第35話「妹とゲームプレイ」
「お兄ちゃん! バトロワをしましょう!」
「何だよ突然……血なまぐさい話だな……」
「いや、血も何もスマホゲームですよ?」
「ああ、映画の方は関係ないんだな」
「お兄ちゃん、その映画が放映された頃に生まれてましたっけ?」
「いや、一般教養として知ってたんだよ」
俺はそう返す。そもそもFPSが苦手な民としてはスマホで操作は苦手なんだよな……どう考えてもマウスの方が強いと思う、たいていのゲームで禁止されてるけど……
「ではお兄ちゃん! チーム戦をしましょう!」
きっとそう言い出すのも時間の問題だったのだろう。俺と茜でチームを組んでマッチをすることになった。ちなみに俺が拒否しようかと考えたところで秒で否決されたので俺に選択肢はなかった。
「お兄ちゃんはスナイパーでお願いしますね! 私はお兄ちゃんが※芋っているところを守りますから!」
※動かずに粘ること、芋るスナイパーを芋砂とも
そんなわけで俺の装備はスナイパーライフルに決定した。もともとロクにプレイもしていなかったので拘りもないし構わないだろう。
「お兄ちゃん、武器の選択はすみましたか?」
「俺はロングレンジライフルにする」
「じゃあ私はグレネードとナイフですね」
こうして俺たちの戦闘が始まった。とは言っても、序盤のバトロワ特有の生存圏が広い初期では初めに狭まるサークルのギリギリで動かず近寄ってくる相手を撃つだけだ。序盤から芋っているのは嫌われる要素かもしれないが、このゲームにチャット機能はないので問題は無い。他チームが嫌な顔をしたところで聞こえなければ何の問題も無いのだ。
パス
一発の銃弾が近寄ってきた相手に命中した。アイテムを全てドロップして仲間がいれば蘇生可能な瀕死状態になる。そこへ迷うことなく茜は向かっていってアイテムを回収していた。
「お兄ちゃん、コイツの仲間が近寄ってきたら牽制をお願いしますね!」
「オーケー、敵影なしだ」
ライフルのスコープには敵の姿が映っていない。相手もスナイパーなら見えない可能性もあるので注意が必要だが、ここまで茜が好き放題しても仕掛けてこないところから見るに問題無いだろう。
そして回収を終えた茜はこちらに戻ってくる……事は無く敵の倒れた地点の岩陰に隠れてしゃがんだ。
「たぶん蘇生に来ますからお兄ちゃんは狙撃でサポートを」
「任せろ」
勘の良いやつだと思う、その後実際に蘇生に来た敵チームを急接近してナイフでサクリと刺して脱落させた。コンビ戦なので二人落ちれば蘇生できる可能性がなくなり脱落だ。
「終わりっと……じゃあサークルの中に入りますよ」
「了解」
俺のキャラは茜のキャラの後を追ってしゃがみながら生存圏内へ侵入した。これで数分は安全圏にいられる。
「じゃあ次はお兄ちゃんはあの建物の屋上で芋っててください、私は周囲の警戒をしますので」
「準備のいいことで……」
「さっきのヤツが回復薬を持ってましたからね、多少の無茶は聞きますよ」
「頼もしいな……」
茜は近くの建物を漁って物資を回収していく、時折こちらの足音に気づくやつもいるのでそういった勘のいい連中は俺がスナイパーライフルでヘッドショットを続けた。そうは言っても仲間のいる場所に救援に向かうのは数人だった。残りは仲間をおとりとして呼び出されるような安直な罠には引っかからなかった。
「お兄ちゃん、回収終わりました。そろそろサークルも狭くなりますし中央に行きますよ」
「分かった」
俺は地面に着地して安全圏の円の内部に向かっていく。問題無い、的の足音もないし、当たりに死体も見当たらないので同じ芋っている奴がいる確率も少ない。
そう思ってダッシュをすると……
パン!
一撃で俺のキャラが倒れ伏した。狙撃をされたようだが相手の位置が分からない。
「お兄ちゃん!」
「あ! おい! こっちに来るなって!」
パスン!
軽い音と共に茜のキャラも地面に倒れて俺たちの負けが確定した。
「お前なあ……俺がスナイプされた時点でこうなるの分かってたろ?」
「だってお兄ちゃんを死体のまま放って置けませんよ!」
こうして俺たちの初戦場はあまりいい結果とは言えないものの、上位半分には入れたので茜のランク落ちは無かった。確かに負けてしまったが、茜が俺を助けに来たのは少しうれしかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます