episode26 影の実力者

 街のきのこ鍋料理で美味しそうに超絶絶品きのこを食べている獣と人の気配がする二人。

 一人は痩せているが背が高い、もう一人は小柄だが小太りの男。二人ともケモ耳を頭に付けており見ただけでは人間とはわからない。


 そんな二人は今、私の監視の盾によって監視されている。もちろんそんな事は二人は知らない。

 この二人が何者なのかしばらく調査させてもらおう。


… ふう、美味かったなぁ〜 …


… のんびりしてる暇はないぞ、午後は連れ帰る奴を確保しねえと …


… そうだったな、あの女達はどうよ? …


 こちらを伺う二人。

 私とサリーの事を言っているのだろう。


… 個人的には有りだがな、見た目が良くねぇ …


 なぬ!聞き捨てならないと思った。


… 獣人にあんまり見えねえからな見た目で獣人と分かる奴いいな …


 ああ、そう言う意味か…

 でも獣人を連れて帰ると言うのはわからない。

 人間の街に連れ去るつもりなのだろうか。


… 獣化の呪詛もあまり長くもたねえからな今日中には確保して戻るぞ …


… 了解、そんじゃ午後も別行動だな? …


… そうだ、確保後に例の場所で落ち合うぞ …


… わかった、ヘマすんじゃねえぞ …


… この任務が帝国の未来に繋がってんだやってやるさ…


 そう言うと二人は店を出て行った。


「帝国の奴らだったか」


「帝国って神山の向こう側のある国よね?」


「ああ、以前からここへの侵略をしようと手出して来てる。まあ全部失敗してるがな」


 そうするとあの二人は帝国の密偵かなんかかしら。


「あんなふうに帝国の人間が来た事はないの?」


「ねえな、前も言ったがここに来るまでが人間には難しいからな…しかし今回は入り込んでるとすると来れるようになったって事だな」


「姉さんすまねえがあいつらの動きを監視してくれねえか?」


「そうね、なんか誰か拉致する感じだったし監視の盾で行動を見てみるわ」


「何が目的なんでしょうね?」


 サリーが心配そうに尋ねる。


「この国の偵察と住んでいる者の検証だろうな…その内大きな侵略を仕掛けてくるかも知れねえ」


「あいつらの行動を抑えるまで城には戻れねえな、動きがあるまで街をぶらつくか」


「そう言えば大福はどこ行ったのよ?ここに入るまでは居たと思うけど」


「大福様ならあそこに居ますよ」


 サリーが指差す方を見ると店の奥で何やらしているのが見れた。


「鍋も食べないで何してんのかしら?」


「きのこなんて食べないのにゃ〜我は肉食なのにゃ!と言ってお散歩に行かれました」


 サリーの猫語はちょっと癖になりそうな感じで可愛かった。


「精霊なんて魔力の塊なんだからマンドラゴラきのこは美味しいだろうにね〜もったいない…」


 奥の大福を見るとその側に白い猫が居る。

 まさかナンパかしら?


「なんか白い猫と話してるわね」


「え、そうなんですか?あっ!ほんとだ…」


 白い猫は細身でキラキラの毛並みでおそらく雌だ。

 

「まったく何してんだか…」


(大福!あんた何してんのよ?)


「ヴャ⁉︎」


 突然の念話にびっくりしているようだ。


(び、びっくりさせるなにゃ!)


(あんた鍋も食べないでナンパ?)


(し、失礼にゃ!これは…そう…情報収集にゃ!」


 言い訳が苦しそうだ。


(へーそんで何かわかったの?)


(にゃー仕方がないにゃ〜色々わかったから教えてあげるにゃ)


 大福猫は白猫に別れを告げてこっちに戻って来た。


「いにゃ〜美ミャンだったにゃ〜」


 大福の鼻の下が伸びている。


「それで何かわかったの?」


「彼女はこの店の看板猫にゃ、まだ決まった相手は居なくて趣味は人物鑑賞でひとつ目メダカが好物だそうにゃ!」


 大福は白猫の情報を嬉しそうに話した。


「あんた…お猫の情報聞いてどうすんのよ?」


「あ、いにゃこれからにゃ!そんな目で見ないでほしいにゃ!」


「彼女は実はこの店のオーナーにゃ!」


「え、あのお猫が?」


「見かけは普通の猫に見えるにゃが彼女は獣人にゃよ」


 なんと、見た目は完全に普通の猫だ…。

 あ、よく見ると尻尾が三つあった。


「セっちゃんはあのお猫どう思う?」


「なんで俺に聞くんだよ?」


「だってセっちゃんの正体って猫だよね?」


「猫じゃねぇよ!精霊だ!」


「ええ、この犬の姿が本当の姿じゃないんですか⁉︎」


 サリーそれはあなたの願望では?


「姿が似てるから分かるかな〜って」


「俺は犬が好きなんだよ、猫なんか知るか!」


「ひ、酷いにゃ!猫差別にゃ!」


 大福猫が抗議する。


「まあ、あの猫に見える奴ぁ確かに獣人だな。それも結構年季の入ったやつだ」


「年季?歳を取ってるって事?」


「ああ、獣人も長く生きるとそれなりに力を持つからなありゃ数百年は生きてんじゃねえかな」


「あなた様より全然若いですよ…」


「うお!」


 背後から突然知らない声がしてセっちゃんが声を上げた。

 サリーの足元からスルっと音も無く白い猫が私達の前に出てきた。


「皆さま、ご機嫌よう。そしていらっしゃいませ」


 白い猫は少し高いハスキーなそれでいて澄んで良く通る声で皆んなに挨拶をした。


 いつの間に来たのかしら、しかも後ろから…


「にゃ〜今おかみさんの話をしてたところにゃよ」


「あら、そうなんですか?良い話だといいのですが」


 大福がおかみさんと呼ぶこの白い猫は姿は猫だが大福のようににゃ〜とか言わない。

 大福は元々精霊で猫ではないから特徴を出す為に猫語にしてるのか… そんな疑問が出るほど白い猫は綺麗に人間の言葉を話していた。


「ここのオーナーさんが素敵なお猫さんと聞いてつい見入ってしまったんです」


「嬉しい事を言って下さいますね、私も以前は人間の街にいたんですよ。久しぶりに人間の皆さまにお会いできて昔を思い出しました。以前と言っても随分昔ですけどね」


「おかみさんはこの街は長えのか?」


「ええ、もう随分になりますよ…」


 セっちゃんをじっと見つめている。


「は〜、やはり覚えていらっしゃらないのですね」


 え、何を?


「セドリック様、この街をあの方とつくっていた頃に大変お世話になったですよ?」


 なんの事だかわからないと言う顔をしてぽかーんとしているセっちゃん。

 街をつくっていた頃というと400年前?

 そんなに昔なら忘れていてもしょうがないないけど…

 白猫はセっちゃんが思い出すのを待っているようだ。


「あいつが居た頃ねぇ…、猫か…」


 …


「あ、もしかしてあれか?人間の街から連れてきた子猫!」


「覚えていてくださったんですですね」


「ああん?しかし連れて来たのは普通の猫だったと思うが?」


「あれから400年ですよ?おかげさまで今まで生き延びて今じゃあ普通の猫では無くなってしまいましたけど」


 確かに、尻尾は三つあるし何より人と会話してるし。いわゆる猫又というやつかしらね?


「セっちゃん、子猫攫って来たの?」


「違うわ!街つくりの用事で人間の街に行ってた時に死にかけてたんだよ、食い物やったら離れなくてな。仕方なく連れてきたんだ」


 当時もチワワの格好だったのだろうか?

 そうすると子猫に餌をあげるチワワ…

 見てみたいかも…


「あの時はありがとうございました、親猫が居なくなってしまって食べるも物も無く死を待つだけの私をセドリック様が救って下さったのです」


「確か猫ババアの所に預けたはずだが…猫ババアは元気か?」


「母は300年前に他界したんですよ、普通の猫だった私に色々してくれて母のおかげで今こうしてセドリック様にお礼を言えました」


「ああ、そうだったなぁ〜 あのババア最後まで元気でな娘の為にジジイの鱗を買うんだって頑張ってたよ。娘ってのはおめえの事だったんだな!」


 ジジイの鱗って… あ、イヴァさんのおじいちゃん龍のか。


「その鱗のおかげでしょうね猫の身ながら獣人へ進化する事が出来たようです」


「いや〜鱗だけじゃあそこまで生きねえよ。おめえはあれだな先祖返りだな」


「先祖返り…」


「ああ、おそらく先祖に高位の精霊と関係があったんだろうな。今のおめえは獣人というか精霊に近いぜ」


 大精霊のセっちゃんが言うのだからそうなのだろう。普通の猫が何百年も生きるんだから精霊と言われてもおかしくないわよね。


「まあ、ジジイの鱗が無かったらそこまでならなかったろうし猫ババアもやるもんだなぁ」


「そうでしたか…母はただの猫だった私を自分の子供として育ててくれました。母と話す事が出来るようになった時、龍王様に感謝したもんですよ」


 イヴァさんのお爺ちゃんの鱗すごいな〜。

 乗り物にも生き物にも大きな影響があるのね。


「はっは!あのジジイの取り柄っちゃあそれくらいだからな!」


 ばっ!


 突然セっちゃんが変な方向を向いた。

 

 おそらくまたお爺ちゃん龍に文句を言われたのを感知したのね…


「今はこのお店をしてるのですね」


「ええ、お陰様で自分の店を持つ事が出来ました」


「きのこ鍋美味しかったです!」


 サリーがシュタッと手を上げて言った。


「皆様の口に合ってよかったですわ。人間の街で調査した甲斐がありました」


 人間の街… 私が居たカルムン村は村だから違うかどこの街だろう。


「私の孫達が人間の街に居ましてね、色々教えてくれるのです」


 白猫はほっこりした笑顔を見せた。

 お孫さんが好きなのだろう。


「お孫さんもオーナーと… すみませんよろしければお名前を伺っても良いですか?私は堅譲直子と言います」


「私はサリーです、よろしくお願いします」


「んでこれが残念チワワのセっちゃんです」


「誰が残念チワワだ!」


「あらあら、丁寧にありがとうございます。私はソニアと申します」


「ソニア… 」


 残念チワワのセっちゃんが何か思い当たるように考え込んでいる。


「セっちゃんどうしたの?」


「いや… まさかと思うがジジイの所に居るメイド長の名前がソニンってんだよ。しかも猫獣人でな、名前が似てると思ってな」


「セドリック様に覚えが宜しいとはあの子も頑張っているのね」


 やっぱり親戚なんだ?


「ソニンは私の子ですね」


「おお、灰猫のソニンの母ちゃんか!」


「灰猫のソニン?」


 察するに灰色の毛をした猫獣人と思われる。


「城、いやこの街で最強のメイドだよ」


 最強のメイド… メイドとして最強なのか?それとも戦闘で最強なのか?


「ええと、この国で一番強いって事?」


「ああ!強ぇし、おっかない!ジジイもタジタジだ!」


 どんな人なんだろう…会ってみたいわね。


「あらあら、あの子ったらそんな風に思われてるのですね。昔から面倒見が良いけど物事をキッパリ言う子でしてね〜」


 ソニアは丸い顔を前足でグルーミングしながら言った。


「そしたら大将とこにいる白黒猫もおかみさんとこの者か?」


 あの城で案内してくれた猫獣人か。


「ええ、あの子達は孫ですね」


 おおう、今度は孫か。


「あの子達も元気ですか?」


「ああ、あいつらのマッサージはすげえぞ」


 そうだった、確かにあのマッサージは尋常じゃない。


「小さい頃から私も良くもモミモミされてましたからね〜私もあそこまで上手くなるとは思ってませんでしたよ」


 なんかソニアさんの一族ってすごくない?


「は〜、あの怯えてた子猫が立派になってその子供も城勤めたぁ〜 わからねえもんだな。この分だと他にもすげえ子がいそうだな」


「まあ、あの子達は特別でしたから。でも他にもこの街には100人以上の子と親戚が居ますよ」


 ソニア一族恐るべし、街の猫獣人は皆んな一族なんじゃないの?


「そうそう、先ほどのお客さまですが家族に連絡しておきましたから何かあればお教え致しますね」


 やはり怪しいと感じてたのね。


「ああ、頼んだぜ。なんだか悪巧みしてるみてぇだしな」


「あの二人は帝国の人間でこの国に侵攻する為の密偵ですね、こちらの状況を把握する為かこの国の者を何人か帝国に連れ去ろうとしてます」


 さすがそこまでわかってるんだ。


「そしてあの二人が着けていた外套ですが…使用された獣の思念が残されていますね」


「思念?霊魂とかなんかか?」


「おそらく強く生に執着を持ったまま殺されその思いを素材に定着させているのでしょうね、怨念に近い獣の気配を感じましたよ」


 ソニアはうにゃと全身をブルブルさせた。


「酷い事をされて殺されその獣の素材を使ってるのね…」


 そこまでして獣人を装って入ってくるなんて余程帝国の存在を知られたくないようね。

 本当に帝国はこの神の都に侵略を考えているのだろう。


「あの人達はこの街の人を連れ去ろうとしてます」


 ソニアはフッと笑顔を見せる。


「ええ、わかっています。既に私の子達に伝えているので行動は把握できます」


 おお、街中に居るソニア一族で監視してるのね。

 私の監視の盾では会話と場所はわかっても行動の様子はわからないものね。


(主、監視の盾でも対象の様子を確認する事ができます)


(え、そうなの?便利過ぎないそれ?)


 左腕に付いてるハクちゃんがブルブルと震えた。

 褒められて喜んでいるようだった。


 まあ、ここはソニアさんの達の情報を聞いてみましょう。


 ソニアは何やら小さな声でニャーニャー言っている。一族と念話か何かで情報を共有しているのだろう。


「どうやらあの者達は私の一族の者を連れ去ろうとしているようですね」


「ええ、ソニアさんの家族をですか⁈」


 サリーが心配する。


「私の子で姿はほとんど人の姿の者もいますのでそのような者を狙っているようです」


「ほとんど人の姿というのは耳と尻尾だけあるとかですか?」


「ええ、その通りです。私の一族でそのような者が数名いますから」


 ポーン!


 え⁉︎ 何?


(対象の不審な行動を感知しました)


 ああ、盾からの警告音か。びっくりした。

 ソニアさんの達はどうだろう?

 ソニアさんもまたニャーニャー念話している。


「今、一人が私の子と接触をしたみたいですね」


 優秀過ぎるソニア一族…


「ニャッ!ニャーニャーニャー!」


 念話だろうけど声に出す必要はあるみたいね。

 すっごいニャーニャー言ってる。

 何言ってるかわからないけど…

 あ、そうだ。


「大福、ソニアさんが何言ってるか通訳してよ?」


「あのにゃー、我は猫じゃなくて精霊にゃ!わかるわけないのにゃ!」


 猫の姿でニャーニャー言ってるのに分からないとは使えないデブ猫め。


「猫語分からないのになんでニャーニャー言うのよ?」


「そ、それは… 仕事上のルールにゃ」


 そう言えば召喚部屋の鵜にもキャラを徹底するように言ってたわね。


「なるほど、精霊界のルールなのね?」


 ものすごく呆れた顔でこっちを見る大福。


「そんなルール精霊界にはないにゃ、どんな世界にゃ?」


「いや、だって鵜にもキャラを固めろって言ってたじゃない?」


「あれはうちの部署の伝統にゃ」


 伝統〜?


「何その伝統って?」


「精霊神様直属である我達は何かしらの動物の姿をしてるにゃ、精霊神様に認められたその姿に相応しい話し方をするのにゃ」


 精霊神様直属って事は一応エリートなのね。


「へーそれじゃ大福達は上の立場なの?」


「我達は召喚アニマル隊にゃ、精霊神様のお気に入りの部隊なのにゃ!」


 ふふんとドヤ顔する大福。


 アニマル隊って… 精霊神様は動物好きなの?


「その部隊って何人いるのよ?」


「12アニマルにゃ!」


 単位はアニマルなのね。


「それはどんな動物がいるんですか?」


 サリーが食いついた。


「我と鵜、他はリスとバッファロー、ホーリバニー、たっつぁん、ツチヘビ、バイコーン、スリープシープ、ハイコング、ダックスドッグ、カームボアにゃ」


 干支かよ!

 しかも微妙に全部違うし…わからないのもあるわね。


「たっつぁんってなんなの?」


 おそらく龍関係だと思うけどたっつぁんって。


「たっつぁんはたっつぁんにゃ!」


「どんなアニマルなのよ?」


「たっつぁんはノームにゃ」


 ノーム〜?


「あの土の妖精の?」


「そうにゃ!良く知ってるにゃ」


 ……


「龍とは全然関係ないでしょ?そもそもアニマルでもないじゃない!」


「そ、そんな事を言っても精霊神様の寵愛を受けた部隊にゃよ!」


 精霊神のペットなんじゃないかと思うわ…


「はは!相変わらずだなあいつ」


「そう言えばセっちゃんは精霊神を知ってたっけ?」


「ああ、しばらく城に居たからな。そん時から動物が好きなやつでな、俺なんかしょっちゅうモフられたもんだぜ」


 やっぱり精霊神のペット部隊ね…


「あのぅ…?」


 ソニアが話に付いて来れずに申し訳ない感じで話して来た。


「あ、はい!なんでしょう?」


「例の二人にうちの子が攫われたそうです」


「へ?」


「うちの子が二人例の者達に攫われました、今はそれを追跡中です」


「それは…大丈夫なんですか?」


「ええ、目的は帝国に連れ帰る事ですので抵抗しなければ無事ですよ。なのでその子達には大人しくしているように言ってあります」


 しかし、そのまま逃げられたらどうするんだろう?


「ですのでそろそろ貴方様のお力をお借りしたいのですが?」


 ソニアはうにゃんと直子の顔を見た。


 どうやら監視の盾の事も知っているようだ。だから落ち着いてたのね。

 さすがに長く生きているソニアさん抜け目がない。


「ご存知だったのですね?」


「ええ、あんなに異質な魔力を出されては無視する事は出来ませんよ」


 異質…監視の盾を出してもらった時だろうか?


「そろそろあの二人が合流するようですよ」


「わかりました、それじゃちょっと様子を」


 二人の気配に集中するとイメージが浮かんで来た。どうやら街の隅にある廃屋のようだ。


… おい!上手くやったか? …


… どこ見てんだよこれを見ろ …


… よし、それじゃあさっさとずらかるか …


… チワワの毛は持ったか? …


 ん?チワワの毛?

 犬のチワワ?セっちゃんと同じの?


… ああ、だが本当にこんな犬っころの毛で結界を通れるのかよ? …


… くる時も入れたじゃあねえか、大丈夫だよ。なんでもここの主の毛らしいからな持ってるだけで結界は通れるらしい …


… 帰りは転移だろ、効くのか? …


 え、転移できるの?それってまずくない?


… 大丈夫だよ!やるぞ …


 まさか転送まで出来るとは思ってなかった!

 なんとかしないと…!


◆   ◇   ◇   ◇   ◆


 鵜は精霊神様直下のエリート集団!召喚アニマル隊のメンバーでう!

 日頃から召喚主の無理難題をバッサバッサと解決しているでう。


「大福猫様は元気にしているうですかね〜」


 大先輩である大福猫様は鬼畜な召喚主、堅譲直子によって召喚アニマル隊を無理やり辞めさせられてそのまま現地に連れて行かれてしまったでう。

 可哀想な大福猫様でう。


「おう、何せっかく獲った魚を吐き出された様な顔してんでい?」


「あ、あなたは!召喚アニマル隊の中でも唯一アニマルではなく名前だけで採用された。たっつぁん様!」


「なんかこの上なく失礼な事言ってんな、誰に説明してんだよ。まあ、その通りだがな!ふぁ!ふぁ!ふぁ!」


 小太りで背丈は鵜よりも少し高いくらいの人種にすればかなり小柄なノームのたっつぁん様は豪快に変な笑い方をするう。

 いつも頭にでっかい緑の三角帽子を被っていてその帽子には


 たっ!


 とでっかく刺繍されているう。

 小さいのに存在感が馬鹿でかい人ですう…


「で?どうよこの部署は?何でも専属召喚主を得たらしいじゃねえか?」


 鵜は最近この召喚アニマル隊に配属された隊の中ではペーペーう。そんなペーペーがいきなり専属召喚主を得る事は珍しいらしいう。

 それ自体は自慢であり一度に数匹の魚を捕まえたような気分でうが…


「専属召喚主は嬉しいでうが、その召喚主が凄い人であの大福猫様も連れて行かれてしまったでう」


「ああ、らしいな!大福の奴はここでは古いやつでチャラい奴だが実力はあった。それを精霊神様の繋がりまで断ち切って連れてくたぁーとんでもねえな!」


 白く毛深い眉毛と髭で表情は殆ど分からないが驚いているようでう。


「そうなんでう、そんな召喚主の専属になるなんて不安しか無いでう。最近はせっかく捕まえた魚も自分から差し出す程食欲がないでう」


「まあなんだ、ここで精霊神様に愛でられるのもいいが外の世界もいいぞ〜 大福の奴はしょっちゅう召喚主を利用して抜け出してたもんよ!」


 大福猫様が⁉︎ そういえば良く召喚業務とか言ってなかなか帰って来ない事が多かったでうね。


「新しい召喚主は鵜に魚を焼いてくれるでうかね?」


「ああ!おめえが頑張れば願いの一つや二つ聞いてくれるだろうぜ!何たってアニマル隊だからな、アニマルの可愛さでどんな奴もイチコロよ!」


 か、可愛さで殺すでうか!

 さ、さすが名前だけで精霊神様に選ばれ大福猫様同様に長年この隊に居るたっつぁん様でう。


「まあ、ヘタ打って焼かれたら美味しく食われてやれや!」


「ええー! 嫌でうよ!鵜は頑張って鵜生を全うするでう!」


「おう、頑張れや!そろそろ文字数が増長してるってんでここらで戻るや。それじゃあな」


 たっつぁんはそう言うと何処かに行ってしまった。


「文字数ってなんでうかね〜?」

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