第2話 身体変容

どれだけ時間が経っただろうか。

俺が次に目を覚ましたのは、生暖かい液体で満たされた培養槽の中だった。

培養槽のガラスを拳で叩き割り、中から出る。


「オエッ!ゲホッ!」


咳き込み、肺を満たしていた液体を吐き出す。視界がぼやけ前が見にくい。

辺りには紙の書類が散らばっていたり、ガラスの欠片が散らばっている。


「あー…?声がおかしい…」


近くにあった書類を手に取ろうとしたが俺の手は小さな物へと置き変わっており、声も高くなり180あったはずの身長は140程度の大きさに縮んでいた。


「は?え…お、俺の身体…小さくなっている?…?まて!そんなことよりゆ、指輪が無い!」


余りのことに足がもつれ倒れ込む。

気を紛らわす為に近くの書類を手に取りそこに書いてある文字を読む。


「身体変容手術…経過安定。四肢形勢不全…なし。

全変容不全箇所…眼球…ふざけんじゃねぇ!!」


身体変容手術とは、人間の身体を文字通り変容させる手術の事で、基本的に変容させる対象の身体の外見遺伝子を書き換えることにより行われる手術である。

書類を読み終わると地面に拳を叩き込む。


(本来本人の合意が必要である筈だろ…クソっあのクソガスマスクめ今度あったらバラバラにしてやる!!…とりあえず指輪を探さないと…大切な物なのに…)


フラフラとした足取りで研究室の扉を開ける。窓の外は相変わらず雨が降っており恐らく夜だからなのか部屋の電気は消え、暗く光は街灯の灯りが入って来る程度である。ガラスの欠片1つを手に持ち、なるべく足音を立てずに進んでゆく。

部屋とは違い、廊下には電気が着いているようだ。奥には銃を持った警備員と白衣を着た研究員らしき男女の2人組が居た。

男の方はこっちにも聞こえる程の声で女に怒鳴り散らかしている。女の方はオドオドしながら頭を下げている。


(あの中で1番厄介なのは銃を持った警備員だな、…あの白衣の男の方は怒鳴るのに夢中か)


足音を殺し警備員の後ろへ立つとガラスの欠片を頸動脈に思いっきり突き刺す。血は辺りに噴水のように飛び散り、周りを染める。そんな中男と女は呆然としていた。

すると警備員の身体が銃を誤射し男の頭をライフルで撃ち抜いてしまった。


「あーあ、やっちまったよ」

「ヒイッ!!血?血が!」


女は同僚か上司か知らないが、隣にいた人間が2人殺されて正気に戻ったのか血の海の中で土下座をする。薄い緑色の髪を赤く染めることを意にも介さず地面に深々と頭を下げていた。

警備員が持っていたライフルを頭に着きてつけて尋問する。


「やっちまったことはしゃあねぇか…おい、俺の着ていた服は何処だ」

「よ、4階の保管室にあります」

「ここは何区だ」

「…26区です」

「俺がここに来て何日経った?」

「え、えっと資料では5日前って書いてありました」

「5日…お前は関与してたのか?」

「じ、組み換えはやらされましたが…お願いです!合意は取ったって言われてて…!どうか!命だけは!な、何でもします!だがら!」

「…はぁ、ガスマスクの男は知ってるか?」

「き、昨日上司と話してました…進捗がどうとか、聖遺骸の準備がなんちゃらって。詳しくは分かりません…」

「…」

「ごめんなさい…ごめんなさい…人を助ける仕事だって聞いてたんです…やっと自分も役に立てるんだって思ってたんです…」


何やら呟いているが、だんだんと可哀想に思えてきた、こいつも巻き込まれたタチなのだろう。遠くだったから聞こえずらかったが何も考えず働けやら、意味の無い質問ばかりするな、てな感じで怒鳴られていた。


「さっき…なんでもするって言ったよな?」

「は、はいします」

「そうか、なら…」


今は寝てろ

そう言うとローウェスはライフルのストックで殴り気絶させた。


◆◆◆

「ぐっ頭が痛い…5徹した後の頭痛より…あれ?ここは…」

「起きたか、研究者」


ボクは上司に言われるがまま仕事をした結果、少女の姿にされたワーカーに担がれる揺れで目を覚ます。自分でも言ってる意味が分からないけど、白髪に赤色が混じった髪はまだ乾いておらずツヤツヤとしたままで、本当にさっき目覚めたんだろうってことがわかる。小さい体でボクの体を持ち上げる姿は異様にしか見えない。


(見た目は可愛いな…でもなんであの配列だったんだろ…このまま死ぬのかなぁ…やだなぁ…家のテレビの録画全部見れてないのに…)

「おい」

「ひゃ、ひゃい!」

「保管室の番号分かるか?」

「え、えっと実はボクも教えられていなくて…」

「そうか、ならこじ開けるか」

「え?その扉かなり分厚いですよ?たしかロケット弾が直撃しても穴が開かないとかいう無駄にお金のかかった保管室で…え?」


彼が保管室の扉に手をかざす、すると扉が赤熱し一瞬にして溶解してしまう。

耐熱と書かれた扉を一瞬で溶解させるほどの熱量をどうやって体外へ放出しているのか、今のボクには理解が出来なかった。


△△△

5/29 加筆修正

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