第8話 光学迷彩

ケイニスの初仕事順調に進み、カメラのない部屋へとたどり着く。

辺りには頭の弾け飛んだ死体と、タレットでバラバラにされた死体が1人を除いて散らかっていた。


「仕事が早くて助かるよ、ケイニス」

『はい、なんでしょうか?』

「全身義体の死体がここにある、目に入り込んで辺りを探ってくれ」

「はい、分かりました…ローウェスさん!後ろです!」

「っ!!」


横へ体を逸らす。すると地面には大きめの弾痕が刻まれる。


「光学迷彩か!ぐっ!」


重い一撃が俺の腹は直撃し壁に叩きつけられる。サーモグラフでしか姿を捉えることが出来なかったが、恐らくPAパワーアームドだろう。


「ハハハハハッ!!ザマァないぜ!テメェのせいで俺の計画が台無しだ!手足もぎ取った後は物好きな金持ちにでも売り払ってやるよぉ!ギャハハハハ!!!」

「そうか…よっ!!」


指輪からサブマシンガンを取り出し、天井を円形に撃ち抜く。


「な、光学迷彩が…!?」


天井が落ち、姿の見えない《PA》へ直撃する。

土煙が晴れると、光学迷彩の剥がれた旧式軍事用パワーアームド《BLAZEGUNNERブレイズガンナー》が姿を表す。

右腕のHBヘビーマシンガンドレッドファイアが特徴のヘビー級PAである。

恐らく地面が抉れる程の銃痕はこれが原因だろう。

(旧式の光学迷彩は粉塵に弱いが、クールダウンが直ぐに終わる、さっさと無効化しねぇと…)


「てめぇ…さっきはよくも…!ケイニス、PAの光学迷彩をオーバーロードさせろ!!」

『分かりました、その間逃げ回ってください!』

「どこへ逃げやがる!逃がさねぇよ!」


PAは光学迷彩により姿を再び消し《ドレッドファイア》を連射する、コンクリートの壁がいとも簡単に崩れ落ちて行く。

走り回りながら避けてはいるが1発でも当たれば身体に風穴が空くだろう。


「ケイニス!まだなのか!」

『もうすぐです!あと少し耐えてください!』

『私に任せて』


一瞬だが姿を表したBLAZEGUNNERの脚部関節をエドの放った弾丸が貫通し、バランスを崩した。


「よくやった!エド!」

『掌握完了しました、オーバーロードさせます』

「がァッ!!やりやがったな!クソッタレめぇ!!」


《BLAZEGUNNER》が火花を上げながら姿を現す。

装甲表面の光学迷彩をケイニスがオーバーロードさせた、光学迷彩はもう使えないだろう。

指輪から刀を取りだし、居合を放つ。

赤い残光は右腕のドレッドファイアを切り落とし無力化した。


「この!!銃が無くたってテメェをブっ殺せるんだよ!!死ねぇ!!」

「そうかよ、じゃあ四肢が無くても行けるよな?」


残った3つの腕と足を拾っておいたドレッドファイアで粉々に砕く。


「ひ、まてっ!」

「待たねぇよ、こんなめんどくせぇモン使いやがって」


ドレッドファイアを放り投げる。

バラバラになったBLAZEGUNNERのパーツが散らばり、中の奴はガチガチに拘束されていた。

旧式PAの欠点は電気系統がイカれると自力では出られなくなることだ。


「ケイニス、ワーカーズギルドに連絡しろ。このアホは今動けねぇからな」

『了解しました!』

『お疲れ様ー、にしてもPAが出てくるなんて思って無かったね』

「こいつが出てこなけりゃもっと早く終わったんだがな」


瓦礫へ腰掛ける。

足を組み中にいた男を睨みつける。

まるで俺を化け物でも見るかのような目がものすごくイラッと来る。


「ひっ…」

「俺らのしったこっちゃねぇが、てめぇらこんなとこで何してたんだよ?」

「……」

「今ここでお前の脳天ぶち抜いてやってもいいんだぜ?」

「その必要は無い」

「ん?あぁ回収班か、早いな。そこのPAの野郎がそうだ」

「お勤めご苦労であった、報酬は後ほど」

「おう」


チンピラみたいに威圧していた所を見られて少し恥ずかしいが、ボロボロのPAを回収するギルドの職員を見おくり、少し休息をとる。

体が変り、力の入れ方が変わってしまった為思いのほか手こずってしまった。

これから慣らして行くべきだろう。

空気が冷たい、そろそろ雪の振る季節だろうか。


「…さん?」

「?」

「ローウェスさん?」

「!あぁ、すまん。少し考え事をしていた所だ」

「帰ろー」

「おう、帰るか」


俺らは車へ乗り込む。

仕事を終えた後の夕日は美しく、都市の摩天楼の間を縫うように俺らを照らしていた。


◆◆◆

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