第16話 本当の気持ち
それから数日が経ち、クラスメイト達は詩花と蓮がいつ付き合いだすか、そしてどちらから告白するのかを密かに噂をしていた。教室にいればその噂は少なからず詩花と蓮の耳にも入ってきた。その噂を聞く度に詩花は困ったような、諦めてるような表情を浮かべながらクラスメイト達の噂を否定した。
「私は蓮くんと付き合いたいとか……そんなんじゃないよ。」と言った詩花にクラスメイト達は「えー」「お似合いだと思うけどね」などといった反応を示した。その言葉に詩花はズキリと心が痛んだ気がしたが気づかないふりをしながら「それに蓮くんも私なんかよりもっと素敵な子と付き合いたい筈だよ。私はほら義足だからさ……」と告げた。その言葉にクラスメイトは「詩花ちゃん!義足だからとかそんなの関係ない!」「詩花ちゃんは杠葉のこと好き?」「付き合いたいとか思ってないの?」と反論があがった。詩花は困ったような表情を浮かべながら「……ごめん。私には恋愛は無理だから。」と告げ、教室を出て詩花は屋上へと向かった。
キィっと音を立て屋上のドアを開ければ外には雲ひとつない青空が広がっていた。その空は詩花の心とは裏腹にとても綺麗でそれでいて酷く残酷に見えた。その青空を見たあと詩花は自嘲気味に笑って、
「……私だって恋が出来たらしたかったけどね」と詩花は小さく呟いた。その言葉は詩花にとっての本当の気持ちだった。しかし心の中に残っている言葉は鎖のように絡みつき茨のように刺さったままだった。詩花の心を縛り付けるのは前の学校で言われた言葉だった。『義足の女となんかめんどくさい。付き合えるわけが無い』ある人から言われたその言葉がずっと詩花の心を縛り付け、刺さったままだった。「……もうこの気持ちは捨ててしまおう。この気持ちはあっちゃいけないものだ」と吐いた言葉は空へと消えていった。自分の気持ちに蓋をするのは詩花にとっての特技にもなっていた。
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