第27話 帰宅
「…えっと、アルシア?その…っうお!?危ね!何しやがる!!」
アルシアの名を呼んだ瞬間、俺の頭があった場所を脚が通り過ぎる。
「避けましたか…本当に先輩…?」
「ほ、本物だ!本物だって!」
「そうですか…!!」
「ちょっ!?」
アルシアの鋭い連撃をすんのところで受け流す。
昔俺が教えた技の数々とそのキレは全く衰えを見せておらず、むしろ鋭さと速度は向上していた。
「少し…おいたが過ぎるな!アルシア!!」
「キャッ!?」
「うあっ!?」
アルシアの脚を蹴り転ばせ、抱えようとするが勢いを殺しきれずアルシアは俺の方へ倒れ込んだ。
アルシアに押し倒されるような体制になる。
「いってて…」
「ほんとに…ほんとに先輩なんですか…?」
「あぁ、俺だ」
「…なんであの時一言も掛けてくれなかったんですか…!置き手紙と大量のクレジットだけ置いて消えたんですか!!?」
「すまなかった…その…バツが悪かった…」
「そんなのが理由になりますかッ!馬鹿じゃないですか!?」
「ごめん…」
アルシアが怒るのも当然だ、突然失踪したようなものなのだから。
俺も見通しが甘い、あの時すこしでも話していれば良かったと今更後悔するのも遅いだろう
「…もういいです、はぁ…今はアイン先輩の子供と暮らしているんですよね?先輩には先輩の事情があるんでしょう」
「…」
「それにしても…どうしてそんな姿に…?」
「今多発している失踪事件に巻き込まれたと俺は考えている、拉致された他の奴らも俺みたいに作り替えられてるかは俺も分からない」
「…もし何かわかったことが有れば連絡してください」
「わかった」
「それではまた後日」
次の集会の日時、そしてSEVENSメンバーとアルシアの連絡先を手に入れ部屋を出ると姉さんが廊下で佇んでいた、どうやら俺を待っていたようだ。
「ローウェス〜何話してたんだい?」
「姉さん…怒られちまったよ…」
「ありゃ、まぁどんまい?これからどうするんだい?」
「情報集めが最優先だな、姉さんの能力で集めたりできないのか?」
「無理だね〜その場でその事象をあったことにする事はできるけど情報なんて細かいものを集めるのは無理なことだね、私も万能じゃないんです〜」
「…そういや、俺が下の階でやり合ったやつはどうなった?」
「ローウェスが戦ってたのは見た、けど死骸の姿かたちも無かったよ。どうなってるんだか」
「そうか…俺は家に帰るけど姉さんはどうする?」
「私は本屋に頼んでたのが入荷したらしいからそっちかな〜」
「姉さん紙の本なんて集めてるのか?」
「まぁ、そんなところかな」
何気ない会話をして、家に帰る。
階段で脚が産まれたての小鹿みたいになったがさしたる問題では無いだろう。
「おかえりローウェス〜」
「おかえりなさいローウェスさん」
「ただいま〜…あぁ、もう動けん…」
俺は部屋に着くなりソファーに倒れ込み、仮眠を取るため目を閉じたがそれを知ってか知らずか端末に着信が入る。
「ワーカーズ、ファイアウルフです…依頼でしょうか、ご要件は?」
『剣夜会所属のハルスケ・カミヤっす、依頼したいことがあるっす』
「ハルスケか!久しぶりだな!」
電話の相手は昔世話になっていた所の指導者の孫、ハルスケ・カミヤだった。
小さかったエドがよく遊んでもらっていたのを思い出す。
『あれ?ローウェスさんのとこに新しく入った子すか?…おかしいなぁ最近行ってなかったんすけど…』
「ローウェスであってる」
少しの沈黙の後、ハルスケの驚愕した声が響く。
さすがに段階をふむべきだった。
『えぇっ!?マジすか?…』
「事情があってな…エドに変わろうか?」
『…あ、大丈夫っす。明日の正午に剣夜会本部へ来てください、そこで詳細を話します。受けてもらえるっすか?』
「わかった、とりあえず行ってみよう」
『感謝するっす!爺ちゃんにも伝えておくっすよ!』
通話が切れると俺は2人の元へ向かい、通話の内容を話す。
「ハルが連絡してきた!?なんで変わってくれなかったの!」
「ハハハ、すまんすまん。まぁ明日は23区の剣夜会本部へ向かうから多分会えるぞ…それにしてもまた23区か…」
「ローウェスさんがお世話になっていたところですか…失礼の無いようにしなければ…」
「まぁ、そういうことだ。とりあえず今日はゆっくりと休んで疲れを取っておけ、多分だが…討伐の共同作戦だろうからな」
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