第38話「妹とスマホ(と監視アプリ)」
俺はその日、自分のスマホを見ていて気がついた。
「妙な通知があるな……」
「どうかしたんですか?」
俺の独り言を聞きつけた茜がやってきて尋ねる。
「いや、バッテリーの減りが早くなった気がしてな……」
すると何故か茜の目が自由形水泳でもここまで泳がないだろうという勢いで泳いだ。
「ききき、気のせいじゃないですかね!? そういうことってよくあるらしいですよ?」
「気のせい……か……まあこのスマホも結構使ってるしな……バッテリーもへたるか」
「そうです! 自然劣化です! そうに違いありません!」
断言する茜。俺はなんだかその様子が少し気になった。とはいえ、原因不明だしなあ……さすがにこれを茜のせいにするというのも無理があるだろう。
「初期化でもするかなあ……あれ面倒くさいんだよなあ……」
「お兄ちゃん! 初期化はやめましょう! 私の努力が……いえ、ちょっと待ってください!」
ドタドタと部屋に戻っていったかと思うとすぐに帰ってきた。
「お兄ちゃん、これをどうぞ! これがあればバッテリーは持ちますよね?」
そう言って黒いモバイルバッテリーをさしだしてきた。確かにこれがあればバッテリーの補助にはなるのだが……
「いいのか? これ結構高いだろ?」
大きさがかなりのもので、USB-typeCも付いているのでそこそこの高級品なのが分かる。何もない日にもらっていいとは思えない。
「いいですよ! お兄ちゃんのためですから!」
そう言って俺にバッテリーを押しつけて自分のスマホを弄ることに戻った。コイツが何をやりたいのかさっぱり分からない。そしてそのまま部屋に帰ってしまった。珍しく俺に絡んでこなかったなと思いながら俺も自室に帰る。今日は茜の部屋から音が聞こえてくることはなく、平和だなと思いながらベッドに寝転がってスマホを弄ることにした。
面白い動画は……上がってないな。なんとなく壁に耳をあてられているようで不安な気分になり、コンと壁を叩いてみるが、何の反応もないのでそんなこともしていないのだろう。というか何で俺は妹にそんなことをされるのを前提に動いているんだろう、なんだか馬鹿馬鹿しくなった。
そういや新作のアニメ配信が始まっていたな……
俺はアニメの配信アプリを開きそのアニメを表示する。胸が特徴的なアニメだ、ぶるんぶるん揺れると話題になったらしい。俺だって多少は興味があるんだ。
イヤホンをしてそれを流し始めてすぐ、壁がドンと叩かれた。はて、音漏れしないようにイヤホンはしているし、騒いではいないはずなのだが……
隣に妹がいるのをハッキリ意識させられるとどうにもこの手の映像を流すのが後ろめたくなる。
なんとなくスマホで動画投稿サイトを見ることにした。茜も静かなことだし、普段は見ないような動画でも見るかな。
動物動画やハウツーを流し見していく。隣の部屋が静かなので集中できる。一通り見て部屋を出ると妹が待っていた。
「どうした?」
茜はモジモジしながら答える。
「その……お兄ちゃんは胸の大きい人の方が好みなのかなと……」
「なんでそうなるんだよ!? え!? 脈絡も無く突然何を言ってるんだ!?」
「妹の勘です!」
「そ、そんなことは無いぞ!」
じーっと茜はこちらを眺めたあと自分の部屋に帰っていった。一体なんだっていうんだ……
俺も水を一杯飲んで部屋に帰るとスマホで続きを見ようとして気がついた。
「五〇パーセント?」
おかしい、たった今は八〇パーセントだったはずだ。このスマホは電池の劣化を起こすほど使用していない。明らかな異常な減少だ。
「面倒くさいけど……」
俺はスマホの電源を切り、ボリュームダウンボタンと一緒に電源を押して起動してリカバリーモードに入る。バックアップは昨日PCに繋いだから問題無いはずだ。
ワイプを選択してストレージをまっさらにした後工場出荷時の状態に戻した。
再起動してアカウントにログインして……というと簡単だが結構な手間がかかっている。そのおかげか謎のバッテリー減少は再起動後収まった。一体なんだったのだろう?
夕食時、何故か茜は俺の方を恨めしげに見つめていたがその事との関係は分からなかった。
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