第15話 みみしっぽ

「ふーむ、にしてもこれが30代後半の男だなんてねぇ、見た目は幼女と言っても過言では無いね」

「幼女って…そこは少女とかもうちょっと言いようがあるんじゃないんですかね…合ってはいますけど」

「眠り姫ってこういうのを言うんだろうね〜かーわいいー」


 ミトリアさんは寝ているローウェスの頬をぷにぷにと突いている。時折呻き声を上げてはいるが中々に目を覚まさない。

ボクたちは1度リビングに戻った後。ミトリアさんにお茶を出した、一応だがお客様なのだ。出さなくては失礼だろう。もっともこの都市の最上位のワーカーである彼女が飲んでくれるかは疑問であるが。

 と思っていたが…


「ん〜いい香りだね。こんなに良いお茶高かったんじゃないの?」


 あっさりと飲んでくれた。ちなみにお茶は貰い物で、少し前に仕事をした際に依頼人がくれた物である。


「いえいえ、貰い物なので」

「ケイちゃーん、おかわりー」

「はいはい…それにしても…」

「ん?なんだい」

「飲んでくれるんですね、お茶」

「そりゃね、入ってるものなんて匂いでだいたい分かるし、それにローウェスの傍にずっと居たエドが君を信頼してるのなんて見てたらわかるしね」

「そ、そうですか…アハハ…」


 そんなことを言われたら、嬉しいが少し複雑である。


「今なんてだいぶマシだよ?昔なんて報酬を払ってもらおうとして依頼人に出された珈琲に睡眠薬が入ってたことがあるからね、そりゃあ死ぬ気でそういうの技能が身につけたよ」

「あ、その…すみません…不快にしてしまったなら謝ります…」


 ミトリアさんは一瞬キョトンとした後、クスクスと笑いだした。


「あ、あの?」

「あぁ、ごめんごめん。いやなに相手を気遣って直ぐに謝れる人間がこの都市に居ることに驚いただけだよ。そりゃあローウェスが気に入るハズだよ。本人は同情とかで雇ったとでも思ってそうだけど、君の善性を感じ取ったのかな?アハハ」


 その時である。家中に叫び声がこだまし。リビングの扉が勢いよく開けられる。


「み、耳、しっぽ!耳としっぽが!?」

「よっ」

「へ?ね、姉さん…??なんでこ、ここに…」


 ローウェスさんがリビングに入り、ミトリアさんと僕達を見やる。

 さっきまで興奮気味、というか困惑で立っていたしっぽは下を向き、全身から力が抜けたのかへたりこんでしまった。


「ローウェス〜なんで連絡しないのさ〜」

「ひ、ね、姉さん!ま、待ってください!?そこさわ…ひゃっ!」


 ミトリアさんはものすごい速度でローウェスさんに絡みつく。

 防御態勢を取ろうとしたローウェスさんの抵抗虚しく、抑え込まれて耳やらしっぽを弄り回されていた。


「んー、耳としっぽに加えて、犬歯が伸びてるねぇ。オオカミとかに近いかな?さすがは炎狼って呼ばれてただけはあるねぇ」

「!ま、待ってください!お、落ち着いて…あぁっ!さ、さわらない…で…っ」


 耳としっぽが敏感なのか、あまりよろしくない色っぽい声を出していた。


「え、エドちゃん…エドちゃん?」

「…これは…いい物だ…」


 そう言い残すと、エドちゃんは幸せそうな顔をしながら倒れた。


「エドちゃーん!??」


 しばらくして。


「ハァ…ハァ…この人は俺の姉のミトリア・フリードだ…え?知ってる?そうか…」

「ま、今後ともよろしく〜。エドちゃんは寝ちゃったのかな?」

「はい!よろしくお願いします!その…まぁそれで合ってます…はい」

「で、姉さんはなんで俺のとこに?なにか用があったんじゃ…」

「あぁ、そうだね。とりあえず今日はその件で話に来たんだった」

「その要件は?」

「いやー明日セブンズを集める集会が有るんだけどさ〜。ローウェスは一度も参加してないって事で今回は強制参加らしいよ〜」

「マジか…にしても強制参加だと?面倒だな…CEOにクレームでも入れてやろうか…」

「せ、セブンズ…?ローウェスさんが…?」

「え?まさか言ってないの?」

「伝え忘れていた…その、なんだ。俺は”憤怒イラ”のセブンズなんだよ…」


呆気なく伝えられたが。セブンズとは都市において多大な被害を出した元歪人や1つ前ののセブンズを殺し危険性の高いモノを管理するための称号、通称大罪指定浄罪ワーカー隊”SEVENS”

7つの大罪の名を冠したワーカー達、私は今。

傲慢スペルヴィア”と”憤怒イラ”のセブンズの目の前にいた。


◆◆◆

3/7 加筆修正

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