第25話「プレゼント~妹の目線~」
「う゛ぉああああああああああ!!!?!?!?」
くっ……私としたことが、情けない叫びを上げてしまいました。スマホの真っ暗になった画面を見て私は途方に暮れています。決してスマホは故障したわけではありません。やむにやまれぬ事情を抱えて真っ暗になっただけです。
「電池、まだ残ってたのになあ……」
お兄ちゃんにぬいぐるみは飾っておいてとはっきり言っておくべきでした。せっかくぬいぐるみのカメラでコソコソ撮影していたというのに……
しかし! しかしです! お兄ちゃんはちゃんと妹ヒロインのラノベを読んだわけです! これは人類にとって偉大な一歩といっていいのでは無いでしょうか!
とりあえずぬいぐるみを飾り直してとお兄ちゃんに伝えるべきでしょうか? その答えはスマホからカメラの残り電池が一〇パーセントになっていることからそれを選ぶメリットはほとんどありません。マイクをあれの中に入れることが出来なかったことを限り無く悔やみます……
もっとも、音を拾うようにマイクを入れると露骨に怪しい部分が出来るので妥協でもなくやむを得ずではあるのですが。
バン!
思わず壁を殴ってしまいました。お兄ちゃんが私の思い通りにならないのが悪いんです。おっと、壁が少しへこみましたね、誤差ですが。
アレ、安いカメラでしたけど使い捨てるとはどこかの名前を書くと死ぬノートの液晶テレビレベルの使い方ですね……
それでもお兄ちゃんの部屋に半お手製のぬいぐるみがあるというのは大きなアドですね。美味くアレの電池を入れ替えれば、再びお兄ちゃんを監視……見守り出来るというのに……
しかし、お兄ちゃんがちゃんと私のあげた本を読んでくれたのはうれしかったですね、本棚の牢名主になってしまうかと不安でしたが、さすがのお兄ちゃんもそこまで冷淡ではなかったようです。まだ数冊しか読まれていないようですがお兄ちゃんのことだから残りもしっかりと呼んでくれるでしょう。私はお兄ちゃんを信頼しているのです。
ドアを開けるとお兄ちゃんと鉢合わせになりました。多少の罪悪感を覚えているので私も話しかけづらい状態でした。
お兄ちゃんに口先だけで適当にごまかし夕食を食べました。やはりカメラ越しに見るお兄ちゃんより生で見るお兄ちゃんの方がいいですね。こんなお兄ちゃんにも何か秘密があるのでしょう。それを探るツールが早々に潰されたのは非常に残念ですが今ここで確かに居るお兄ちゃんを見ることが出来ることに感謝をしておきましょう。
その日、お風呂で火照った身体を冷やすために素数を数えてから落ち着いたと思ったところでベッドに飛び込みました。スマホには録画データがしっかりと詰まっています。お兄ちゃんが一緒に暮らしてくれていることに祈りを捧げ、お兄ちゃんの映像を見ながら火照った身体が更に熱くなっていくのを感じました。その夜は寝付くのに苦労しそうです。
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