第31話 会合
ハルスケの言葉の後、一瞬時が止まったように静寂が訪れる。
ローウェスから生じた一瞬の殺意と怒りの感情はそうなるに足り得る程であった。
「あっ…すまない、進めてくれ」
「りょ、了解っす。疑いがあるって言うのもシーリス旅団が襲撃される1ヶ月ほど前から、近隣で発見されていた死体と今回の死体の様子が酷似していたんすよ」
「…なるほど、思い出したぞ。胸元を十字に切り裂かれていたやつか」
「それっす」
俺は別の用事で深くは関わっていなかったが、見せてもらった死体の様子が異様だったのは覚えがある。
「色々調べてみたら今回と同じように刀を使用していたワーカーが被害に遭って、尚且つ鞘だけを残して刀が消えていたんすよ!」
「…」
「どうすか、ローウェスさん。協力してくれるっすか?」
「どーするー?ローウェス」
これだけ一致している点が有るとなると、同一人物と考えても問題ないだろう。
それに…会話が可能と言うことなら殺す前に情報を聞き出すことが可能なはず。情報を抜き取ることが出来れば他の奴らの動向もある程度探れるだろう。
「その話、乗った」
「本当すか!?感謝するっす!翁ちゃんに伝えに行ってくるんで少し待っててくださいっす!」
◆◆◆
数分後、俺らは翡翠館の会合室、カラスウリの間へ集まる。
さっき出会った陽炎商会以外にも、剣夜の関連組織から各々代表と部下数人を連れ集まっていた。
「皆さん、今回はお集まり頂き感謝いたします。今回の会合を翁の代わりとして取り締まらせて頂く、剣夜会代表代理のスドウ・アヤカです。早速ではございますが代表の皆さん軽く自己紹介をお願いいたします」
「それでは私から、夕暮れの代表、ニシタ・ミドウです、よろしくお願いします」
「朝焼けのコカゲ・アラタだ、よろしく」
「お初にお目にかかりやす、陽炎商会現会長のアオシマ・ヨーコですぅ、よろしゅう頼み申します」
「ワーカーズファイアウルフ所属、ローウェ「アヤカ!なぜ剣夜と関係の無いワーカーがここにいる!!」ス・フリードだ…よろしく」
俺の自己紹介は横槍を刺されるような形でアラタに遮られる。
どうやら彼は俺の様な組織とは関係の無いワーカーがいるのは不満らしい。
「アラタ口を慎みなさい!その人は…」
「あー、いいから続けてくれ」
「ローウェスさん…わかりました。今回の私達の目標は仮称
アヤカは手元の端末を操作しながら詳細を話していく。
先程ハルスケが話してくれた内容に加え、刃鬼の大まかな行動原理や襲われた団員や場所の詳細を知ることが出来た。
陽炎商会が剣夜会の手を借りに来たのも輸送中の刀を刃鬼に全て奪い取られた事が理由らしい。
「詳細はこんなものです。何か質問がある方はいますか?」
「質問」
「はい、ローウェスさん」
「期間はどれだけ取れる?」
「そうですね、期間としましては
月輪祭、現在のアルビオンなどの大型都市の電気の50%を賄っている月輪自転発電システムTSUKUYOMIの完成を祝う祭である。
月の自転を用いた発電という非常に重大なプロジェクトだったと言うこともあり他の地区でも祝われることがあるが23区は建造の中心となったクロツキ研究所やアラキ社の故郷が元になっており盛大に祝われる。
それゆえ規模が大きくなりすぎてしまち、結果他の地区に比べ人の数も多いため非常に治安が悪くなるという問題が発生する。
(…憶測に過ぎんが、23区を縄張りにしたい連中に刃鬼の存在を知られたくないんだろうな…それもそうだ)
アラタが俺を警戒するのはよく分かる。
だが今回ばかりは譲れない。
シーリスの皆を襲った奴らを引き摺りだして全員殺すまで俺は死ねないのだから。
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