第52話「兄妹は生涯続くもの」

「緑が一杯ですね!」


「そうだな、山の中くらいしかスペースがなかったんだろうな」


 俺たちは電車に乗って『グリーンパーク』に向かっている。昔から存在しているテーマパークでお世辞にも新しいとは言えないが、俺たちが予算内で公共交通機関を使っていける場所がそのくらいしかないのでそこに決まった。


 茜がもう少しゴネるかとも思ったのだが、案外すんなりと受け入れてくれた。そして電車に乗っていて気づいたのだが、どうやら茜の目的は遊ぶことではないようだ。だんだん目的地に近くなっているというのに楽しそうな顔をしていなかった。


「次はグリーンパーク前」


 車内のアナウンスが目的地に着くことを知らせる。


「茜、降りるぞ」


「は、はい……」


 調子が狂う。茜がこんなに弱気だったことは知りうる限り無い。


 手を引いてグリーンパークの入場口前に向かう。地方特有のテーマパークらしく、待っている人はほとんどいない。俺たちも数人並んだ列の最後尾についたが十分もすれば入場することが出来た。


「お、お兄ちゃん! コーヒーカップに乗りませんか?」


「いいぞ」


 茜が少し元気を出したようなので俺はコーヒーカップの所へ行き、二人分のチケットを切って乗り込んだ。一つのカップに座ると元気を出していた茜がまた気落ちしてしまった。


「お……お兄ちゃん……」


「なんだ?」


「いえ、なんでもないです!」


 カップは回っていくが茜は心ここにあらずといった風だった。


 次にジェットコースターに乗った。茜が『乗りましょう!』といったからなのだが、いざ乗ってみると茜はやはり黙ってしまった。急加速する場所でも顔色一つ変えず、現在のスピードへの恐怖よりもっと別の何かを心配している様子だった。


 それからゴンドラに乗り、3D体感機に乗り、様々なもので遊んだが茜はずっとモジモジしていた。そろそろ閉園になってしまうので俺は最後に茜の手を引いてラストのアトラクションとして観覧車に乗った。乗り込んで半分くらい上がったところで茜に聞くことにした。


「何があったんだ? ここなら誰も聞いてないぞ」


「お兄ちゃん……?」


「悩みがあるんだろ? 話したって変わらないかもしれないが協力はするよ」


「うぅ……う……グズッ……おにいちゃーん!!!!」


 俺に抱きついてくる茜。


「ダメだって分かってるのに! 分かってるのにお兄ちゃんのことが好きですよ! 好きなんですよ!」


「え……ええっと、ありがとな」


「そうじゃなくて……お兄ちゃんは私のことを女の子として愛してくれないんですか?」


「まったく……そんなことで悩んでいたのか」


「え……?」


「なってやるよ、お前の兄兼恋人だ」


 茜は少し呆けた顔をしていたが、俺の言葉を理解して俺に抱きついてきた。


「お兄ちゃん! お兄ちゃん゛! おにーーちゃん!! 好きです! 大好きですよ!」


 そして観覧車が頂点に達したとき、誰も見ていない密室で俺は茜と口づけをした。


 観覧車から降りると茜は俺の手をギュッと握って引っ張った。


「じゃあ帰りましょうか! 私とお兄ちゃんのお家へ!」

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恋人じゃなくて妹です! スカイレイク @Clarkdale

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