第1章・少女ワーカー

第1話 戦闘後帰投未確認

ネオンの照らす街に彼らは居る。その光を掴まんと生きる彼らは知らず知らずのうちにその光の影を見ることになるだろう。


「依頼達成だ」

『お疲れ様でした、それではサポートを終了いたします。相変わらず凄まじいですね』


その1人であるローウェスは歪人の死骸に突き刺さった戦斧を引き抜き、薬指にはめた指輪の異空間にしまった。


「そうか?今回のは小型1匹だけだったからな、中型2匹だったり空間の侵食を使うなら分かるが」

『小型でもそこら辺の人間1人簡単に殺せるんですけどね…とりあえずお疲れ様でした、後は火葬隊にお任せください』

「おう」

『1つ個人的な質問なのですが』

「ん?なんだ」

『毎回思うんですがその指輪の構造ってどうなってるんですか?武器を出し入れして、この都市アルビオンシティでは見た事が無いのですが…』

「これは遺骸で入手した物だな、この指輪を通して異空間に繋がっていてそこから物を取り出したり収納したりできる」

『へぇ便利ですね、教えて頂きありがとうございます』

「おう、そんじゃ」


上着に着いた血を払い、彼の住んでる13区へ向かう。

居住区ではあるが雨が降ってる上に深夜である為か人通りは少なく車もそれほど通っていない。


(今日は珍しく死体が転がって無いな…死体売りに見つかったか生き物の餌になったかのどっちかだな、そういや今冷蔵庫の中身空っぽだったか…何か買って帰らねぇと)


耳に着けたインカムを操作しある場所へ繋げる。


『はい、こちらワーカーズ、ファイアウルフです、今現在の時間に依頼は受け付けていません、またの機会におかけ直し下さい』


まるで台本でも読んでるかの様な棒読みが聞こえる。声の主はうちの従業員であり、義理の娘のエドだ。


「エド、俺だ」


『あ、ローウェスだった、今から帰るの?』

「おう、晩飯は何でも良いか?」

『とりあえず人工肉じゃなけりゃ何でも良い、あれ美味しくない』

「わかった、洗濯物入れたか?」

『いれ「ちょっと待て」どうかした?』


背中の方から感じる何かを感じ取り会話を中止する。

雨が降ってる中で聞こえにくくはあるが音の反響などですぐに分かった。


「尾行されてる、後でかけ直す」

『…分かった、死なないでね?』

「アイアイ、キャプテン」


通信を切り、人気ひとけの少ない裏路地の影に俺と謎の人物は入り込んで行く。


(この感じは殺し屋か?最近特に恨まれることは何もしてないが…もしくは生き残りか?…それなら穏便に帰してやるが…とりあえず声掛けるか…)


後ろを向き指輪から戦斧を取り出し声を掛ける。


「付いて来てるのは分かってんだ、正体表せ」

「…バレてましたか。とりあえず一緒に来て頂きます」


黒い全身が義体の男が現れる。

突然出てきたかの様に見えた為、新型の光学迷彩だろうか。だとするとかなり厄介である。


「目的は何だ?」

「そんなの教える必要はないでしょう?あなたは着いてくれば良いのです」

「なら、答えは」


Noだ

ローウェスはそう答えると義体の男に向かって、戦斧を体重を乗せて振り下ろす。

すると男は戦斧を腕で掴み、すごい力で押し返そうとする。


「グッ…!」


それを咄嗟にもう片方の手にもう1本の斧を取り出し斧の峰に叩きつけた。

斧は機械の身体を腕ごと切り裂き、人工体液を撒き散らしながら義体の男は後ろへ吹き飛ばし、壁に激突ひた。


「安い義体はやっぱり駄目ですね、次に活かしましょう」

「次なんてねぇよ、それにお前が義体の性能を出し切れて居ないだけだろ?じゃあな」


義体の頭を踏み潰す。グチャリという音と共に脳みそと髄液が飛び散った。この都市では珍しい機械化していない脳を使った義体だったようだ。

突然首に注射器のようなものが刺さる。


「は?」

「いやぁ〜こんなあっさり成功してしまうとは思いませんでしたよ〜」

「な、なんだお前」

「おや?次に活かすって言いましたよ?普通の人間ならもう寝ていてもおかしく無いんですがねぇ、さすが大罪指定されている特異点、帰還者と言った所でしょうか」

「てめ…なんでそれを…」


突然現れた男に首になにかの薬を打ち込まれた。

まるで気配を感じず、一瞬でここへ瞬間移動でもしたかのようだった。

ローウェスは震える手で指輪を作動させ、小型の銃を取り出した。雨に濡れた銃身を男に向け、最後の力を振り絞るように引き金に手をかける。

だが、弾丸が放たれることはなかった。指が力を失い、視界がじわじわと暗闇に飲み込まれていく。


「では、大人しく従っていただきましょう。アナタが必要なのですよ♪」


男の機械的な笑い声が雨音に混じり、冷たい夜の空気を切り裂いた。地面に崩れ落ちるローウェスの意識は、完全に闇の中へ消えていった。


冷たい雨が降りしきる中、男の機械的な笑い声が響いていた。

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