第6話 身体測定

朝食を済ませ、俺たちは1区のオックスフォードビルへとたどり着いた。

時計は9時丁度を指しており、大勢のワーカーで賑わってる。


「うわぁ、デッカ…そっか学校からいつも見える大きいビルがこれかー」


1区。正式名称を白亜都市第1企業管理自治区。

都市の中心部でありクラウン社、クラウン・マルチウェポンの管轄の地区である。

クラウン社はワーカーという職業の前身を作った会社であり。その後クラウン社の傘下を抜けた事業部がワーカーズギルドという独立した組織として再結成された。


「ケイニスは4階でワーカーになるための試験を受けてこい、俺はエドに俺がローウェスだって証明してもらわないといけないからな」

「分かりました、ワーカーの試験って具体的には何するんですか?」

「自分の得意分野が試験の対象になるよ。別の支部でだったけど、私の時は射撃精度試験だったよ」


ワーカーは各々の得意分野で割り振られる仕事が決まる。身体能力が高く戦闘能力が高ければ鎮圧依頼などが割り振られる。

一方、身体能力に優れていないワーカーにはイベント設営のスタッフや都市の清掃、捜し物探しに駆り出される。

その為試験で力量を測り、戦闘が出来ないワーカーを危険に晒さない様にしているのだ。

もちろんの事ではあるが危険度の高い依頼ほど報酬が高く設定されている為、無理を言って鎮圧の依頼を受けて死ぬワーカーも時々だが居る。


「ねぇローウェス、ここってどのくらい大きいの?」

「そうだな、全長320mだって言われてる。都市の中でもかなり高い建物だな」

「ふーん」

「…なぁエド。俺ってそんなに目付き悪いのか?」

「え?うん」

「うっ…そんなにか?そんなになのか?身体変容しても治らないって…目付きで俺って分かるのなんてお前意外によく仕事してたジュンだけだったぞ?」

「私もオペ子が分かるとは思わなかった」


一応俺がローウェスだって事は証明出来たが、余り納得が行っていない。

俺がまだ男の姿だった時に担当していたオペレーターであるジュンもエドと同様俺を一目で見抜いていた。

これの酷い所が変わらない目付きだそうだ。

そして今から俺とエドは身体情報の更新をするために待合室に腰掛けていた。


「ローウェス・フリードさんお入りください」

「じゃ、行ってくる」

「また後でー」


職員について行き検査室に入る。

中は病院の様な白い部屋であり、職員が1人待機していた。


「どうも〜担当のサリアでーす。では服を脱いで下さいね〜」

「え…わ、わかった」

「あ、下着もですよ?」

「は?待て待て待て!下着もかよ!?」

「はい、規則ですので!」


サリアはニッコリ笑う。

一瞬冗談かと思ったが声色がガチだった。

その後何回か聞き返してみたが説得は無駄に終わり結局脱ぐ事になった。


「脱いだぞ、は、早く測れっ!」

「…」

「?お、おい大丈夫か?鼻息荒いぞ…?」

「あ、大丈夫です。はーい最初は身長体重を測ります、こちらの機械の上に乗ってください」

「わ、わかった」


顔が熱い。ものすごい羞恥心が俺を覆い尽くす。

男の姿の時は上を脱げと言われても、特に恥ずかしいとは思わなかったが、何故かとても恥ずかしく思った。それにそれに女職員の鼻息が荒いのが物凄く怖い、敵意は感じないがまた別の方向で身の危険を感じる。


「えーっと、身長は142cm体重32kg軽いですねー次は胸囲腹囲腰囲測りますよー」

「…」

「はーい手を退けてくださいね〜」

「くっ…」


その後も羞恥に耐えていき、身体の検査は大体終わった。今は服を着て身体変容手術で変わった事が無いかを聞かれていた。

そして…


「味覚が変わったなーって思う事はありましたか?」

「…」

「大丈夫ですかー?顔が赤いようですが」

「問題…ない…」


いったん誰のせいだと思ってるんだろうか。その後、検診衣を着せられ採血などをしていたうちに、俺の身体測定は終わった。

男だった時は特に何も感じないだろうがなぜだかとても顔が熱い。

何もしてないのに妙に疲れた体を引きずりながら待合室へ向かうとエドとケイニスが俺を待っていた。


「…はぁ」

「?おかえりー、ローウェス」

「ただいま……」

「ローウェスさんも今終わったんですか?お疲れ様です」

「なぁ…ケイニス」

「どうされましたか?」

「身体検査って服全部脱ぐ物なのか?」

「え?普通に服着たままでしたよ、どうしてです?」

「…なんでもない」


羞恥心で今にも潰れそうな体を何とか前に進める。

1階にある受付でケイニスの試験番号を受け取り、今日のここでの予定は終わりだ。

時計を見ると、長針は12時を指しており、人もまばらになってきた。


「合格通知は後日発送致します、お疲れ様でした」

「は、はい!よろしくお願いします!」

「…」

「ねぇねぇ、ローウェス」


ペコペコとお辞儀をするケイニスをエドと共に眺めて居るとエドが話しかけてくる。


「なんか懐かしい気がする、私も試験受けた時あんな感じだったもん」

「そうだな、お前は合格通知受け取るまで緊張が取れずに震えてたもんな〜」

「ふ、震えては無かったし〜!」

「すみません!遅くなっちゃいました!」

「よーし、じゃあご飯いこ。提案は人工肉以外!以上!」

「えらくアバウトだな?まぁいいか。じゃあいい店に連れて行ってやるよ」

「その…ボクも一緒に行ってもいいですか?」

「なぁに当たり前の事言ってんだ、お前も俺らの一員になるんだ。今日は奮発してやるさ」

「あ、ありがとうございます」


こうして俺らの長いようで長くなかった午前中は終わりを告げた。


◆◆◆

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