夏と言えば、何処か懐かしさと共に甦る。宵闇、夏祭り、盆行事に 怪談。ゆらゆらと立ち上っては消える陽炎の如くこの作品は、恐ろしくも目が離せない短編集だ。 怪談は、炎天下の日差しの中にも。アスファルトの上を逃げてゆく陽炎の様な掴み所のない不可解さ。灼熱にも似て異な肝を冷やしめる恐ろしさ。それは本能的に我々が待ち望み、希うものでもあるのだろう。この短編集を追わずして、夏はない。そして夏はまだこれからなのだ。是非にも夏の醍醐味に震えて欲しい。