第16話 ホットナイト
神秘的なようでそうでも無くどこか懐かしい、俺はそんな教会で誰かと一緒に佇んでいた。
誰かは思い当たる、何時も俺はその人の横顔に見とれていて、それがバレた時は俺に可愛らしく笑いかけてれていた。仕事がない日は一緒に街を歩いたり、雨が降ってる日は一緒に本を読んで過ごしたり、俺とその人は一緒にいる事がいつしか普通のことになっていた。
ハズだった。
今までの風景が一瞬にして”地獄”へと変わる。
炎に包まれ、俺の隣に居たはずのあの人は周りの炎とは対照的に冷たく、横たわっていた。
「アァ!?ハァ…ハァ…またあの夢か…」
ベットから飛び起きる。
俺は指輪を心臓へ当て、深呼吸をする。
呼吸が苦しい、汗が止まらない。安心と同時に罪悪感と喪失感が一気に押し寄せてくる。
落ち着くのに少し時間はかかったが、再び俺は枕に顔を埋める。
「…眠れない…」
マットレスに尻尾が当たるのでうつ伏せに寝転ぶことはや10分、全く寝付けないでいた。
ベッドを飛び降り、トイレへと向かう。
用を足した後に部屋へ向かうが見慣れている廊下も暗いせいか少し長く感じる。
「ヒャアッ!?」
歩いていると何かに躓き廊下へ思いっきり顔面を強打した。
足元を見てみると。
「痛ぅ…ケイニス…?なんでここで倒れてんだよ…」
ケイニスが力尽きていた、よく作業が一段落着いた時に電池が切れたように寝てるのをよく見るが廊下で寝てるのは初めて見たのだった。
「お、おいケイニスこんなとこで寝たら風邪引くぞ…」
「んん〜?、あ、すみません…ローウェスさん」
「なんでこんなとこで力尽きてんだよ…」
「あはは〜すこーし機材の調節をしていまして…そんなローウェスさんはどうしたんですか?少し顔色が悪いようですが…」
「あぁえっと…実は…」
◆◆◆
「眠れなくて…」
「あ〜なるほど〜」
ローウェスさんは恥ずかしそうにそう口に出すと頬を赤くする。
「そうですね…あ、いいこと思いつきました」
「?いいことってなんだ?」
「まぁまぁ、とりあえずリビングに行きましょう」
ボクはローウェスさんと共にリビングへ向かう、もちろんエドちゃんを起こさないようにゆっくりと。
「すぐ出来るので、ちょっと待っててくださいね」
「…わかった」
怪訝そうな顔でソファーにちょこんと座っているローウェスさんへマグカップを渡す。
「これは…ホットミルク?」
「はい、ホットミルクには安眠作用が合るらしくて、1杯どうです?」
「ふーん…それじゃ貰うぞ…甘いな」
「はい、一欠片だけホワイトチョコを入れてみましたが…どうですか?」
「…おいしい」
「フフ、それは良かったですそれではボクも…」
自分のホットミルクに口を付け、キッチンにある机に座り一息ついた所で、ローウェスさんになぜ眠れないのか聞いてみた。
「えっと実はだな…悪夢を見たんだ」
「悪夢…ですか?」
依頼となると恐れずに敵地へと乗り込むローウェスさんを見ていたからか少しだけ唖然としてしまった。
「少し意外ですね…どんな夢を見たんです?話せば楽になると思いますよ」
「そうかありがとう…内容…か、最初は穏やかな夢なんだ、とても幸せで暖かいそんな夢」
「…」
「だけどそのまま朝を迎える事が出来ないんだ、途中で地獄みたいな悪夢に変わるんだ…いつも隣に居たあの人が死ぬんだ、今でも思い出す…」
ローウェスさんの呼吸が少しだけ荒くなる。精神的ストレスが原因だろうか。ローウェスさんの背中をさすり落ち着かせる。
私よりも小さいその身体は少し震えていて、不安に満ち満ちていた。
「…」
「辛いことを思い出させてしまってすみません…」
「その…」
「はい?」
「話を聞いてくれて…ありがとう、おかげで少し楽になったよ」
不安に満ちていたその表情は、いつしか柔らかな笑みへと変わっていた。
「それは…良かったです!私の方もちょうど煮詰まっていたので。あ、マグカップは明日洗うので水に浸けといてくださいね」
「わかった、それじゃおやすみ」
「はい、また明日!」
ボクも自分の分のホットミルクを飲み干す、飲み干したそれは、いつもより少しだが甘く感じた。
ボクに出来ることは何でもしよう、それが彼の為ならば。
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