第26話 お久しぶりです
俺は姉さんに誘導され円卓の前に立たされる。
恐らく自己紹介をしろってことだろうか。
「俺はローウェス・フリード、ワーカーズ・ファイアウルフのリーダーをしている。こんな見た目だが一応男だ、よろしく」
「よろしく〜」
「よろしくお願いします!」
「……」
「レイジス〜挨拶くらいしたらどうだい?」
「俺が?こんな乳臭そうなガキに?なんの冗談だよ、どうせまたテメェの下らねぇ冗談だろ、楽でいいよなランキング1位様はジョーク言ってるだけで良いんだからよ」
「…試して見るか?」
「あ?」
ローウェスの姿が一瞬で消え、椅子にもたれかかっていたレイジスの頭を掠めそうなほど近い場所に足が突き刺さっていた。
「…!?」
「まぁ、よろしくレイジス…だっけ?」
「お、おう…」
「話すと長くなるが事故でこうなったとだけ言っておく、てか姉さん伝えてなかったのか?」
(事故…ねぇ、確かにバレればケイニスの身が危ないだろうし、しょうがないかな)
レイジス、キッシュ、リーシィンとの挨拶も程々に済ませると、俺は姉さんに質問する。
「姉さん、そういやここってCEOのジジイの部屋じゃなかったか?」
「あぁ、それは」
「それは私が説明します、お久しぶりですね先輩」
「…!」
見知った顔、俺が昔在籍していたイーリス旅団の末席でありイーリス旅団の生き残り。
そして俺が廃人同然だった頃に世話をしてくれていたアルシア・ルーデリスその人だった。
「すみません、エレベーターが壊れていたので遅れてしまいました」
「アルちゃんこんちゃー」
「はい、キッシュさんこんにちは」
「あ、アルシア…?な、なんでここに…」
「簡単なことです、私が今のCEOだからですよ」
「な、え?」
「前CEOは不正が発覚した後、行方不明になった為今は私が臨時でCEOをやらせてもらっています」
「そ、そうなのか」
アルシアは俺を見ながらニコニコ笑っているがずっと黙っている。
何か悪い事をしただろうか、身に覚えがない。
あの時だってちゃんと出ていく時に世話になった礼を置いていった筈だが、もしや足りなかったのだろうか。
「あれ〜?アルちゃん怒ってる?」
「いえいえ、それでは今後の動きと情報の共有をやっていいきます」
アルシアはそう言うと手に持った端末を操作し、円卓の上にホログラムを映し出す。
そこには失踪したとされるワーカー数名の情報と最後に目撃されたとされる位置が映し出されていた。
「ここ最近頻発しているワーカーの失踪の捜索及び、原因の究明を中心に活動していくことになります。人選に関しましては適正の有るSEVENSをその都度向かわせることになります。なにか質問はありますか?」
「適正ってことは個別?それと何かするの〜?」
「はい、適正というのは潜入などです。個別ではなく最低でも2人で行動してもらいます」
「今どんだけの情報が集まってんだ?」
「現在判明している情報は失踪したワーカーは全て男性、そして全員共通しているのが作戦行動が終わり、帰投しているソロで活動しているワーカー、そして仲間と一時的に離れた隙を狙われ姿を消しています、カメラの死角であることも共通と言えます、この点を見ても失踪は人為的に引き起こされている物と思われます」
(ワーカー1人を無力化して拉致…それも時間を全くかけずに…ますます分からなくなってきたな)
謎は増えるばかり、目的も何も掴めていない。
ケイニスの元上司とガスマスクの男の会話では聖遺骸という単語が出ていた。
遺骸、巨大な歪人の死体が折り重なって出来たとか小さな歪人が寄り集まって出来たダンジョンだとも様々な噂が流れている。
俺の指輪も昔遺骸で見つけたものだ。
異常な場所はアルビオンの地下などに多く存在するが、聖遺骸なんて言葉は初めて聞く。
「以上で報告を終了致します、せん…ローウェスさんは後ほどこちらへお越しください」
「…へ?ちょ、ま」
「それでは解散」
集会が終わると、俺以外の全員は部屋から出ていき俺とアルシアだけが部屋に残った。
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