうだ。
「そのことなんだけど、DPってカードの生成コストに変換できたわよね?」
「そうだね、今のだけで最高レートの50000ポイントと交換できるようになったね。Aランクのカード5枚分だ。こうなれば今シーズンから参加しても優勝が狙えるだろうね。」
プランを変更してその選択肢も取れるようになった。そこまで含めて考えねばなるまい。
「マスター、あなたと出会った日あなたに言われて考えたの。このダンジョンを最も安定させるためにはどうすればいいか。それであなたに検証の話を聞いてから成功したときにこの提案をしようってずっと決めてたのよ。あたしの目標はこのダンジョンを世界最強のダンジョンにすること。ねえマスター、だからあたしをもう一度殺して?」
ルイスは両手を開いてそう言った。
「いいのか?もう一度死の痛みを味わうことになるけど。それに回復に時間がかかるんだろ?」
ルイスが万全の状況になくてはダンジョンリーグで戦うのは難しいだろう。それはやはり今シーズンを諦めると言うことだ。
「それでもう1体Sランクの魔物が手に入るんなら安いもんじゃない。それにこの作戦が使えるのはダンジョンが口を開くまで、でしょ?」
ダンジョンが開けば万全の状態で侵入者に備えなければいけなくなる。リスクを取れるのはこの1年だけだろう。
「ありがとう。それじゃ、もう一回頼む。」
今度はスライムに窒息死させる方法でルイスに死んでもらった。
「これ、あんまり精神的には良くないわね。」
復活したルイスは起き上がるなりそう言った。
「嫌ならやらなくても良かったのに。まあこれラストだしもうやる必要ないけど。
「何言ってるの。ダンジョンが開くまで1年。あと10回は死ねるわ。できることをやらないなんて損じゃない。」
ルイスは当然のようにそう言った。そこまでSランクの魔物が揃うとまさに魔境だ。だけど、約束したからな。
「ダンジョンリーグも戦ってもらわないといけないんだから万全でいてもらわないと困るって。優勝するって約束だろ。ルイスがいないで頂点とっても約束が果たせないじゃないか。」
「それもそうね。」
ルイスは約束を思い出して嬉しそうに笑った。
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