第30話 刀狩り
「おぉ…」
「カメラを向けるな、撮るな…」
「入ってすぐ襲われるなんて…災難でしたね…イテテ…あんまり役に立てず申し訳ございません…」
街へ入って早々、頭を打って気絶していたケイニスは今目覚めたようで頭に氷のうを当てていた。
「ケイニス殿が区画の閉鎖と避難誘導をしてくださったおかげで大きな被害も無く討伐できたんです、私たちからも感謝を」
「そ、そう言って貰えると…ありがとうございます…」
「まだ痛むならもう少し休んでて大丈夫だからな、てっエド!待て!姉さんに送るな!!」
俺が写真の送信の阻止に失敗してすぐ、アヤカと入れ替わるようにしてハルスケが部屋へ来た。
最後に会った頃から見た目が大きく変わっており(といってもまだ小さい頃だったが)黒色だった髪は金髪に染め、耳にはピアスがバチバチになっておりかなり派手になっていた。
「エッちゃーん!元気にしてたっすか!」
「あ」
「へ?」
エドはハルスケに飛びかかり、華麗な動きで逆エビ固めを決めた。
技を教えた覚えは無いが素晴らしい動きだ。
「ぎゃあぁぁ!!?え、エッちゃん!?お、折れるっス!」
「こんの…連絡くらい!私にもぉ!しろぉぉお!!!」
「あぁぁぁ!???ちょ!て、抵抗できないからってひ、ヒドっアババババ!!?」
近くで見ているケイニスは唖然としているし、部屋にはハルスケの悲鳴が木霊する。
どうやらエドは俺にハルスケが連絡をした時に、エドへ変わるのを断ったことに相当ご立腹らしい。
ハルスケ達と翡翠館へ行くまでは気になら無かったようだが落ち着いてからだんだん腹が立ったとの事だ。
「ろ、ローウェスさん!た、助け!」
「…女って…怒らせると怖いよな…」
「目が座ってるッス…あ、ほんとにヤバいっすメキメキ言ってるッス!」
「エドちゃん!それ以上はほんとに折れちゃいますよ!?」
閑話休題、エドの怒りが収まった所でハルスケは本題に入る。
「今回ローウェスさんに来てもらったのは脅威の排除に協力してもらう為ッス」
「脅威の排除ねぇ、暗殺の仕事はしないが…何を排除したいんだ?」
「排除と言っても敵対組織の要人暗殺を引き受けて欲しいわけでは無いッス」
「と言うと?」
「歪人擬きッス」
「歪人擬き?普通のとは何が違うの?」
エドがそう聞くとハルスケは驚くべき事を言い出す。
それは歪人と人間の姿を自在に使いこなすのだという。
俺のような、というより帰還者全般は力を行使する程度に過ぎず、人と似たような姿を持つ歪人も居るには居るが容姿を自在に変えることは相当難しいだろう。
件のそれはこの力を使い剣夜の団員を襲っているという。
「歪人を狩ってきた剣夜のここ数十年の資料を漁っても前例の無い化け物ッス」
「そんなの有り得るんですか?ギルドのデータベースにもアクセスしましたが人の言葉を喋る歪人は居ても自在に姿を変えるのは見つかりませんでした…」
「歪人にありえないは通じない」
「探すのは大変だね〜狙われる基準って何かある?」
「幸か不幸か今の所確認できている被害はウチの団員だけッス、それも長年歪人とやり合ってきた実力者ばかりがやられてるッス」
「他には何かある?」
「1つあるとすれば全員刀を奪われていたッス、それも鞘だけを残して」
刀を奪い取る、目的は様々だろう。
売り金にする、この線は無いだろう。なぜなら奪い取るなら弱い方を狙う方が圧倒的に楽だ。
その上鞘だけが残されているのは不自然だ。
ハルスケは目元が隠れるほど長い前髪をかきあげ溜息をつく。
「正直な話、今の時期人手が足りてないんスよ、なんでこの忙しい時期に厄介事って舞い込んで来るんすかね〜」
「それで、俺らを頼る理由は結局何だ?練度はともかく数が欲しいなら盾の一座にでも任せりゃいいんじゃ?それとも何か別の理由でもあるのか?」
ハルスケの動きが一瞬止まる、そして決心したように語りだす。
「それは…シーリス旅団を襲撃した疑いがある奴だからッス」
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