第14話 罪の意識
23区から車を走らせ事務所のある13区へたどり着く。
ボクはローウェスさんを背負い、彼の部屋へ運びこむ。
とりあえず新品の下着と彼が寝巻きに使っているブカブカのTシャツを着せベットに寝かせた。
比較的穏やかな寝顔である。
街頭だけがこの部屋の中を照らしている、見慣れているはずなのに何時になく眩しく感じ目を逸らした。
…ボクはこれで良いのだろうか。
彼は僕を受け入れてくれて、住む場所も貸し与えてくれた。
役に立てる、そう思った、なのにボクはなんの役にも立てていない。それこそ今回はジャミングをくらいなんのサポートも出来なかった。
それにローウェスさんを見る度に、彼をこの姿にしてしまった事をボクは今も後悔している。
ボクを受け入れてくれた彼はボクを恨んでは居ないだろうか、そればかりを考える自分に嫌悪感を覚える。
ボクは…なんて自分勝手なんだろう。
彼のためだなんだと言って言い訳ばかりを考える。
そして何事も無かったようにリビングへ向かう。そこにはエドちゃんとミトリアさんが座っていた。
「やぁ、ケイニス」
「…は、はい」
「それじゃあ、なんでローウェスがこんな姿になったか説明してくれるかな?」
「はい」
ボクはミトリアさんに身体変容手術でローウェスさんの姿を変えたことを話した。
ボクが話している間も終始穏やかな表情だったが冷や汗が止まらなかった、合間合間で恐ろしい程の殺気を感じ取ったからだ。
彼女の怒りも相当だろう。知らなかったとは言え彼女の、恐らく唯一の肉親へ許可なく身体変容手術を施したのだから。
「…」
「い、以上になります。」
「まず…私は君をワーカーとしては恨まない」
「え?」
「ワーカーは自分に起きる事は基本、自己責任だ。依頼で死ぬワーカーなんてごまんといる。だから生きている、それがどれだけいいことなんだよ」
さっきまで平静を装って居たミトリアさんの雰囲気急変する。
「でも、これはまぁ、八つ当たりなんだ。たった
1人の血の繋がった弟をあんな姿にするなんてね?その組織で行動に起こしたのは君自身だろう?」
ミトリアの手は震えていた。
少しづつ漏れ出ていた殺気が僕へ、本格的に向けられる。呼吸が苦しくなり汗が止まらない。
頭に銃を突き付けられた時とは比べ物にならない、リアルな死がボクの体を蝕むように、突き刺してくる。
ボクの首へミトリアさんが手を掛ける。
「ケイちゃんっ!なっ、何この鎖!?」
それを止めようと動いたエドちゃんは突然現れた謎の鎖により拘束され、身動きが取れないようだった。
ボクは…覚悟を決め、段々と力が強くなっていく手を掴む。
「ん?」
「ボクは…まだ死ねませんッ」
「…へぇ?生き汚いね?ますます君のことを殺したくなったよ」
「ケホッ…違い…ますよ、僕はあなたに殺される訳には行かないんです、それに」
まだ死ねとローウェスさんに指示されていないんですから
「…!」
「ボクを仲間として迎え入れてくれて、住む場所を貸し与えてくれたお人好しなローウェスさんへ恩返しをしたいんです。こんなどうしようもない僕を。だから彼が僕に死ねって言うんならその通りにします。盾になります。囮になります。なのでまだ僕はアナタに殺される訳には行かないんです、あの人のために死ねるならそれでいいです」
僕は本心をミトリアさんに伝えた。
まだあの人の役に立てていないから。
まだあの人にそう命令されていないから。
これから役に立つために。
「…はぁ…萎えた。殺すのやーめた」
首を絞め始めていた手を放され、ほっと一息つく。
ミトリアさんは溜息を着いたあと、ソファにドカッと座った。
「それが君の覚悟ってことだね?」
「はい、僕の意志を伝えました」
「…狂ってるなぁ…ローウェスは新人にどういう教育してるんだか…」
「こわぁ…」
「えぇ?ちょ、なんでエドちゃんまでそっち側なんですかぁ!」
いつの間にか拘束を解除されていたエドちゃんは、ミトリアさんと一緒になぜか引いていた。
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