第17話 すれ違う心

次の日もまた次の日も教室での噂は詩花と蓮の耳に入ってくる。蓮はその様子にため息を吐いたあと勢いよく立ち上がり「お前らさ、コソコソ言ってねぇではっきり言えよ。あと俺は皇と付き合う気はねぇよ。」とクラスメイト達を睨みつけながら言った。その言葉は詩花にも刺さった。「皇も否定するならはっきり言えよ。」と告げれば詩花は小さく「うん」と頷き「…私は恋はしないから…」と短く否定したあと詩花は席を離れクラスメイトの1人に「少し体調悪いから保健室行ってくるね……先生に伝えてて」と困ったような表情を浮かべながら告げた。



保健室に着いた詩花はガラガラと音を立てながら中に入った。保健医には体調が悪いと告げベッドを借りた。『皇と付き合う気は無い』その言葉がずしりと詩花の心にのしかかった。蓮が放った言葉は詩花へ現実を突きつけるには十分すぎた。『……これで噂は消える。これでいいんだ』詩花は自分に言い聞かせるように心で呟いた。ふと自分の目に触れてみると濡れていることに気づいた詩花は驚いた。まさかあの言葉に対して自分の感情が動かされるのは予想外だった。「……バカみたい」詩花は小さく呟いたあとそっと目を瞑ろうとした。しかしそれはあるものに阻止された。『ミテル?』『ミエテル?』『ミテルナ?』といった声がまた聞こえた。詩花は無視をして目を瞑ろうとするも視線が合ったままで、『キヅイテル?』『キヅイタ?』と声をかけてきた。小さく息を吐いた後詩花は何事も無いように振る舞った。暫くしてようやくそれも消えれば安心した表情を浮かべたあとほとぼりも冷めたであろう教室へ向かった。


詩花が廊下を歩いていると「だから!俺は皇なんか好きじゃないって言ってんだろ!」と蓮の大声が聞こえた。その言葉を聞いた詩花は唇を噛み締めたあと笑みを浮かべながらドアを開けた。クラスメイト達の視線が詩花へ刺されば「……どうかした?」と笑みを浮かべながら詩花は問いかけた。「う……詩花ちゃん今の聞いてた……?」とクラスメイトの1人が問いかければ詩花は笑みを浮かべ「なんの事?私はさっき保健室から帰ってきたから何も聞いてないよ」と告げて自分の席へ向かった。

「皇……」

「……どうかした?……杠葉くん。」と詩花は笑みを浮かべながら問いかければ蓮は目を見開いたあと「なんでもない」と告げて椅子に座った。次の時間は月に1回の席替えの時間だった。

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