第19話 「寂しい」という感情と遅すぎた自覚

詩花と蓮が寄り道しなくなって数日がたった。詩花は女子と、蓮はお調子者のクラスメイト達と寄り道するようになった。

「詩花ちゃん今日帰り買い物行くんだけどどう?」とクラスメイト達に問いかけられた詩花は少し悩んだあと首を横に振り「今日はちょっと用事があって……また誘ってくれると嬉しい」と告げた。その言葉にクラスメイト達は笑って頷きそのまま別れ詩花はそのまま屋上へと向かった。



屋上のドアを開け手すりにもたれかかれば小さく息を吐いた。詩花は初めて友達に嘘をついた。

屋上で思い出していたのは蓮と初めて2人で寄り道したコンビニの事だった。あの教室での出来事の後、2人は話すことも無くなり詩花は名前呼びから元の苗字呼びに戻した。「……なんだかつまんないな」と小さく呟いた言葉は誰にも聞かれることなく消えた。

友達と寄り道するのは詩花にとって勿論楽しい事だが心にぽっかりと穴が空いたような感覚だった。

その感覚は初めての感覚で今まで感じたことの無いものだった。その感覚に詩花は自分でも驚いていた。まさか自分自身に《寂しい》や《後悔》といった感情があるとは思っていなかったのだ。「……私らしくないな……後悔してるなんて」詩花は伏せ目がちに呟いた。

恐らくもう二度と蓮を名前呼び出来ない事に今自覚すれば詩花からは「くっ……うっ……! 」と声にならない声で大粒の涙を流した。詩花はたった今自分が蓮の事を《好き》だということを自覚した。その感情の自覚は遅すぎた自覚だった。

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