episode2 村

 神淵の森を歩く事数時間、川を見つけ川沿いに下流を目指していた。

 途中、猪もどきだの狼もどきだのでっかい花みたいのも襲って来たがどれも自分の攻撃を反射され今は【純白の盾】、ハクちゃんの中に素材として入ってる。

【審議の盾】、審ちゃんは便利で色々な事を教えてくれた。

 薬草や飲める水など、おかげで森を進む事ができた。


「あれって村じゃない?」


 ヴゥンッ


  【カルムンの村】

   人口 48人

   メイスェット領内にある村

   名産 きのこ

   名物 きのこ鍋


「この村カルムンと言うんだ、メイスェット領…」


「やはり異世界によくある中世に似た文明なのかな?」


「きのこは… 確かに来る途中沢山生えてたね」


「よーし、今夜はきのこ鍋だー!」


 村の入り口に男が立って居る。門番だろうか。


「すみませんー、村に入りたいのですが?」


「あんた… あなたは貴族様のお使いの方ですか?」


「え、違いますが…」


「では何者だ?」


 すっごいジロジロ見られてる。

 それはそうか、男の格好と比べるとキッチリしたスーツを着ているし貴族関係と思われても仕方がないのだろう。


「旅をしている者です」


「その恰好でか?」


 しょうがないでしょ!この恰好で連れて来られたんだから。


「ええ、これは我が家に伝わる旅の恰好なのです」


「世に出て見分を広める旅をしております」


「・・・真っすぐ行くと右側に役所があるから最初にそこで入村の手続きをしてくれ」


「わかました、ありがとうございます」


 なんとか入れた。

 しかしこの服だけでもどうにかしないと目立つわよね… 服屋さんあるかな…

 村に入り役所に向かう。

 右側に家が点在し反対側は羊の様な生き物が柵の中でのんびり草を食んでいる。

 ザ、田舎!と言ったほのぼのした村に見える。しばら行くと何やら良い匂いが漂って来た。


 ぐう〜


 お腹が鳴いている。

 こっちに来てからまともな食事をしていない。

 匂いの元を辿ると入り口の上に看板がある建物があった。


「これって入り口で聞いた役所?」


 看板を見ると知らない文字が書いてあったが何故か理解できた。

 役所と書いてありその両側にはきのこの絵が描いてある。

 右下には立て看板が置いてありクリームきのこ鍋始めました!と書かれている。


「役所だよね…」


 とりあえず入ってみる。


 ガヤガヤ…


 入ると右側には食事をしている人達で騒ついていた。左側にカウンターみたいのがありそこに制服らしきものを着て座っている女性が居る。ここが役所の窓口だろうか?


「すみません、ここは役所の受付でしょうか?」


「… そうですが … 御用はなんでしょうか?」


 門番同様すごい警戒されてる感じがする。


「旅の者ですが門番の方にこちらで手続きを行う様に言われたのですが」


「そうですか。ではこちらに記入をお願いします」


 名前と年、出身地… 入村の目的か。

 出身地はどうしよう。まさか異世界からとはかけないし。


「お忍びですか?」


 出身地の所で手が止まっているところでこそっと声をかけられた。


「え、ええ、その様な感じです…」


「そうでしたら入村料を多めに頂く事で何とかしますけど、どうします?」


 つまり袖の下を渡せとと言う事かな。

どちらにしてもこの世界のお金持って無いけどね。


「是非お願いしたい、のですが今持ち合わせが無くて」


「はい?」


 そんな格好して何言ってんの? という心の声が聞こえる様だ。

 どうしたらいいかしらね…

 あ、そうだ。


「実は所持金を落としてしまいまして、道中で手に入れた素材を買い取ってもらう事はできますか?」


「素材ですか?買取りできる物もありますがどの様な物がありますか?」


 ここまで来るのに結構な獣とか倒して色々あるのよね。


「倒した獣でもいいですか?」


「獣であれば大体買取りできますね」


「物は外ですか?」


「いえ、ここに」


 盾に収納されていた素材の一部を取り出した。


「え、どこから?それにこれフォーアームベアーの毛皮じゃないですか!」


「旅の途中で手に入れまして…」


「た、倒したんですか⁈」


「ええ、まあ…」


 私じゃなくてハクちゃんだけどね…


「村総出で狩っても犠牲者無しでは無理なのに!」


「たまたま運が良かっただけで…」


「何者なんですか⁈盾を持っていると言う事は…」


「お忍びで旅をしている騎士様でここに来る途中フォーアームベアーと遭遇して戦い勝ったが大事な剣を壊されてしまった…しかもおそらくスキルをお持ちですね!」


 想像力豊かな娘ね、この世界スキルとかあるんだ。

 言われてみれば盾を作り出せるのはスキルと言える。

 興奮してこちらを見ている。


「王都の騎士様ですか?」


 いや、違うんだけど… 否定すると余計な想像をされるから…


「それは内緒です」


「ですよね〜、お忍びですもんね〜」


 完全に勘違いされているみたいだけどその方がが異世界から来た! 

 よりは良いに違いない。


「あの… ところでそれ買取り可能ですか?」


「もちろんフォーアームベアーの毛皮は頑丈で人気がありますので是非買い取らせて下さい!」


 受付の彼女はキラキラした目でこちらを見つめている。


「他にもございますか?」


「あーあり… その前にこの毛皮だといくらくらいになるのでしょう?」


「そうですね状態も良いですし金貨4枚でいかがでしょう?」


 出た!金貨だって。本当に異世界なのね…

 しかし金貨と言われても価値がいまいちわからないし。

 とりあえず貰えるものはもらっておきましょう。


「はいそれでお願いします」


「ところで私はこの辺の物価を知りませんので参考にここで食べられる鍋料理の値段を教えてもらえますか?」


「鍋ですか… 色々な鍋がありますが例えばそこの人達が食べている旬のきのこ鍋ですと4人分で銅貨12枚ですね」


「そうですか、では宿代はいくら位でしょう?」


「この村に宿は1軒しかないですがそこだと一泊小銀貨6枚だったと思います。食事も朝晩付きますよ」


 銅貨1枚が100円、小銀貨1枚が1000円位になるのかな。

 そうすると銀貨が1万円、金貨は10万円くらいか。

 鍋4人で1200円は安いよね。これだと金貨4枚だと身の回りも整えると考えればちょっと心許無いわね。


「わかりました、ありがとうございます。毛皮の他にもあるんですがそれも買い取ってもらえますか?」


「他にも討伐されているのですね、さすがです!」


 何がさすがなのかわからないが他も買い取ってもらえそうね。

 無難そうな物を出してみましょう。

 中にはフォーアームベアーよりも大きくて危険そうだったキメラという頭はライオンと狼みたいで尻尾は大蛇と訳わからんモンスターもいたしね。

 あれはどう考えても私みたいな小娘が一人で倒せないと思われるだろうし、実際は審ちゃんサポートとハクちゃんのカウンターで瞬殺だったけど…


「それではこちらを買取りお願いします」


 ドン!


 カウンターにフォーアームベアーの牙や爪、ワイルドレッドボアの皮、牙などその他数点をハクちゃんの収納から出した。


「こ、これはどこから出して… ヒィ!ワイルドレッドボアの素材まで…」


 あれ?出しちゃ不味かったかな…

 なんか体に赤い模様が光っててわりと可愛かったのに…


「たまたま遭遇しまして…」


「それを倒されたと⁉︎」


「え、ええ、運が良かったんですね」


 何事も無かった様に満面の営業スマイルをして見た。


「… と、とにかく査定をしますね」


 何とか誤魔化せたかしら。


「ワイルドレッドボアはランクの高い冒険者のパーティが何組か協力してやっと倒せる魔獣なのです」


「場合によっては王都の騎士団も出て来る事あるほど危険なのですが…」

 

 全然誤魔化されてないね… 査定をしながらこちらをチラチラ見ては顔を赤くしている。

 今度からよく調べてから素材を出す様にしましょう。


「お待たせしました、全部で金貨245枚でいかがでしょうか?」


 え、いきなり小金持ちになっちゃう。これでしばらくは大丈夫そう。


「それでお願いします」


「了解しました、が今手持ちが足りませんので申し訳ありませんがまた明日来てもらってもよろしいでしょうか?」


 ちょっと多かったか。


「はい、構いませんよ」


「ありがとうございます、ではこのカードに手を置いて下さい」


 村の紋章だろうかキャッシュカードと同じ位のカードの中央に描かれている。手をカードの上に置いた。


 パァー


 カードの紋章が光その光が手の平を通過して手の甲に紋章が浮かび上がった。


「明日そちらをお見せ下さい」


 手の紋章を見ると文字が浮かび上がる。


【素材の買取り 買取り金受取残金貨245枚】


 引換証明みたいなものね、便利。紋章が刺青みたいで気になるけど。


「簡易契約魔法は初めてですか?」


「はい、この紋章は取引が終わったら消えるのですか?」


「はい、またその紋章は関係者にしか見えていませんのであまり気にする事はないですよ」


 わー魔法っぽい!って本当に魔法か。


「他にはご利用がありますか?」


「ここでの食事は誰でもできるのですか?」


「はい、今ならきのこが旬なので美味しいですよ」


 ゴクリ…


 これは是非食べていこう。


「ありがとう食べていこうかな」


 お腹が鳴りそうなのを堪えるように何もないように渾身の笑顔でした。


「あ、明日お待ちしてまひゅ!」


 噛んだな。私の笑顔に照れたかな?仕事で培った営業スマイルは眩しかろう。さあ、きのこ食べようっと。

 顔を赤くした受付嬢を後にし、食事場の方へ向かった。空いているテーブル席に座り周りを見渡す。

 村の人だろうか家族で来ていたり明らかに冒険者と言う感じのグループなどそこそこ繁盛しているようだ。

 注文はどうすればいいのかしら?そう思ってキョロキョロしていると。


「いらっしゃいませ、こちらがメニューです」


「あ、ありが…」


 さっきの受付嬢だった。ウェイトレスも兼任してるのね。


「先程は失礼しました」


「いえ、色々教えてくれて助かりました」


「大変ですね役所の受付とこちらも手伝っているのですか?」


「はい、私はこの村の者ではなく王都から派遣されて来ていて勉強も兼ねてここで働いています」


「サリーシャと言います、今後もよろしくお願いします。直子さん」


 受付の時と違い穏やかな笑顔で自己紹介をしてくれた。

 何処か貴賓が伺える、良い所の娘なのかな。


「こちらこそよろしくね」


 サリーシャさんか、良く見るとなかなか可愛いではないか…

 ってそっちの趣味はないけどね!


「あーそれできのこ鍋でおすすめはあるかしら?」


「それでしたらこちらのマンドラきのこの煮込み鍋が美味しいですよ、マンドラきのこは今が旬ですしおすすめです」


 マンドラきのこ! ファンタジーだと土から拭き抜くと奇声を上げてそれを聞いた人は発狂するとか何とか… まさかそれなの?

 あ、あれはきのこじゃ無いか…


「マンドラきのこ…」


「知りません?少し魔力を帯びてるので精神疲労や滋養もあるんですよ」


「そうなんだ、でもやっぱりきのこを取るには難しかったり?」


「そうですね、このきのこは魔力があるせいか取ろうすると走って逃げるんです」


「え、逃げるだけ?」


「そうですね、でも結構早いので罠を仕掛けて追い込んで捕まえるんです」


「へーそうなのね」


 知ってるマンドラとは微妙に違うみたい。

 そいえばここに来るまでに居たな取ろとすると逃げるきのこ… あれか…


「どうします?」


「あ、じゃあそれで」


「わかりました少々お待ち下さい。お水お持ちしますね」


 動くきのこか… 食べられるかしら…




 

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