第33話 新たな計画
「なるほどね、必要になれば補強に動かざるを得なくなるか。」
海や地のマスターたちは自分のダンジョンの弱点をかなり気にしているようだった。そして、残シーズン動いたダンジョンの補強に積極的に動く姿勢も前シーズンから変わらないはずだ。それなら必要な状況にさえなれば補強に動くのも時間の問題だ。
「だったら、少し動いてみるか。」
そう考えて俺はルイスを呼んで作戦を立てる。
「まずはここかな。」
俺は最初の第1段階として1つ目の相手に電話する。
「いきなり何のようだ。俺様は今とても忙しいんだ。」
最初に連絡したのは獣のマスター。現在2連敗中で今一番焦ってそうなマスターだ。
「連敗スタートでかなり焦ってるようだね。」
まあ、こういう反応をされるのは予想通りだ。
「わかっているなら連絡するな。切るぞ。」
獣のマスターは不快そうに言う。
「まあ、待ってよ、わかっているから連絡したのさ。即戦力が欲しいんだろ?」
獣のダンジョンの魔物状況は初戦で海のダンジョンと当たっていることもあり、ある程度把握している。だから、こう続ける。
「こちらにはトレードの用意がある。もう少し話を聞いていかないか?」
この状況で即戦力が手に入るトレードと聞いて興味を持たないマスターはそう多くは無いはずだ。
「わかった。話を聞こうじゃないか。」
予想通り獣のマスターは興味を持ったようだ。
「こちらから出すのはフレアイーグルとゴブリンジェネラル、それからゴブリンセイバー2体に下級のゴブリン3体、さらにBランクのカード1枚。」
獣のダンジョンにとってはかなりの大戦力だろう。
「大盤振る舞いだな。それで対価はなんだ?」
獣のマスターにとっては喉から手が出るくらいの戦力だ。
「前回のドラフトで取った翔Aのカードと次のドラフトの指名権。」
獣のダンジョンがAランクの魔物が召喚できない状況にあることは間違いないはずだ。しかし、ここ2戦の結果を含めればBランク1体くらいの召喚の選択肢は残り悩ましい状況だったはずだ。
「俺様がまだAランクを召喚できてないと踏んでの交渉か。」
獣のマスターは少し黙り込んで考える。獣のダンジョンからすれば将来を犠牲に2体のBランクとさらにもう1体のBランクを召喚してさらに生成コストが少し余る計算になる。
「どうだ、魅力的な提案だろ?」
長期的に見れば少し損をする計算だがこのまま補強せずにボロボロ負けがかさめば得られる生成コストは減り、将来的に得られる利益を失う可能性もある。つまり、補強して勝てばいいのだが。
「確かに魅力的だな。でも、長期的に見れば俺様は損をすることになりかねないな。ゴブリンアーチャーと下級のゴブリン2体を追加で増やすのは可能か?」
獣のダンジョンがノーと言われない範囲で利益を増やそうと画策する。
「まあ、いいかな。」
俺は少し迷ったフリをしてから頷く。本当は悩む必要も無いくらいこちらに有利なトレードなのだが余裕を少し隠してこちらの商品の価値があることを印象づける。ゴブリンジェネラルとか半分在庫処分も含めての交渉だったのでその意図は全力で隠す。こうして新たな布石は打たれたのだった。
「ここならいくらでもやりあえるわね。」
ルイスたちは第3節のフィールドに降り立っていた。そして、ルイスとノルンが向き合っているがすでに戦いは始まっている。
「本来なら仲間同士で戦ってる場合じゃ無いんだけど。」
二人を眺めながら俺はつぶやく。第3節の相手は空のダンジョン。そう、再建中の空のダンジョンである。
「空のダンジョン相手ではまず負けることは無いか。」
リーグ戦の会場なら魔力を使いたい放題使っても戦いが終わったら元に戻るからとルイスの提案で他のメンバーだけでも絶対に負けそうに無い空のダンジョンとの対戦中、ルイスはノルンに戦い方を直接レクチャーしている。ひたすらボコボコにしてさらに未熟な部分を指摘してノルンにとっては地獄のような時間になりそうだ。
「しかし、全く攻めてこないな。」
お互いの戦力にかなりの差がある場合、攻撃か防御に専念しなければ善戦すら難しい。そして、未知の世界に飛び込む攻撃よりも構造を知っている自陣で戦う方が圧倒的に勝てる可能性は高くなるだろう。
「まあ、ルイスにとっては好都合だろうけど。」
他のダンジョンより頭一つ飛び抜けて戦力の整っているダンジョンと最も戦力が弱いダンジョンの戦いだ。勝負を開始すれば苦労するわけも無いのだがルイスの主目的はノルンを鍛えることなのでこちらも焦る必要は無い。
「しかし、動きの無い戦いだな。」
ひたすら斥候の攻撃でチクチク攻撃しながらロクに攻め込みもせずに長く続いた試合は残り1時間を切ったところでようやくルイスが攻撃の合図。そこからはあっという間にキャノンダイルたちの一斉掃射フレアイーグルと変身したコピースライムたちで行われる絨毯爆撃などで相手の防衛ラインを破壊し、一瞬で勝負がついた。しかし、ダンジョンコアは制限時間ギリギリまで破壊されずノルンの悪夢は最後まで続いた。
第3節成績
空●vs創○
炎●vs海○
聖●vs地○
氷●vs獣○
鋼●vs邪○
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