第24話 ロック解除

一瞬何が起きたか分からなかった、いや分かるわけが無い。

基本的な特異点の対処法は逃げ、攻撃方法を探ることだ。だが今ここにいるのは俺と目の前で佇んでいる影だけだ。


(クッソ…下手したら理性消えちまうから使いたくなかったが…仕方ねぇ)


イメージは簡単だ簡単なことだロックを外せばいい。

ローウェスは直ぐに立ち上がると地面へ強い衝撃を加え隆起させると、それを盾にし影の見えない攻撃を防ぐ。

斬撃によりバラバラになった地面の欠片をローウェスが力いっぱいに殴ると影の脚の1本を


「…!」

「第2ラウンド始めようぜ?」


ローウェスは限定的に行使していた歪人の力を本格的に解放し全身を炎で覆う。

短かった髪は長く伸び、目は人の物から獣の様な物へと変化する。


(あぁは言ったが左手が使えねぇ上に血を失いすぎた…持って10分…簡単だ、俺が死ぬより先にアイツを殺せばいい…ああクソ頭が痛え)


擦り切れる理性を引き戻す様に拳を強く握りしめる。

影は地面を踏みしめ、再び距離を詰めるとさっきまでとは比べ物にならない速度でナイフを振るう。

それを受け流し影の背後に回り込み鋭い蹴りを放つ。背の脚による防御をものともせず、蹴りは影の脚を引き千切り建物をなぎ倒しながら吹き飛んでゆく。


「ハハハッ!動きが軽い」


ローウェスが地面を蹴る、吹き飛ぶ影に追いつき影の顔面を掴むと地面に叩きつけた。

荒々しいその動きは、正に獣であり、様々な武器を行使するローウェスの戦闘スタイルからはかけ離れていた。


「ガァッ!まぁだ動けんのかよ!ハハハッ丈夫だなぁ!?」


影は動けなかったではなく動かなかった、こちらへの反撃の機会を伺っていたようだ。

鋭い蹴りを喰らうがあまり痛くない、痛覚が馬鹿になっている。

影はトドメとばかりに両手でナイフを握り込むと、高速でローウェスの心臓めがけ突っ込んできた。


「使えねぇなら使えないなりの使い方をするまでだ!!」

「ッ!?」


ローウェスは影の刃を動かない左腕で受け止め、右腕を影の胸へ拳を突き刺した。


「とっとと!消えやがれぇ!!」

「ッ!!!」


俺は突き刺した拳に熱を集中させ、暴発させた。

影はその場に倒れ込み、霧の街はまるでガラスにヒビが入ったかのように、テクスチャが剥がれていき、目の前の風景は埃まみれのオフィスへと戻っていた。


「はぁ…はぁ…し、死ぬ…」


動かない左腕をかばいながら階段へと向かう。

今になって痛覚が戻ってきたからか全身が死ぬほど痛い。


(一応、連絡、を…あれぇ?)


携帯端末に手をかけた瞬間、鼻血を吹き出し俺の意識は闇の中へ消えていった。

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