第27話「妹と外食」

「お兄ちゃん! お昼ご飯は外食にしましょう!」


 いつも通り何か思いついた茜が俺に提案をしてくる。


「俺としては昼はカップ麺で十分なんだが……」


 茜は俺の返答にめげずに提案してくる。


「お兄ちゃんは食事に頓着しないにもほどがあるんですよ! もうちょっと美味しいご飯を食べるべきです」


「お前の作ったご飯は美味しいじゃん」


 何故か茜は顔を赤くしてそっぽを向いたりするがとにかく納得してくれたのかな?


「それは……私は愛情を込めてますけど……そういう問題じゃないんですよ!」


「要するに外食がしたいって事だろ? 自分で食べる分はともかくお前も外食がいいならそうしようか」


 茜は小さな声で『ヨシ』と言ってガッツポーズをしていたが、ただ単に外食するだけだというのに何がうれしいのやら……


 そんなわけで茜と一緒に食事に行くことになったのだが……


「お兄ちゃん……ムードって言葉を知っていますか?」


「そんなもの食欲の前では無いようなものだろ」


 俺たちは商店街のカレー屋で食事をしていた。俺も茜も日替わりセット、今日はキーマカレーの日だった。


「お兄ちゃんは可愛い妹と食事をしようというのに商店街で済ませようという考えはよくないと思います!」


 可愛い妹と言うのはまあ事実かも知れないが、だから食事を商店街で済ませて悪いという理由にはならないだろう。スプーンで一杯すくって口に運ぶと辛さと熱さが口の中を焼く。


「別にいいじゃないか、肝心なのは味だろ?」


「悔しいですけど美味しいです……それは認めるとして、お兄ちゃんが私と一緒に外食をするのにその扱いが雑ではないかと言っているのです!」


「美味しくて量が多い以上の何を料理に望むんだ?」


 茜はやれやれと首を振って俺に諭すように言う。


「私は外食がしたいと言いましたがそれは『お兄ちゃんと』外食がしたいと言ったんです! 『外食』ではなく『お兄ちゃんと』という部分が重要なんですよ!」


「お前の言うことはよくわからん……」


 茜はため息を一つついて俺の方をじっと見てくる。


「お兄ちゃんが分からないならしょうがないですね、いずれ分からせてあげますよ」


 そう堂々と宣言する茜に俺は理解のできないものを見る目を向ける。


 一切俺の反応を無視して茜は食事を進めていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る