番外編1 義足になった理由

〜これはまだ詩花がまだ少し幼かった頃のお話〜


「お父さん!お母さん早く早く!」その少女、詩花は笑みを浮かべながら両親を呼んだ。その様子に両親はくすりと笑いながら詩花に駆け寄った。

「そんなに急ぐと怪我するぞ詩花」と笑いながら父が告げれば詩花の頭をそっと撫でた。父の手にそっと擦り寄れば「えへへ……ごめんなさい」と笑いながら詩花は告げた。

その様子を見ていた母はクスクスと笑った。詩花は知らなかった。この幸せが、もうすぐ壊れてしまうことに……。




それから数年の月日が流れた。詩花はいつものように家の庭で1人で遊んでいた。するとソレは声を掛けてきた。

『イイニオイ』『アマイニオイ』『キヅイテル?』と幼い詩花はソレをしっかりと視認し、「み……見えてるよ」と声をかけてしまった。その言葉にソレは歪んだ笑みを浮かべ『ミエテル』『ミテル』『キヅイタ』『ウマソウ』と呟きながら詩花へ近づいた。詩花もソレの危うさにようやく気づいたのかゆっくりと後退りした。しかしソレは詩花が動く前に早く動き、詩花の左足へ飛びつきそのまま噛み付いた。詩花は「い"っ……あ"ぁぁぁぁ!」と悲鳴を上げた。その悲鳴に両親は庭へ慌てて出てきた。

「詩花!詩花大丈夫か!?純歌今すぐ救急車を呼んでくれ!」

「わ……分かった!詩花しっかりして!大丈夫だからね!」両親の慌てる声を聞きながら詩花はそっと意識を手放した。



次に意識が戻ったのは1週間後だった。詩花はそっと目を覚ませば傍にいた両親を軽く見つめたあと「お母さん……お父さん……?」と弱々しく呟いた。その弱々しい声に両親は安堵した表情を浮かべ

「おはよう……詩花。」と涙ぐんだ声で父が告げた。


「それで……詩花ちゃん。君の左足なんだけど……」と母が呼んできた医者が説明を始めれば詩花はそっと涙を流した。

「じゃあ私の左足……膝から下はもう……無いって事ですか……?」

「……そうなるね……でもまだ方法はある」

「方法……?その方法って……」

「義足だよ。今は本物の足に近い義足だってある。詩花ちゃんが良ければ義足を付けて……」医師からの説明を聞いた詩花は両親を見つめた。両親はそっと頷き「詩花のしたいようにすればいい」と告げた。詩花はその言葉に小さく笑みを浮かべ頷いたあと医師の方を向き「……先生私に義足をください。もっと歩きたいんです」と告げた。その笑みに医師は少し驚いた表情を浮かべたあとすぐに笑みを浮かべ「あぁ……一緒に頑張ろうね詩花ちゃん。」と告げた。

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