第20話 焼き付いた言葉と心の底からの本音

ひとしきり泣いた詩花は目を擦り息を小さく吐き屋上から出て帰路へつこうと靴箱へ向かった。ちょうど教室を通った時聞こえてきたのは蓮の声とお調子者のクラスメイト達の声だった。

「それにしても杠葉お前ほんとに皇と付き合う気無かったのかよ?」

「……お前らには関係無いだろ。俺の勝手だ」

「そーだけどさー。」

「でも俺なら無理かもな。だって義足だろ?」

「歩くペースとか面倒くさそうだよな」といったクラスメイト達の声に詩花は唇を噛み締めガラッと音を立て教室に入ればクラスメイト達の声が止まり、蓮は気まづそうに目を逸らした。

「す……皇なんでここに……」と少し焦った声色でクラスメイトの1人が言えば詩花はニコリと笑みを浮かべ「忘れ物。取りに来たの」と告げたあと机から教科書を取り出した。「あと……好きで義足になった訳じゃないから。」と詩花はクラスメイト達と蓮を見つめたあと告げれば教室から出て行った。


コツ…コツ…と杖を鳴らし詩花は帰路についていた。クラスメイト達の言葉が脳裏に焼き付いて離れない。仲良くなれたと思った蓮からの言葉とクラスメイト達の視線が言葉が詩花の心を、足を重くした。あの言葉は詩花の心を砕くには十分すぎた。

『好きで義足になった訳じゃない』

心の底からの本音だった。自分でもあそこまで冷たい声が出るなんて思ってもいなかった詩花は俯きながら家のドアを開け「ただいま」と玄関先で告げた。


「あらおかえりなさい詩花。遅かったわね」

「あ……うん友達と話してて……」

「……そう。ほらほら着替えてきなさい」

「……うん。すぐ着替えてくるよお母さん」

詩花は母に心配をかけないように笑みを浮かべながらやり取りをした後自分の部屋に向かった。


「……いつも通りやらないと。お母さんとお父さんに心配かけちゃう……」部屋に着いた詩花は着替えながら小さく呟いた。家族に心配をかけないように、自分が我慢をすれば大丈夫だと詩花は考えいつものように振る舞った。その我慢で詩花が心を壊してしまうのはそう遠くない事だった。

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