第18話 席替え

担任が教室へ入ってくれば一言「席替えするからクジ引けー。」と告げた。詩花は少し悩んだあと手を挙げて「先生、私ドアと黒板が近い方が助かるんですけど……」と告げた。その言葉に担任は頷き「じゃあ皇は前の席な。あとは全員クジ引けー」と告げてその様子を見守っていた。

ガタガタと机や椅子が動く音が教室に響いている中詩花は担任に机と椅子を動かしてもらい新しい席……ドアと黒板が近い前の席へ座っていた。その隣へやってきたのはいつも昼食を食べるクラスメイトだった。「詩花ちゃんの隣だ。よろしくね詩花ちゃん」と笑みを浮かべながら言うクラスメイトに詩花は笑みを浮かべ「うんよろしくね」と返した。ふと気になって蓮の方を見れば1番遠い窓際の席に座っていた。蓮と目線が交われば慌てて逸らし隣のクラスメイトと話し始めた。「詩花ちゃん今日寄り道してかない?」「私も行くー」などワイワイと話すクラスメイト達に笑みを浮かべ「うん。皆で行こ」と告げれば帰りのホームルームを終えた。


「詩花ちゃん行こー」

「どこ行く?」

「カフェ行こうよ。最近新しいとこ出来たんだよね」とクラスメイト達とやり取りをしていれば近くの席の男子のクラスメイトが「皇また明日なー」と声をかけた。その言葉に詩花は笑みを浮かべ「うん。また明日ね」と告げて教室から出た。



「それにしても杠葉あいつ酷いよね。あそこまで言わなくてもいいのに」「ほんとほんと。」と歩きながら話すクラスメイトに詩花は目を伏せたあと笑みを浮かべ「なになに?何の話?」と問いかけた。クラスメイトは少し悩んだあと「実は……」と話し始めた。それは蓮のあの言葉が発せられるより前の話だった。クラスの中でもお調子者達の生徒たちが蓮をからかっていれば蓮が怒りあの言葉を言ったのだという。詩花はそれを聞いたあと瞬きしたあと笑みを浮かべ「そっか……でも杠葉くんが言うのは正しいよ。」と告げた。その言葉を聞いたクラスメイト達は少し悲しそうな表情を浮かべた。その表情を見たあと詩花は「あはは気にしなくていいよ。ほら早くカフェ行こ!」と告げればクラスメイト達と目的のカフェへ向かった。詩花はクラスメイト達から聞いた話に気にしないフリをした。噂も少しは落ち着いた様でそれが詩花にとっても1番安心出来た。これでこの気持ちも忘れられると思ったから。

それでもほんの少し、心の奥底には蓮が放った言葉が棘のように刺さった。その棘に気づかないふりをして詩花が蓮と寄り道する事はもう無かった。

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